2020年01月29日

ダ・ヴィンチ没後500年「夢の実現」展


20191207_2976541.jpg

会場:代官山ヒルサイドフォーラム

1. 会について

レオナルド・ダ・ヴィンチが1519年に亡くなってから500年たった2019年。
世界各地でメモリアル・イベントが行われた中、東京造形大学では、ダ・ヴィンチが描いた夢を実現するという「Zokei Da Vinci Project」プロジェクトを実行しました。
今回の展覧会は、その報告発表会となっています。

index.png

東京造形大学・池上英洋教授の監修のもと、約100人の学生、大学院生、卒業生が、ダ・ヴィンチの描いた絵画全16点をヴァーチャル復元作業を行いました。

現存するダ・ヴィンチの絵画はたった16点と少なく、完成形として残っておるのは僅か4点のみ。
今回のプロジェクトでは、未完成作品を含めた全16作品と、彫刻、建築、工学系発明作品などの未完成作品約30点を、最新の研究や科学的根拠に基づいた技術を駆使してヴァーチャル復元しています。

彼が実現しえなかったブロンズ製の騎馬像や巨大建築物、発明品なども、模型や3DCGで再現しています。

2. 《ラ・ジョコンダ(モナ・リザ)》

ルーブル美術館で見られるオリジナルは、すべての色がくすんで沈んでいるような印象ですが、復元された作品はとても色鮮やかさで、目を見張りました。
描かれた光景は、どんよりとした曇り空だと思っていましたが、復元された者は青空。

20200108132808a6cs.jpg
《ラ・ジョコンダ(モナ・リザ)》
オリジナルはパリ・ルーヴル美術館所蔵

この作品の中には光が満ちています。
ダ・ヴィンチが描き、見ていた作品は、こんな色だったんですね。

3. 《スフォルツァ騎馬像》

当代一の彫刻家、ヴェロッキオの弟子だったダ・ヴィンチは、彫刻も手掛けています。
彼はミラノ君主の依頼により、史上最大の騎馬像制作に着手しました。
ただ、戦争が始まり、フランス軍がミラノに攻め込んできたために、鋳造用のブロンズはすべて召し上げられて、大砲に使われてしまいました。(イタリアでも刀狩りがあったんですね)

未完成に終わったままだった騎馬像は、これまでに何度か復元されましたが、どれも馬は三脚接地のポーズでした。
(その一つは、国内の名古屋国際展示場にあります)

今回はそれとは異なる、ダ・ヴィンチが目指した両前脚を上げるポーズで制作されています。

2_n.jpg
《スフォルツァ騎馬像》予想完成像

馬は確かに前脚を上げていますが…
なんというか、踏み台(?)にされている人が気になってしまいます…
これ、仏像だったら、邪鬼の役割ですね…

4. 《最後の晩餐》

どれも鮮やかに復元されていましたが、なにより目を見張ったのは、《最後の晩餐》(1495-98)。

この作品はミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ修道院の食堂に描かれた壁画。
ダ・ヴィンチが描き、完成させた数少ない作品の一つですが、湿気や熱気によるカビ、それに大戦時に受けた爆弾などで、かなり損傷が激しい状態になっています。

かつて実際に見に行った時は、修復以前だったため、ぼやぼやとあいまいな色合いになっていて、手やテーブルの上の様子などは目を凝らしてもよくわかりませんでした。
それが、これほど鮮明な色彩の絵となって甦るとは。圧倒的です。

808_n.jpg
《最後の晩餐》
オリジナルはミラノ、サンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ修道院

実物大に復元されており、横が29フィート(8.8メートル)、縦が15フィート(4.5メートル)の巨大なものとなっています。

とにかく大きい!横8メートルといったら、絵とは言えないほどの大きさですね。
この大きくて損傷が激しい作品の復元には、皆さん相当苦労しただろうと思われます。

タブレットを作品の方に向けると、タブレットの作品上に線が現れ、一点透視図法を用いた彼の遠近法の計算がわかります。
ダ・ヴィンチは、遠近法の一点透視図法をするために、ハンマーと釘を用いたそうです。

このプロジェクトでは、最後の晩餐に描かれた部屋の正確な形状とサイズも新たに算出しています。
部屋の様子が立体的に描かれており、ある位置から見ると、絵画の天井の線と実際の壁と天井との境目がつながり、部屋が壁の奥方向へと広がって見えるようになっています。

5.《最後の晩餐》VR鑑賞

「最後の晩餐」は、去年、大塚国際美術館でも鑑賞しました。
大部屋に、現在の色落ちした作品と、色を完成当時のものに修復した作品が向かい合わせに飾られているため、比較しやすくて印象的。

今回の「最後の晩餐」は、絵ではなく映像での復元展示のため、多少の物足りなさはありますが、それよりも感激した体験ができました。

それは、VRで「最後の晩餐」の絵の中に入れたこと。
会場は、絵画や彫刻などのほかに、VRによる空間体験やゲーム体験、映像インスタレーションなど様々なコーナーが設けられています。
部屋の中に入ってみて、驚きました。
あれほど細長い奥行きがあったとは。さらに、窓から山の頂が見下ろせる、あれほど高い場所にあったとは。
ギリシヤにあるメテオラの修道院のようです。

「最後の晩餐の部屋」はエルサレムのシオンの山にあるとされており、やはり高い場所にあったようです。

VRの部屋に、キリストや弟子たちはいませんでしたが、テーブルの上には皿やリンゴ、パンが載っています。
係の人に「持てますよ」と言われ、手を動かしてみたら、持てました!

ちなみに、テーブルの上の魚は、ウナギだそう。
乾燥ウナギ?イエスへの忠誠を表しているのだそうです。

6. 観終えて(おわりに)

稀代の大天才と言われる発明家、ダ・ヴィンチですが、実は私生児として生まれたということは知りませんでした。
そのためにまともな教育を受けられず、生涯を通じてラテン語の習得に苦しんだそうです。

そんな状況下で、豊かな発想と細かい計算のもと、今なお人々を驚かせる数々の発明を生み出した彼。
努力あってこその偉人だったわけですね。

20200108131751edc.jpg
かつて来日した《受胎告知》
オリジナルはフィレンツェ・ウフィツィ美術館所蔵

この実験的な展覧会は入場無料。会場内は一部以外は撮影が可能で、来館者には全カラーでボリュームのある内容の濃い図録をいただける上に、音声ガイダンスつきタブレット端末の鑑賞ガイドも無料で貸し出しをしてくれます。
至れり尽くせりのサービスのもと、ダ・ヴィンチ作品について包括的に学べるようになっている、とてもありがたい試み。

開催期間中は、私たちも、ダ・ヴィンチと東京造形大学関係者の夢の恩恵を、じっくりと受けさせてもらうことができます。

7. 会期

会期:2020年1月5日〜26日
会場:代官山ヒルサイドフォーラム

続きを読む
posted by リカ at 17:28| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする