2019年09月17日

コートールド美術館展 魅惑の印象派

courtauld_main.jpg



■ はじめに

コートールド美術館は、そんなに知られていません。名前を聞いても首をかしげる人が多いのではないでしょうか。
とはいえ、そのコレクションにはよく知られた名作がずらりと揃っています。

創設者はイギリスの実業家、サミュエル・コートールド(1876-1947)。
レーヨン産業で莫大な富を築いた彼は、10年弱という短期間で名作コレクションをほぼ揃えました。

当時のイギリスでまだあまり評価されていなかった1920年代のフランス印象派、およびポスト印象派の作品を中心に収集活動を行った彼は、ビジネスマンでありながら卓越した審美眼を持っていました。
後に彼はロンドン大学美術研究所に自身のコレクションを寄贈し、1932年にコートールド美術館が誕生しました。

日本でコートールド美術館の展覧会が開催されるのは、約20年ぶりとのこと。
ということは、バーンズ・コレクション展(1994年)の後になりますね。
以前開催された時には、全く気付いていませんでした。

今回は改修工事で美術館が閉館中のために、これほどの名作が60点、目白押し状態で貸し出されることになったのだそう。
会場は、絵画が数多く飾られた彼の邸宅のモノクロ写真を壁面にあつらえた、凝った造りになっています。

■ 1章 画家の言葉から読み解く

 ● クロード・モネ《花瓶》

65ec0064.jpg
クロード・モネ《花瓶》1881着手 Courtauld Gallery

80歳になったモネが加筆して完成させた絵。
胸打たれるほどのみずみずしい美しさに満ちています。

また《秋の効果、アルジャントゥイユ》の作品解説に、モネは絵画道具を積んだアトリエ船を水面に出して、水上から水のきらめきを表現したとありました。
なるほど、岸辺からではわからない微妙な水面のうつろいを、そうやって写し取ったいたのですね。

 ● ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》


セザンヌは、コートールド氏の一番お気に入りの画家で、彼のセザンヌコレクションは個人所蔵品としては最高最多のものでした。
セザンヌが生涯30作品も描いた、サント・ヴィクトワール山の作品も館内展示されています。

32.jpg
ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》1892-1896頃 Courtauld Gallery

彼は、田舎の男性がトランプ遊びをしている同じテーマのものを、5枚描いています。
うち、2人が向かい合ったそっくり同じ構図のものは3点。
1枚目はオルセー美術館、2枚目が本作、3枚目は個人蔵。

3作品のパネルを見比べると、男性2人の距離感などが少しずつ違っていました。

■ 2章 時代背景から読み解く

 ● アンリ・ルソー「税関」

tollhouse.jpg
アンリ・ルソー「税関」1890頃 Courtauld Gallery

20年以上も税関に務めながら絵を描いており、『税関吏ルソー』 と呼ばれる彼ですが、長らく通った税関を描いた作品は、この一作のみなのだとか。
とはいえ、緑深く、税関のイメージからほど遠いものになっています。
税関職員の立ち位置もどこか妙ですね。
実際の彼の職場の外観とは大きくかけ離れているとのことで、アンリらしさがでていました。

ほのぼのとした構図で、なんだかファンシー。
作品と額が合っていました。

 ● ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》


ルノワールもコートールド氏のお気に入りの画家。
彼は自作のポエムも捧げるほど、この作品に惚れ込みました。

「ルビーの光にアメジストの尽きせぬ鉱泉浮かぶとき、
今、紺碧の脈もまばゆきアイヴォリー」

キラキラした色彩がはじけるような詩ですね。

26.jpg
ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》1874 Courtauld Gallery

モノクロストライプのドレスに身を包んだ女性に目を奪われます。
当時、桟敷席は時代の最新ファッションが見られる場所で、つまりここに描かれているのは「VOGUE」レベルのモードな方々というわけです。
描かれた男女二人とも、視線は舞台に向かっていません。
舞台ではなく観客席の方をモチーフに選んだのは、ルノワールの斬新な試みだったそう。
見る側だけでなく、見られる側にもなった観客の意識のあらわれでしょうか。

ドレスや髪に加え、女性の輝く肌の色の質感と美しさが印象的な作品です。

 ● エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》

エドゥアール・マネの最晩年の傑作。《桟敷席》同様に、作品の前には黒山の人だかりができています。
フォリー=ベルジェールは、今でも実在するパリのミュージックホール。

12.jpg
エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882 Courtauld Gallery

中央に立つ女性はホールのバーテンダーですが、初め見た時には、背面が鏡越しの世界だとわかりませんでした。
なぜかというと、女性が鏡に映った像は右すぎて、どう見ても不自然だからです。

マネはなんども構図を変えたことが、X線調査で判明されています。

想像以上の大作で大迫力。
愛想を振りまかない、バーの女性の迫力に圧倒されますが、鏡越しの彼女の前に男性がいるため、その人物と話をしている顔なのでしょう。

ルノワール《桟敷席》同様、女性は胸元が大きくあいたドレスに花を飾っています。
プルーストの『失われた時を求めて』に登場するオデットのカトレアのドレスを思い出しました。

ちなみに、ルノワール《桟敷席》とこの作品が、コレクション中で最も高価な作品だとのこと。(約11万ドル)

オルセー所蔵のマネ《草上の昼食》の制作にあたり、習作として描いた作品も展示されています。
同じポーズでありながら、人物の顔の表情などの詳細は描き込まれていない、ラフな仕上がりでした。

■ 第3章 素材・技法から読み解く

 ● ポール・ゴーガン《ネヴァーモア》

1897年に描いた大作。寝ている若い裸婦は、不安げな表情をしています。
画面上部の窓枠にはカラスがとまり、奥には二人の人物が見えます。


44月.jpg
ポール・ゴーガン《ネヴァーモア》1897 Courtauld Gallery

タイトルはエドガー・アラン・ポーの物語詩「大鴉(おおがらす)」からの着想。
語り手の元に大鴉がやって来て「Nevermore(二度とない)」という言葉を繰り返し、語り手の悲嘆を募らせるという内容です。

背後のカラスや女性たちの意味するものは明らかになっていないのだそう。
作品全体を覆うくすんだ色彩が、失われた野蛮の豪奢を表現しているという、ミステリアスな作品です。

■ おわりに

イギリスで印象派がそれほど評価されていなかった1920年代に、同時代の作家の作品をメインにした現代コレクションを構築したコートールド。
ゴッホの《ひまわり》がナショナルギャラリーにあるのは、彼の功績です。

コートールド氏は、作品を体系的に集めるのではなく、気に入ったものを直感で購入したとのこと。
感覚でこれほど素晴らしい作品を揃えられるというのは、かなりの目利きだったことがわかります。

1901年に夫婦旅行で訪れたイタリアで絵画に目ざめ、1931年の妻エリザベスの死をきっかけに収集活動を止めた彼。
生涯の伴侶の理解を得てコレクションを充実させ、近代フランス絵画を自国イギリスに広めることに努めた、夫婦の絆を感じます。

暑い夏が終わり、いよいよ芸術の秋の幕が開ける、美しく贅沢な作品の数々を一堂に鑑賞できる展覧会です。
〇巡回情報〇

2019年9月10日(火)〜12月15日(日)東京都美術館

2020年1月3日(金)〜3月15日(日)愛知県美術館

2020年3月28日(土)〜6月21日(日)神戸市立博物館
続きを読む
posted by リカ at 17:28| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする

2019年09月03日

ANRI LIVE 2019 ~さぁはじまるよ!ANRI CITY POP TOUR~

2019/9/1(日) 神奈川県民ホール 大ホール
36022_1.jpg

札幌在住の友人に声をかけてもらった、杏里のライブ。
久しぶりに彼女の歌を思い出して、時が戻ったかのように懐かしくなりました。
あの歌声を生で聴いてみたいと、会場に出かけました。

IMG_4452.jpg

友人は、ライブは今年のドリカム以来だそうですが、私は去年のローリー以来。

メジャー嗜好の友人は(えーっ、ローリー!)と驚いていましたが、いまでもため息がつくほど、素晴らしいライブでしたよ。
それはさておき、杏里が最近どうしているのか、伝わってこないなあと思っていたら、今は日本を離れてロスで暮らしているそうです。

 <プログラム>

缶ビールとデニムシャツ
Surf City
Surf Break HALEIWA
夏の月

気ままにリフレクション
悲しみが止まらない
コットン気分
D.J.I LOVE YOU

LANI~HEAVENLY GARDEN~
SUMMER CANDLES
CAT'S EYE
オリビアを聴きながら

(アンコール)
思いきりアメリカン
Good-Night For You

* ざっくり分かった曲だけ。実際にはもっと多く歌ってくれています。

IMG_4453.jpg

登場した杏里は青を基調にしたドレス、バンドメンバーは黄色やオレンジをベースにしたTシャツで揃えており、ステージ上は夏らしく華やか。
彼女ののびやかで力強い声は、私が知っている頃のままでした。

まとめて5曲ほど歌って、トークに入った時に、ステージ上にサプライズ・バースデーケーキが運ばれてきました。
前日の8月31日が、お誕生日だったそうです。
そのタイミングで、本人による写真撮影許可が下り、会場のみんなはスマホを取り出して、撮影会。

IMG_4460.jpg

なつかしのナンバーが次々に登場します。
中でも「LANI」のイントロが流れた時には、はっとしました。
カラオケで何度も歌ったことがある、とても好きな歌だったのに、しばらく忘れていたからです。
一気に時代がさかのぼります。なつかしい。
この一曲を生声で聴けただけでも、ライブにきた甲斐がありました。

今回は、ファン投票でライブの曲を選んだそうなので、人気の高いナンバーが集まったと思いますが、個人的には「ドルフィン・リング」も聴きたかったなあ。
「愛してるなんてとても言えない」もありましたね。

平成、そして令和と時代が変わっても、変わらぬ歌声を聴かせてもらって、元気をもらいました。
物心ついた時にはすでに歌っていた杏里。
彼女のプロフィールについて何も知りませんでしたが、神奈川出身なんですね。

今年でデビュー40周年の彼女が歌手になったのは、県立希望が丘高校2年生の時だったそう。
横浜銀蝿の翔とJohnnyが県立柏陽高等学校出身と知った時と同じくらい、驚きました。
どっちもかなりの難関校。みんな、頭いいのね~!

やっぱり杏里の曲は夏に聴きたいもの。
といいつつ、iTuneに入れている彼女の歌には「スノーフレイクの街角」もありますが。
カリフォルニアとかハワイのイメージが強い彼女ですが「だからなのか、ずっと待っていても北海道にライブに来てくれないから、待ちくたびれてこっちから降りてきたよ」と友人。
杏里だけでなく、ライブツアーの北限は仙台までというミュージシャンは結構多いと、ボヤいています。

「でも、札幌のライブよりもこっちのライブの方が、客席が盛り上がるんだよね」
確かに、この日も会場はノリノリで盛り上がっていました。

ところで、帰りに「オリビアを聴きながらのオリビアは何か?」という話になりました。
あれはオリビア・ニュートンジョンのことだったんですね。
知りませんでした!
私、どういうわけか、その曲はダイアナ・ロスのバラードについて歌っているんだと勘違いしていたのです。
オリビアとダイアナ・・・似てますものね(えーっ?)

あと、「悲しみが止まらない」の
~あの日電話が海になったの~♬
のワンフレーズの意味が、長年ずーっと分からずにいたので、友人に「どう思う?」と聞いてみました。

すると、一瞬黙った後に
「~あの日電話が不意に鳴ったの~♬、だよ」
と訂正されました。

なんですってー!
ずいぶん長い間、聴き間違えていたことが判明。

そんなわけで、長年勘違いしていたことを訂正し、スッキリした夜でした。
何度も着替えをして、そのたびにキラキラまばゆい衣装になっていった杏里。
デビュー40周年を迎えた喜びとともに「ここまできたら、もっと進めていきたいって欲が出てきました」と前向きに語っていました。

応援しています~。時代を超えても変わらぬ爽やかな杏里スタイルを、これからもずっと続けていってほしいです。
のびやかな歌声に、最後まで聴き惚れたライブコンサートでした。

IMG_4463.jpg
posted by リカ at 17:14| Comment(0) | 【music】Rock, Pops, R&B | 更新情報をチェックする