2018年02月05日

国宝 雪松図と花鳥 -美術館でバードウォッチング-

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三井記念美術館


展示終了前日に訪れた展覧会。
(花鳥図なら、戌年ではなく酉年に開催すればよかったのでは?)と思いましたが、この展覧会が開始したのは去年の12月、ちゃんと酉年でした。
年末年始を挟んだ時期柄、国宝や縁起のよい美術品が展示されています。
鳥の作品数が多く、充実していました。

● 円山応挙「雪松図屏風」(国宝) 

数ある円山応挙作品の中でも、国宝はこの1点のみだそう。
この美術館では、毎年新年に恒例としてこの作品を公開しているそうです。

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円山応挙筆「雪松図屏風」(国宝)6曲1双 江戸時代・18世紀 北三井家旧蔵


この雪の白は、着色せず紙の色をそのまま生かしているのだそう。
そう言われて見直しても、枝にかぶさるような雪には立体感があり、そうは思えないほど。色を塗るよりも難しそうです。

鳥モチーフの作品を見続けてきたため、今回は花鳥図の展覧会だったかとうっかり勘違いしかけて、今回の目玉の国宝「雪松図屏風」(左隻:円山応挙)を目の前にした時には、つぶさに眺めて(・・・どこにも鳥がいない。見方が悪いのかな)と思ってしまいました。

また、屏風の数え方を知りました。
このように6面がつながっているものは、6曲1双というのだそう。

小さめのものは「曲」ではなく「面」で、2面1双というのは半分に折れる小さめの屏風のことを指すそうです。

● 渡辺始興「鳥類真写図巻」

江戸時代は、大名から庶民まで、貧富の差無く、小鳥を飼うブームがしばしば起こっていたのだそう。

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渡辺始興「鳥類真写図巻」江戸時代 新町三井家旧蔵


次に展示されていたのは、渡辺始興の「鳥類真写図巻」。
数多くの鳥たちの詳細なデッサンは、今でも見入るほどに精緻です。
鳥の正面からの顔は、結構こわいですね。

● 柴田是真「稲菊蒔絵鶴卵盃」

江戸末期から明治中期にかけて活躍した蒔絵師、柴田是真(ぜしん)の「稲菊蒔絵鶴卵盃」。
器の素材はツルの卵。長さ10センチの卵を縦半分に切り、金を塗って加工したもの。
ツルやダチョウの卵に蒔絵を施した工芸品は、明治期から輸出され、欧州で珍重されたそうです。
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柴田是真「稲菊蒔絵鶴卵盃」江戸~明治時代 北三井家旧蔵


ほか、象彦(西村彦兵衛)の作品が3点ありました。

● 呉春ほか15名合筆「群鶏図屏風」

個人的に気に入った1枚。14名の絵師がめいめいに鶏の絵を描き、横にサインを加えています。そこに北三井家の当時の当主も混ざり、真ん中に1羽描いています。
画家がめいめい自由な発想で描いでおり、通常の鶏のほかに宙を飛んでいる鶏やひよこなどが描かれています。
何度数えても14羽しかいないのはなぜだろう?と思ったら、横にさりげなく描かれた籠にも一人絵師がついており、籠の中に鶏がいるという解釈なのだろうと気がつきました。

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呉春ほか15名合筆「群鶏図屏風」江戸時代 北三井家旧蔵


後の方の解説板に「三井家は鳥好きが多く、鳥の収蔵品が多かった」とあり、なるほどと思いました。実際に多くの鳥を飼っていたとのこと。
新町三井家の三井高遂(たかなる)氏は、鶏好きが高じて鶏研究者となり、全日本チャボ保存協会の会長も務めたそう。

鳥の華やかさやなめらかで動的な形は、アート化すると、さまざまな面白さが生まれます。鳥好きの自分としては、いずれ鳥をテーマにした三井の一大展覧会が開催されることを、期待しています。
posted by リカ at 17:06| Comment(0) | 【finearts】日本画 | 更新情報をチェックする

2018年01月18日

無伴奏の魅力

at 東京工業大学 大岡山キャンパス
by 辻本玲(チェロ・日本フィルソロ・チェロ奏者)、
岸本萌乃加(ヴァイオリン・藝大)、
藤原功次郎(トロンボーン・日本フィル首席奏者)
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<プログラム>
(チェロ)
G.カサド 無伴奏チェロ組曲
K.ペンデレッキ 無伴奏チェロのためのディヴェルティメント

(トロンボーン)
J.S.バッハの作品 主よ人の望みの喜びよ、グレゴリオ聖歌など
モーツアルト アヴェ・ヴェルム・コルプスほか

(ヴァイオリン)
J.S.バッハ シャコンヌ 無伴奏パルティータ第2番から


無伴奏というと、バッハの無伴奏チェロソナタを連想しますが、今回は伴奏のつかないソロ演奏の音楽会。
バッハ以外の無伴奏チェロ組曲を聴くのは初めてです。
カサドはバルセロナ(カタルーニャ)出身の今世紀の作曲家で、自身もチェリスト。
ペンデレッキも現代音楽家で、非常に難解な曲ながら、演奏者は技術を駆使して見事に弾きこなしていました。

弦楽器の合間に金管のトロンボーンが入るのが不思議でしたが、もともとは教会でのみ演奏されていた楽器だとのこと。この楽器が交響曲に初めて使用されたのは、ベートーヴェンの第5「運命」と第6「田園」(1808年)だそうです。
ビッグバンドの時とは違う、まろやかな音色が会場に響きました。

カーネギーホールでの演奏も果たし、優良演奏者に送られるカーネギーホール賞を受賞した演奏者。
この日は1月17日、阪神淡路大震災が23年前に起こった日で、10歳の時に被災したという彼は追悼演奏も聴かせてくれました。

「主よ人の望みの喜びよ」は、管楽器のソロだとブレスが大変。
演奏直前に、演奏者自らが「これ、うちの電話待ち受けのメロディです」と言ったので、会場が吹き出し、一気に和みました。

「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を金管で聴くのは初めて。モーツアルトの友人が亡くなった時に作曲したものだそう。
アンコールは、「ダニーボーイ」でした。

最後のヴァイオリンは、前回のメシアン演奏会の時の方。
演奏者は藝大の現役大学院生。今回も難しいフレーズが終始続く難曲を見事に弾きこなしてくれて、会場が静かな興奮のるつぼと化しました。

アンコールは、クライスラーの「スケルツォ」。
「3分ほどで終わります」と本人が言いましたが、とてもテンポが速くめまぐるしく指が動く、これまた難しい曲を聴かせてもらいました。

チェロとヴァイオリンの方は、その才能を評価され、CoCo壱番屋からストラディバリウスを譲渡されているのだそう。
ココイチは、そんな芸術的支援を行っているんですね。
調べてみたら、創業者はとてもクラシックに理解のある方でした。(→関連記事
「ですので皆さん、カレーを食べましょう」と主催者が締めくくっていました。

久しぶりの大雨の日でしたが、みずみずしい演奏家によるクオリティの高い演奏でした。
posted by リカ at 10:32| Comment(0) | 【music】Classic・室内楽 | 更新情報をチェックする