2018年08月23日

「納涼赤坂プラス寄席〜今宵は落語と音楽漫談と〜」

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出演:橘家蔵之助、のだゆき、三遊亭美るく
会 場︓「+PLUS」ACC-808

赤坂プラスで行われた納涼寄席。
おなじみの橘家蔵之助師匠に、今回は三遊亭美るく氏とのだゆき氏という二人の女性が座を盛り上げます。

まずは美るく氏から。
一人前の落語家になるには修行を重ねていかなくてはなりません。
師匠について見習い→前座→二つ目→真打と昇進していきます。
前座以上になると、師匠に名前を考えてもらうのだそう。

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三遊亭歌る多師匠の弟子である美るくさんは、前座となった時に「三遊亭歌る美」という名前をもらったそうです。
文字で見るときれいな名前ですが、読むと「カルビ」!
インパクト大ですね。

二つ目に上がった時に、「美るく」という名前をもらい、改名したそう。
可愛い名前ですね。
「カルビの次はミルク。うちの師匠は牛から離れられないので、真打になったら今度はチーズと改名するかも」と、笑わせてくれました。
演目は「紀州」。徳川御三家のお殿様の話でした。

次は、のだゆきさん。
音楽漫談って、なんでしょう。聞き慣れないジャンルです。

まずはピアニカ演奏から。軽く演奏するだけでも、とてもお上手。
すると、今度はピアニカを頭の上に乗せて、演奏しだしました。
ちゃんとメロディになっています。こんなシュールな光景、初めて見ました。
音楽センスというべきか、身体能力というべきか。とにかくすごいです。

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さらにお次は、リコーダーを取り出しました。
ソプラノ、アルト、バスという、大きさが違うものを、2本同時に口にくわえて、それぞれ演奏するという離れ業。
それがポーズだけなら、「あららー」と思って終わりですが、どちらの笛からもしっかりした音が出て、ポリフォニーのような多重和音演奏。全く違うメロディを奏でたりもします。
はじめは、コンビニ入店時のメロディや竿だけ屋の音の模写でしたが、笑点やサザエさんのメロディ、「ふるさと」、果てには「剣の舞」を演奏してくれました。
すごすぎて、圧倒されます。

大きなバスリコーダー、そしてとても小さいクライネソプラニーリコーダーノの存在を知りました。
果てには、リコーダーのヘッド部分に指を入れるだけで、多音の「ジングルベル」を演奏するというパフォーマンスも披露してくれました。

この人は、音楽大学の大学院を修了し、プロのピアニストでもあるそうです。
その腕をもって漫談の世界に入ったという、おもしろい人です。

そして最後に橘家蔵之助師匠が登場。
高校野球で活躍した金足農業のネタを出すなど、落語には旬の話題もいるんですね。

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今回の演目は「ぜんざい公社」。
聞き間違いかと思いました。こんなタイトルの作品もあるんですね。
ただぜんざいを食べたいだけなのに、四角四面なお役所仕事に巻き込まれ、許可印をもらうためにあちこちに行く羽目になる人。
昔も今も変わらない、官僚的な社会風刺が効いていて、おもしろかったです。

講演中には、どっと沸き起こるような笑いが、何度も会場に響きました。
夏の納涼落語、いいですね。
うだるような暑さを吹き飛ばす、粋で軽快なひと時を楽しみました。

posted by リカ at 18:50| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする

2018年08月22日

ミケランジェロと理想の身体

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お盆休み中に訪れたモネ展(横浜美術館)・フェルメール展(そごう美術館)・縄文展(東博)どれもが大混雑。
ここもすごいのだろうと覚悟して行ったところ、まったくそうではなく、落ち着いてみることができました。

なぜかしら?6月からやっているからかもしれませんし、夏休みに子供に見せるにはちょっと難しいからと、親が避けたのかもしれません。
隣の科学博物館の『昆虫展』は、大人気のことでしょう。

そんなわけで、夏休みのハイシーズンながら、ぐっと落ち着いた静かな空間で芸術鑑賞できました。

イタリア・ルネサンス期に活躍したミケランジェロ・ブオナローティ (1475-1564)。
テーマを見るに、オール・ミケランジェロ作品のようですが、そうではありません。
古代ギリシャ・ローマやルネサンス期の彫刻などに観られる理想の身体表現がミケランジェロに影響を与えた流れを紹介しています。

実はミケランジェロの大理石彫刻は、40点のみ。
フェルメール作品並みの少なさですね。

始めはかわいらしいプットーのモチーフ作品が並びます。
プットーはエンジェルと同じだろうと思っていたら「翼の生えた子供」のことだそう。
天使ではなく人間でした。

かわいらしいプットー作品が続くほのぼのとした作品の中に、さりげなく《蛇を絞め殺す幼児ヘラクレス》がありました。

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スケッジャ(ジョヴァンニ・ディ・セル・ジョヴァンニ・グイーディ)《遊ぶ幼児たち》1450-70年

顔は幼児ですが、首から下は妙に筋肉質。
(こんなムキムキの子供、いないわ!)と笑ってしまいます。
ルネサンス期の人体表現は、古代よりも逞しい姿で表されたため、幼児も大人のような筋肉をつけてあらわされたようです。

太い棍棒を持った筋肉質で強そうな《ヘラクレス》像もありましたが、後ろに回って見ると、お尻につっかえ棒がされており、休んでいるように見えてちょっと楽しくなりました。

今回のメイン作品は、ミケランジェロの大理石彫刻《ダヴィデ=アポロ》と《若き洗礼者ヨハネ》の2点。
それぞれ独立した隣り合わせのコーナーで360度眺められます。

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ミケランジェロ・ブオナローティ《ダヴィデ=アポロ》1530年頃

発来日となる、円熟期の作品です。
ダヴィデとアポロは全くの別人ですが、この像は未完成のままで、どちらになるべき像だったのかを推測できる情報が見られないため、両方の名前をつけているとのこと。

なぜ未完のままになったかというと、この像の作成途中で、ローマ教皇にシスティーナ礼拝堂の壁画を作成するよう命を受けたため。
彫刻を手掛けたいミケランジェロはかなり戸惑ったそうですが、教皇の命を断ることはできずに壁画に着手し、結局作成中のものは手つかずとなってしまいました。

まだ粗削り感が残り、それがかえってパワーや躍動感を生じさせる効果を上げています。
たしかに、ダヴィデならば足元にゴリアテの首がありそうで、アポロならば弓矢を持っていそうですが、どちらもありません。
身体を捻って筋肉に動きを出しています。
未完とはいえ、十分にミケランジェロらしさが見られる作品です。

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ミケランジェロ・ブオナローティ《若き洗礼者ヨハネ》1495-96年

『若き洗礼者ヨハネ』はうら若い少年像のヨハネ。
少女のようなかわいらしい顔つきですが、ぐるりと回ってみてみると、なかなか筋肉のついた身体です。

また、顔は白黒に色がつぎはぎになっています。
この像はスペイン内戦中の1936年にこなごなに破壊され、修復されました。
オリジナルは40%のみしか残っていないものの、ほぼ完成形に再現されています。
今後オリジナルの部分が見つかった場合に差し替えできるようになっており、オリジナルと修復部分がわかるように、あえて違う色にしているそうです。

ミケランジェロ20歳の青年期の作。
やや足を曲げるコントラポストのような姿勢は、前編でご紹介したギリシャからの影響かもしれません。

《ダヴィデ=アポロ》と《若き洗礼者ヨハネ》は以前も同じ場所で保管されており、実に500年ぶりの再会となるそうです。

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ヴィンチェンツォ・デ・ロッシ《ラオコーン》1584年頃

感激だったのが、ヴィンチェンツォ・デ・ロッシの《ラオコーン》が撮影OKだったこと。
ラオコーンは、トロイの木馬を市内に入れるのに反対して、2人の息子と一緒に2匹の蛇に絞め殺されてしまったトロイの神官です。
この古代彫刻は、ミケランジェロの時代に発掘され、大きな話題を呼びました。

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他の追随を許さないダイナミックなポーズとドラマチックな表情。
筋肉表現も見事で、ミケランジェロの心をとらえただろうことは想像に難くありません。

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こちらは個人蔵で、ガッレリア・デル・ラオコーン寄託。
「ラオコーンのギャラリー」という名前なので、この作品をメインとする所なのでしょう。
当時、この作品のレプリカが多く作られました。
同タイトル、同ポーズのミケランジェロの作品を、ヴァチカン美術館で見たことがあります。

ミケランジェロは、どうも作品や名前のイメージから、ギリシア・ローマ神話に出てくるような一枚衣のトーガを羽織っているようなイメージがありますが、古代ギリシア時代ではなくルネッサンス期の人。
ダ・ヴィンチ、ラファエロとともに、ルネサンスの三大芸術家として名を馳せています。
チェチョーニ作のボタンをきっちりはめた制作中の像を見ると、(こうした格好で制作していたんだ)と現実を知った気分です。

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アドリアーノ・チェチョーニ《モーセ像を制作するミケランジェロ》1879-80年

フィレンツェにゆかりの深いミケランジェロでしたが、晩年は教皇庁の専属芸術家となり、ローマで没します。
甥のレオナルド・ブオナローティがそのなきがらを盗み出してフィレンツェに運び、改めてサンタ・クローチェ教会に埋葬されたそう。
生前の本人の意思を汲んでのことでしたが、盗むしかなかったのでしょうか。
一度はローマに埋葬されたわけですから、大ごとになっただろうと思います。

ミュージアムショップには、キャラクターのミケにゃんグッズが充実していました。
なるほど、三毛猫とミケランジェロをかけあわせたんですね!
ミケランジェロの2つの彫刻を見られるだけでも非常に価値の高い展覧会。
さらにラオコーンにも会え、満足度が高いものとなっています。

また、公式サイトには、ブラック・ジャックがピノコとミケランジェロ展を訪れたという設定のマンガ『ブラック・ジャック〜ヨハネ像、東京へ来る』(5ページ)が掲載されています。
手塚治虫そっくりの絵柄を描く手塚プロダクション公認のパロディ漫画家、つのがい氏による書下ろし。
ファン必見です!
『ミケランジェロと理想の身体』
 国立西洋美術館
 2018年6月19日(火)~2018年9月24日(祝)
posted by リカ at 16:04| Comment(0) | 【finearts】書・版画・彫刻 | 更新情報をチェックする

2018年08月21日

「縄文-1万年の美の鼓動」(縄文展)

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2009年の『国宝 土偶展』と2014年の『日本国宝展』を見逃したことを、悔やんでいた私。
今回、これまでで最多となる縄文時代の国宝6点がずらり揃って展示されると知りました。
ダイナミックな史上初の企画です。
ぜひ、一堂に会した国宝土偶を観てみたい!と行ってまいりました。

この展覧会は7月から開催されていますが、後期展示の「仮面の女神」と「縄文のビーナス」の公開を待っての来館となりました。
開場時間に行ったところ、列ができており、並んでから入りました。

すごい人です。大人気!
これほどまでに大勢の人たちが、観たいと思って集まってきているとは。
たしかに縄文時代が嫌いという人に会ったことは、ありません。
弥生時代よりも素朴で大胆で、興味をそそります。

開館直後で第1会場が人でごった返しているため、まだ無人の第2会場に誘導されました。
中に入った早々、国宝の火焔型土器がドーン!とあり、そのダイナミックさに思わず後ずさりしました。

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国宝《火焔型土器》新潟県十日町市 笹山遺跡出土
十日町市蔵(十日町市博物館保管)
* 画像はすべて公式サイトより

去年、発掘現場の新潟・十日町の笹山遺跡を訪れ、当時の格好をした自称縄文人に住居に招かれ、囲炉裏で焼いた川魚でもてなしてもらったことを思い出します。
多分に装飾性に富んだ火焔型土器はこれ一点のみかと思っていましたが、たくさんあり、ずらりと並んだ様子が壮観。
360度から見られるようになっており、どの角度から見てもしっかり作りこまれている、あふれるクリエイティビティに感嘆します。

展示室の中に入ると、みんな大好き・土偶がずらりと並んでいます。
日本で発掘された2万点ほどの土偶のトップに立つ国宝5点が勢ぞろいしています。
これはすごい!入った早々、大興奮。

一つ一つをじっくり眺めます。
長い時空を超えて出会った私たち。お互い同じ時間の場所に存在していることが、不思議です。

「縄文のビーナス」と「縄文の女神」は、名前の上でごっちゃになっていましたが、形は全然違いました。


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国宝土偶 《縄文のビーナス》長野県茅野市 棚畑遺跡出土
茅野市蔵(茅野市尖石縄文考古館保管)


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国宝土偶 《縄文の女神》山形県舟形町 西ノ前遺跡出土
山形県蔵(山形県立博物館保管)

ビーナスはどっしりした安産型で、女神さまはスラリとしてモデルスタイル。
パンタロンを履いているようで、なかなかオシャレです。

仮面の女神は、俵に乗ったキツネの神様みたいで、愛着がわきます。
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国宝土偶 《仮面の女神》長野県茅野市 中ッ原遺跡出土
茅野市蔵(茅野市尖石縄文考古館保管)

合掌土偶は、2年前に八戸の是川縄文館に会いに行きました。
今度はあなたが上京してきてくれたのね。
ということは、縄文館では夏の間、一番人気のこの土偶は観られないんだなあ、とちょっとお気の毒に思います。

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国宝土偶 《合掌土偶》青森県八戸市 風張1遺跡出土
八戸市蔵(八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館保管)

当時の人々が補修した後が、残っているのだそう。
私たちの遠いご先祖様が大切にしていた土偶たちです。

一番謎だったのが中空土偶。北海道唯一の国宝です。
足に何かはさんでいますが、それについての解説はありませんでした。

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国宝土偶 《中空土偶》北海道函館市 著保内野遺跡出土
函館市蔵(函館市縄文文化交流センター保管)

会場内のどこからか「土偶といったら青森だよね」という声が聞こえてきます。
たしかにそんな気はしますが、国宝は合掌土偶しかいません。
国宝の土偶は、むしろ長野の方が多いです。

次の展示室の中央で出迎えてくれたのは、遮光器土偶でした。

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重要文化材《遮光器土偶》青森県つがる市木造亀ヶ岡出土
東京国立博物館蔵


シャコちゃーん!(1988年青函博のキャラクター)
教科書に載っている、日本で一番有名な土偶。
なのにこれは国宝ではなく、重文です。
出土状況が不明なものは、国宝として認定されないのだそうです。

出土された亀ヶ岡遺跡を訪れた時に、この土偶の複製品を多数見かけましたが、オリジナルはここ東博が所蔵しています。
青森にあるのは全てレプリカのようです。
宮城の遮光器土偶も2点展示されていました。

青森版は片足欠けていますが、宮城版は両足ある完全体でした。
ほかにハート型土偶もありました。幸せになれそう。

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重要文化財《ハート形土偶》群馬県東吾妻町郷原出土 個人蔵

どれも同じ、パターンが似ているものかと思いましたが、並べてみると一つ一つがとても個性的。
ユニークで温かみがあり、今にも動き出しそう。動き出したらいいな。

三内丸山遺跡から出土された木製編籠は、縄文ポシェットといわれています。
しっかりと編みこまれており、実用性を感じるもので、今でも商品として売られていそう。
発見時には、クルミが入っていたそうです。
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・重要文化財《木製編籠 縄文ポシェット》青森市 三内丸山遺跡出土
青森県教育委員会蔵(縄文時遊館保管)

一見象牙でできたようなモリの先端がありました。
『鹿角製銛頭』という名前を見て気づきます。
日本に象はいませんでしたねナウマンゾウくらいしか。
ほかに熊の犬歯やサメ歯で作った垂れ飾りなどもありました。

めずらしく丸みを帯びている『壺型土器』。
縄文土器は鋭角で、デザインも直線で描かれたものが多いけれど、晩期のものは弥生時代の始まりにつながる兆しが見えているのかもしれません。
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重要文化財《壺形土器》青森県十和田市滝沢川原出土 文化庁蔵

たくさん展示されていますが、小品が多く、じっくり見る人が多いため、ここでも行列がなかなか進みません。
どれも『土器』や『土偶』といった同じタイトルのものが多く、さらに番号順の陳列ではなく、飛ぶことが多いため、作品リストとの照会にあたふた。
それでも、作品ごとに出土場所を地図表示しているので位置把握をしやすいです。

土偶が土器についている『土偶装飾付深鉢型土器』などは、かわいらしさにあふれています。
壺になぜか顔が付いた『顔面付き壺型土器』もあり、壺の精のよう。

ほかにも顔が乗ったやかんのような『顔面装飾付 注口土器』『顔面装飾付 香炉型土器』があり、ハクション大魔王というかアラジンのジニーを連想しました。


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重要文化財《人形装飾付有孔鍔付土器》山梨県南アルプス市 鋳物師屋遺跡出土
南アルプス市教育委員会蔵

縄文のものに魅せられた有名人も多く、柳宗悦の岩偶も展示されていました。
土偶ではなく岩偶もあるんですね。
岡本太郎の太陽の塔は、土偶と同じ顔のように思えてきました。
川端康成がハート形土偶と一緒に写っている晩年の写真もありました。
世界のカワバタが、穏やかでいい表情をしていますね。

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康成「現代の前衛彫刻を思はせるやうなところもあるが、
どの角度から見ても、わざとらしさや破綻はない、みごとである。」

長い年月を経てもなお、その暖かさと存在感で人々の興味を引き続ける縄文時代の作品の数々。
すべての展示物に、時をしのぐ力強さを感じました。
特別展『縄文-1万年の美の鼓動』
東京国立博物館(東京・上野)
2018.7.3~9.2