2019年07月31日

恐竜を追って50年~特別展「恐竜博 2019」

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一昨年は人体展、去年は昆虫展と、夏休みの科学博物館は、毎年子供の興味をくすぐる特集を組んできます。
今年は恐竜博。これは、大人も子どもも行っちゃうでしょう。

13日の初日から入館に100分かかるとニュースになっていました。
開始直後の混雑が引き、なおかつ夏休みの混雑が始まる前のタイミングを狙って、行ってまいりました。
(開始から17日目の7月29日に、来館者数は10万人を突破したそうです。)

想像通りに、家族連れがたくさん!
中でも、夏休みはあまり関係ないような、幼稚園以下の小さな息子を連れたお父さんのコンビが大勢います。
展示物のほとんどは、うれしい写真撮影OK。
5章構成の中で、大きなチェックポイントが3つありました。

■ チェック1:「恐ろしいツメ」デイノニクス


会場に入ると、まずは第1章『恐竜ルネサンス』。
デイノニクスの化石が迎えてくれます。
50年前にアメリカで発掘されたデイノニクスは、「恐竜ルネサンス」とされる新しい恐竜観を生み出し、そこから恐竜研究の新しい時代が始まったといわれています。
この展覧会では、それからの恐竜学50年の歩みと、最新の研究を紹介しています。

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50年前の1969年は、人類が月に到着した記念すべき年。
宇宙探索と同時に、新しい恐竜研究の幕開けともなった年だったんですね。

スタミナが必要な小型肉食恐竜の一部は、爬虫類と同じ変温動物ではなく、鳥類のような恒温動物へと進化したという説は、現在広く支持されています。

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展示されているのは、世界に1つしかないデイノニクスのホロタイプ標本。
「恐ろしいツメ」を意味するデイノニクスのかぎ爪の部分です。
9センチもあり、こんな爪でザックリやられたら、ひとたまりもありません。

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獲物に飛び掛かるデイノニクス

すごい跳躍力。自分よりも大型のテノントサウルスに飛びかかっている様子です。
大口開けて、両腕を広げて、全身を使った攻撃。
こんなのに襲いかかられたら、まさにジュラシック・パークばりの恐怖感を味わうことでしょう。


〇 「子育て恐竜」マイアサウラ


以前は、恐竜は卵を産みっぱなしで、生まれた子の世話はしないとされていました。
しかし1979年に、巣と考えられるくぼみで卵を産み、子育てを行っていた恐竜の形跡が確認され、マイアサウラと名付けられました。
「良い母親トカゲ」という意味だそうです。オスもマイアサウラですが…。

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最古のファミリー

恐竜好きには、もはやおなじみの"恐竜母さん"のようです。
体長は8-9m。なんというか、本当の意味でのグレートマザーですね。

■ チェック2:「謎の恐竜」デイノケイルス


展覧会の目玉といえるのが、第2章『ベールを脱いだ謎の恐竜』に登場するデイノケイルス。
白亜紀末に生息した、全長約11メートル、高さ約4.5メートル、2.4メートルの長い腕を持つ恐竜です。
1965年にモンゴルのゴビ砂漠で前あし部分が見つかったものの、長い間他の部分が見つからず、約40年間「謎の恐竜」とされてきました。

デイノケイルスは「恐ろしい手」という意味。
見つかった前あし(=手)は、地球上に存在した全ての動物の中でも2番目の長さだそうです。恐ろしいですね!

2006年と2009年にほぼ全身の骨が見つかったことで、ようやくその姿が明らかになりました。
さまざまな恐竜の特徴をあわせもつ、想定外の恐竜であることが判明。
ここでは、デイノケイルスの実物化石の全身骨格が、世界で初めて公開されています。

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● 「恐竜の王」ティラノサウルス


子供の頃、恐竜といったら、
ティラノサウルス、トリケラトプス、プテラノドン、イグアノドン、ブラキオサウルス、ステゴサウルス、プレシオサウルス・・・
おやおや、思い出せるのは3つくらいかと思ったら、結構出てきました。

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中でもやっぱり一番人気は、恐竜の王・ティラノサウルスではないでしょうか。
ハリウッド映画にもよく登場する、人気の種です。
Wikipediaに「恐竜映画」というジャンルがありますが、「ティラノサウルスを主題とする作品一覧」なんて項目もあって、ビックリ。
かなりたくさんあって、これまたビックリ。

■ チェック3:「日本の恐竜」むかわ竜


第4章は『「むかわ竜」の世界』。
北海道で約7200万年前の地層から発見されたハドロサウルス類恐竜、通称「むかわ竜」の全身復元骨格が登場します。
地元のむかわ町以外で展示されるのは、これが初めてだそうです。

かつて海だった地層から見つかったため、長い間、首長竜とみなされていましたが、近年、恐竜の化石と判明。
続く発掘調査で全体の約8割の骨が見つかり、日本の恐竜研究史を揺るがす大発見となりました。

● 首長竜と恐竜


ここで知ったのが、首長竜は、学術的には恐竜ではないということ。
恐竜は<主竜類>に属しますが、首長竜は<鱗竜形類>に属し、現生爬虫類のトカゲやヘビに近いグループになるのだとか。
たしかに、説明には「水生爬虫類」と書かれています。
ジュラ紀や白亜紀の巨大な生物は、みんな恐竜だと思っていましたが、違ったんですね!

発掘されたむかわ竜は全長8メートル超と巨大。
骨は部位が特定できたものだけでも222個あり、全体の約8割を占めるそう。
「日本一の恐竜化石」と呼ばれています。
平面に置かれた実物化石の上には、むかわ竜の立体的全身復元骨格が展示されており、化石が息を吹き返したかのような迫力です。

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● 化石クリーニングラボ


第二会場は、岩石から化石を取り出すプレパレーター作業を見られる部屋があります。
残念ながら、ちょうど担当者のお兄さんが休憩に入るところでした。
取り扱っているものは、アリゾナで発見されたワニの化石。
「恐竜じゃなくてごめん」と、小さい字でホワイトボードに書いてありました。
お兄さんの優しさ!

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■ まとめ


恐竜は、三畳紀後期からジュラ紀、そして白亜紀まで繁栄していましたが、約6550万年前の白亜紀に起こった<5回目の大量絶滅>で、現生鳥類につながる種を除き、突如消滅しました。

この<ビッグファイブ>で地球上全生物の75%以上が滅びます。
生き延びることができたのは、小さかった小型の哺乳類や鳥類のみでした。
その子孫が我々人間で、現在の地球で繁栄しています。

ただ、現代はこれまでにない速度で種が絶滅しており、すでに<第6回目の大量絶滅期>に突入しているのだそう。
その原因は、気候上の大変化ではなく、人間の無謀なまでの開発によるもの。
地球上の生命すべてを破滅に追いやる前に、わたしたち人間が、早急に対策を講じる必要があるでしょう。

これまで恐竜を、太古の化石としてとらえていましたが、この展覧会を見て思ったのは、恐竜の研究は、化石学や考古学というよりも、限りなく生物学に近いものになっているということ。
化石しか残されていなかった歴史の断絶期間を埋めるように、恐竜学は日々めざましく進歩し、かつて生きていた動物としての研究成果が紹介されています。
そういった意味では、かなり映画『ジュラシック・パーク』に現実が近づいているといえるでしょう。

とはいえ何千万年も前に絶滅した恐竜は、まだまだ謎に包まれた部分が多い未知の分野。
私たちの夢とロマンをかき立ててなりません。
今年の夏は、恐竜博で太古のロマンに触れてみてはいかがでしょうか。

特別展 「恐竜博 2019」THE DINOSAUR EXPO 2019
国立科学博物館
2019/7/13〜10/14

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2019年07月29日

兜が重くて武士はつらいよ~日本のよろい!

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日本のよろいは、武士の身を守る道具ですが、加えてさまざまな工芸技術が織り込まれた一つの芸術品でもあります。
武士の戦場での活躍を際立たせる効果を狙って、人目を引く華やかな美しさも求められ、デザイン性に富んだものになっています。

この展示では、中世・近世に作られた本物のよろいと、現代に作られたよろいの製作見本をあわせて展示し、複雑に見えるよろいの構造などを分かりやすく紹介します。

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重要美術品 金小札紅糸中白威腹巻(きんこざねべにいとなかじろおどしのはらまき) 安土桃山時代・16世紀

500年ほど前に製作された甲冑です。

ちなみにこの「重要美術品」とは、「重要文化財」とは違います。
優れた美術品や歴史的資料の海外流出を防ぐ目的で制定された、準国宝級の美術品のことです。
重要美術品は1950年の『文化財保護法』の制定時に廃止となりましたが、重文(重要文化財)に次ぐものという意味で、現在でも使われることがあります。


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現代のものとしては、伊達政宗など、戦国武将の鎧をイメージして作られた甲冑の製作見本が4体、飾られていました。
実際にこうした武将たちが集っていたら、さぞや目立っただろうと思います。

「親と子のギャラリー」と書かれているように、たしかに子供連れもいましたが、むしろ外国人に大人気でした。
よろいを触ったり、かぶとをかぶったりできる、体験型の展示で、大喜びで兜をかぶせてもらっている外国人の様子を見て、私もかぶせてもらうことに。
彼らのおかげで勇気が出ました。

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実際にかぶってみると、重くて頭を動かせません。
うっかり下を向いたら、もう首を上げられなさそう。
「20キロくらいありますよ」と、兜を支えてくれながら、係の人が教えてくれました。

なんとなく、ひこにゃんの兜に似ていますね。


期間中は革や鉄でできた小さな板“小札(こざね)“を紐で結び合わせる“おどし”の技術を使った飾りづくりのワークショップ(予約制)や、鎧の着用体験(先着順)が実施されています。
本館-特別4室 日本文化体験コーナー
2019年7月17日(水) ~ 2019年9月23日(月)
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2019年07月26日

少数精鋭、お宝ぞろい~特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」

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本展では、7〜8世紀に奈良県北東部に創建された岡寺(おかでら)、室生寺(むろうじ)、長谷寺(はせでら)、安倍文殊院(あべもんじゅいん)の4寺が所蔵する名品を展示。
全作品15件のうち、国宝が4件、重要文化財が9件の豪華なラインナップです。


● 岡寺

岡寺からは、開祖とされる飛鳥時代後期から奈良時代にかけての高僧・義淵僧正の《義淵僧正坐像》(国宝)。

● 室生寺

真言宗室生寺派の大本山、室生寺からは、《国宝》十一面観音菩薩立像など。

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《国宝》釈迦如来坐像 平安時代・9世紀 奈良・室生寺蔵

平安時代初期の一木彫像とは思えないクオリティの高さと保存の良さ。
衣装の襞が深く彫り込まれています。

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《国宝》十一面観音菩薩立像 平安時代・9~10世紀 奈良・室生寺

● 長谷寺

長谷寺の御本尊は、奈良時代の8世紀初頭につくられた、10メートルを超える《十一面観音菩薩立像》。
その御本尊を模してつくられた、長谷寺式十一面觀音菩薩像が展示されています。
こちらは小型です。

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《重要文化財》十一面観音菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 奈良・長谷寺蔵

展示品の中で個人的に気に行ったのが、雨乞いの難陀龍王立像(なんだりゅうおうりゅうぞう)。
長谷寺の御本尊、十一面観音菩薩立像の脇侍で、もう一体の脇侍、赤精童子(雨宝童子)立像も隣に展示されています。

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《重要文化財》難陀龍王立像 舜慶作 鎌倉時代・正和5年(1316) 奈良・長谷寺蔵

頭に龍を載せているために横にして寝かせられず、立った状態のままで厳重梱包をして、大変な思いをして東京まで運んできたそうです。

● 安倍文殊院

安倍文殊院からは、快慶作《文殊菩薩像》の像内から発見された文殊菩薩像像内納入品の経巻《仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等》。
国宝です。

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《国宝》文殊菩薩像像内納入品《仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等》 1220(鎌倉時代、承久2年)
奈良・安倍文殊院蔵 画像提供=奈良国立博物館

それぞれのお寺を参拝しても、こうした銘品は通常は非公開か、宝物殿の中に安置されており、なかなかお目にかかることができません。
いい機会となりました。

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特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」
東京国立博物館 本館11室
会期は6月18日~9月23日

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posted by リカ at 19:46| Comment(0) | 【finearts】書・版画・彫刻 | 更新情報をチェックする