2008年07月22日

ラ・スコーラ×都響 コンサートオペラ『トスカ』

3188_l.jpg会場:サントリーホール
指揮:マルコ・ボエーミ
カヴァラドッシ(恋人の画家):ヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ
トスカ:並河寿美
スカルピア(警視総監):直野資

プー子ちゃんに、プッチーニの『トスカ』のチケットを譲っていただいた。オペラの舞台を生で観るのは、初めて。
どんな感じなのか、楽しみだという期待と好きでなかったらどうしようという不安が半々。
ナビゲーターの朝岡聡が進行役として簡単にあらすじを説明する。これは休憩後の第2幕でも同じで、説明のみで省略された部分もあった。これは指揮者ボエーミの発案だとのこと。オペラは長丁場なので、カットしないと通常時間内に聴かせられないためだと思う。

CIMG4196.JPG暑い外から冷房の効いたホール内に入り、身体が慣れてきて、始めの方は少し眠かったけれど、途中からがぜんおもしろくなってきた。
有名なアリアの数々のイメージが強いため、オペラは概してとても美しく、そして悲しい物語なのかと思っていたけれど、『トスカ』はストーリーがなんだかすごい。

舞台は1800年のローマ。ヒロインのトスカは、めくらめっぽう気が強くて嫉妬心も激しい。恋人の画家が青い目のマリア像を描くと、「私と同じ黒い目に塗り替えて」と言う。画家は、トスカと付き合っている限り、黒目の女性しか描けないんだろうな、と思う。
ジェラシーが物語を動かしていく、大切な動力になっている。トスカがジェラシーで恋人の後を追うことで、敵役の警視総監に彼の居場所がばれてしまう。

途中、警視総監が「イアーゴはハンカチで、私は扇で嫉妬心をあおる」と歌うシーンがあり、まさにこの話は、イタリア版『オセロ』だと思った。イタリアオペラはシェイクスピア悲劇に似ているんだろうか。愛憎がとても激しい。
”私は今こうしたい、だからこうする”という行動ばかりで、誰もが今現在のことしか考えておらず、後先考えない行動をとる。
始めは壇上の人物の行動にあ然としていたけれど、そのうち(もうすごすぎ!)と笑えるようになった。

銃殺される恋人の命乞いをするトスカに身体を要求する警視総監。そのあけすけっぷりは、やはり地中海風土ならではなんだろうか。
(イタリア本国では、オペラは子供は観ないのだろうか?これは教育上よろしくない話の展開では・・・)などと、余計なことに気を揉んでしまう。
「トスカ、とうとう我が物」と迫る警視総監を「これがトスカのキスよ!」とナイフでざっくり殺して、恋人のいる牢屋へ行き、「国外へ逃げましょう」と未来へ夢をはせる二人。
えー!その可能性をしていかに?
誰もがせつな的に、自分の心の赴くままに行動するため、結果的に、みんな死んでしまうという終わりになる。
ドラマチックかつダイナミック悲劇だけれど、ドタバタ劇に見えないこともなく、全編荘厳なムード漂うものだと思っていた私は、少し拍子抜けしつつも、一気に親しみが増した。

愛と憎しみのほかにも、裏切りあり、陰謀ありと、なかなかドロドロした話で、まさにシェイクスピア作品だけれど、オペラのアリアなど、美しい音楽が時折入るので、中和される感じ。
私のiPODにも、トスカが歌う「歌に生き、恋に生き」と恋人が歌う「妙なる調和」「星はきらめき」の3曲のアリアが入っており、(美しいメロディだなあ)と思って、歌手の声に聴きほれていたけれど、実際歌詞が電光板に表示されると、かなり肉感的な内容だったりして、(え〜!そんなことを歌っていたとは気付かなかったわ)と驚いた。

途中で、マンガ『動物のお医者さん』に『トスカ』の話が出てきたことを思い出した。コメディマンガなので、悲劇なのに舞台裏の混乱で喜劇になってしまったことがおもしろおかしく描かれている。
あとは、妹尾河童の『河童が覗いたヨーロッパ』で、サンタンジェロ城が取り上げられ、「トスカは、この城の上からテベレ川に飛び込んだとされるけれど、実際には少し距離があり、どんなにアクロバティックにジャンプしても無理そう」と書かれていたことも思い出して、なんだか楽しくなった。

歌劇のことばかり書いてしまったけれど、一段下のステージで演奏していたオーケストラは、とてもすばらしかった。曲はとてもいいし、演奏も上手。場面に応じて挿入される笛の音や夜明けの鐘の音も、ムードが出ていた。指揮者ボエーミは、この劇の舞台のローマ出身とのことで、なじんだ物語なのかもしれない。音楽が文句なしだったため、劇の方に集中できた。

びっくりしたり、引いたり、笑ったりして、つまりはとてもおもしろかった。まさかオペラを観て、血沸き肉踊る気持ちになるなんて。でもこの高揚感は、もしかすると格闘技観戦などよりも強いかもしれないと思う。これがオペラパワーなのね。会場も大盛り上がり。カーテンコールはいつまでも続いた。

会場を出てから、連れと「イタリアの人たちって、情熱的ね」「ちょっと日本人には、登場人物の性格が強くて激しすぎるね」「でもおもしろかったねー」と話し合った。
今まで、オペラといったらワグナーの『ニーベルンゲンの指輪』などのイメージが強く、長くて高くて重いものだと思っていた。オペレッタは好きで、機会があれば観ているけれど、オペラも実際は、もっとくだけた面白いものなんだなとわかったのが、収穫だった。
posted by リカ at 11:45| Comment(2) | TrackBack(0) | 【music】Classic・声楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「トスカ」って、ロシア語では、憂鬱だとか「物悲しい気分」を表す言葉なので、オペラ「トスカ」も静かな哀愁溢れる話かと勝手に想像していたのですが、実際には、ものすごい情熱溢れるストーリーなんですね。愛のためなら死んでもいいという実現できない(実現しちゃったら回りに迷惑をかけちゃう!)欲望を体現してくれるから、観客は素直に高揚感を味わえるのかもしれないですね。
 サントリーホールで上演するオペラって、ちょっと想像できなかったんだけど、音楽もよくて楽しんでもらえたようでよかったです。
Posted by ぷー子 at 2008年07月28日 10:59
ぷー子ちゃん

ロシア語の「トスカ」にそんな意味があったなんて、驚きです!
私は、イタリアつながりで「トスカーナ地方」を連想していました。トスカーナ地方の女性はみんな明るくて強い人たちなのかなって。

サントリーホールもとっても久しぶりでした。入り口の噴水が目に涼しかったわ(^^)
Posted by リカ at 2008年07月28日 15:30
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