2011年06月18日

「“世界観”が判れば見方が変わる!? 映画鑑賞&制作術」

pamph10pict.gifby 榎本憲男(映画監督)
at 一撃カフェ

シブヤ大学「“世界観”が判れば見方が変わる!? 映画鑑賞&制作術」

初めて参加したシブヤ大学。
映画監督、榎本憲男氏による、映画鑑賞法についての講座で、キーワードとなるのは「映画観」でした。

採り上げられたのは、『ブレードランナー』『ファイト・クラブ』『アメリカン・ビューティー』『イージー・ライダー』『イントゥ・ザ・ワイルド』というハリウッド作品。
正直、どれも私の好みではなく、大まかなあらすじは知っていても、観たことがないものばかりでした。
逆に、苦手意識を持つ映画にどう向き合っていけばいいのか、なにかヒントがもらえればという気持ちもあり、興味シンシンです。

世界観(World View)ということばは、ドイツのカントが初めに言いだした言葉だとのこと。
つまりは映画世界の設定がなされる、作り手の表現です。
映画の世界観は、分析と構成で成り立っているとのことでした。

それは、現実からすこしずらした世界を指しており、SFやライトノベルが強い世界観が反映されたものとなるのだそう。
大塚英志の「ストーリーの作成において、強い世界観を構築するにはズレた世界を作ることだ」という言葉が紹介されました。
フィクション度が高いほど世界観が重要視されるため、純文学では、世界観という言葉はあまり使われないというのが、斬新な気付きでした。

普段見慣れた現実とはどこかが違う世界。
それを『ブレードランナー』の映像を見ながら説明してもらいました。
これはフィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を映画化したもので、LAが舞台ですが、スクリーンには私達が知りえない、動物のいないアンドロイド社会の近未来都市が映し出されていました。
内容的には、人が複雑になると精神が生まれる、人間の自由意志はあるのかという、ややこしい問題が含まれた設定だそうです。

それから『ファイト・クラブ』と『アメリカン・ビューティー』が紹介されました。
全く違うジャンルのようですが、どちらも「日常の世界の生き抜くさ」について表現されたものと説明されて、なるほどと合点がいきました。
それは社会の問題のほかに、生き方という世界への接触の仕方の困難さがあるからだとのこと。
リアリティの中にある不安感が、形ないままに観客に伝わってきます。
「まともな人間こそが社会をうまく生きられない」という感覚が織り込まれており、なんとかその解決法を見つけようともがく人の姿が、両方の作品に描かれているそうです。
これは『マルコヴィッチの穴』にも見られる感覚だとのこと。
そして、社会に生きることで感じるむなしさ、不全感をチューニング(調整)するための解決感覚として、村上春樹のうちだした「小確幸(小さくて確実な幸福)」が紹介されました。

それから監督の初作品『見えないほどの遠くの空を』も紹介されました。
やはり、孤独感と不全感を抱えた主人公が登場するそうです。

最後に『イントゥ・ザ・ワイルド』が紹介されました。
ここで、主人公が「社会の外の遠くを目指す」という行動について語られます。
社会での生きにくさを感じるため、「ここではないどこか」に向かう彼ら。
そして非日常を経験し、また戻ってくるというのが、映画の基本パターンだということです。

確かにトールキンの『行きて戻りし物語』が冒険物語のベースとなっているといわれているため、やはり映画作品でもそれは基本として取り込まれているのですね。
また再び元いた場所に戻ってきても、旅を体験することで、主人公は変化(成長)を遂げているため、元通りということにはならないとのことです。
アメリカン・ニューシネマのほとんどが死や敗北で終わるというのは、意外でした。
『イージー・ライダー』の主人公は時計を捨て、『イントゥ・ザ・ワイルド』の主人公はクレジットカードを捨てますが、どちらも最後に死を迎え、何かの暗示となっているような示唆がされています。
ハッピーエンディングの多いハリウッドものとは、かなりカラーが違うものですね。
成功も失敗も含めて、個人が変化するというきっかけが旅に出ることにあると、その意義を説明してくれました。

社会の不全感を埋めるために、人は旅に出、人と知り合い、日常を変化させていく。
それを決められた世界観の中で表現したのが映画だというのが今回のまとめのようです。

現在の情報化社会において、これまでのような旅は可能か?という問題が最後に提示されました。
それでファンタジーやSF、ライトノベルといったジャンルが大きく採り上げられているのかもしれません。

監督の好きな映画は『Taxi Driver』と『Raising Bull』とのことで、やっぱり私の好みとは真逆。
苦手な映画は苦手なままにしていましたが、見方や考え方がわかったことで、今回例として挙げられた作品への苦手意識は無くなりました。
今後の映画鑑賞の大きな参考になる、私にとっては目からウロコの斬新な授業でした。
posted by リカ at 15:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 【lecture】講演会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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