2011年06月19日

特別展「手塚治虫のブッダ展」

20110509_2084656.jpg東京国立博物館・本館特別5室
展覧会公式HP

東京国立博物館は何度も行ったことがありますが、いつも奥の平成館ばかりで、本館に入るのは初めてでした。
次の週末で終わりなので、混むのは必至と考えて、開館前にチケット売り場前で待ちます。

気がつけば長い行列ができており、開館と同時に大勢の人が中に入っていきました。
会場内は全体的に薄暗く、作品に淡い照明が当てられています。
手塚治虫の『ブッダ』の直筆原画イラストと、本物の仏像を比較するような形で配置されています。
<仏像と漫画 トーハクでまさかの共演>というサブタイトルに笑ってしまいましたが、まさかという割には、なかなかしっくりとした比較展示がされていました。


仏像も数多く展示されています。
ほとんどが東博所蔵のものでしたが、ひと際存在感を放っていたのは、飛鳥時代の重要文化財「釈迦仏倚像」(深大寺所蔵)。
深く落ち着いた表情で静かに瞑想するブッダ像。見ごたえがありました。

maya.jpgかわいらしかったのが、20cm弱の飛鳥時代の重要文化財「摩耶夫人像」(東京国立博物館蔵)。
摩耶夫人は、起こって手を上げているのではありません。
夫人の右の脇下から釈迦が誕生してくる、まさにその誕生の瞬間が表されているものです。
初めは何かと思いましたが、夫人の右手そで口から、小さな釈迦が合掌した姿で生まれ出てくるのがかわいい。maya (1).jpg

この像は、410円切手の柄になっているんですね。あとになって気が付きました。

この展覧会を手塚治虫本人が見たら、どんなに喜んだことでしょう。
名作を数多く残した漫画家ですが、中でもこの『ブッダ』は、全編を心血を注いで描きあげたような迫力に満ちています。

さすがに、手塚氏の表現による漫画と仏像とでは、かなり違いがありましたが、まずこれを比較文化的に展示しようとした発想がユニーク。
もちろん両方同じものとみなすことはできませんが、仏像だけが並んでいては、その像のブッダが何歳くらいなのか、推量することは難しいですが、イラストと並べられていることで、年齢把握がとても容易なものとなりました。
また、鎌倉時代の重要文化財「仏涅槃像」(奈良・岡寺蔵)は、日本ではあまり観ることのないブッダの涅槃像ですが、直筆原稿の絵がこの像を見て書いたのではないかと思えるほど、細部にわたってそっくりなことが興味深かったです。

文化財保護のためにアフガニスタンの博物館から東京国立博物館が預かっている彫像も展示されており、流通文化財保護委員会なるものがあることも知りました。
戦争は人の命ばかりでなくすべてを破壊するもの。歴史的な美術品が失われるのをなんとか食い止めようとする委員会の存在が頼もしく思われました。

完全に今回はブッダの生涯を追った流れになっており、『ブッダ』の全体的な世界を紹介するというものではなかったため、コミックを読んでいない人は、チャプラやブダイ将軍、ミゲーラなど、実在しないキャラクターについてさっぱりのみこめなかったと思います。
私はブラフマン(梵天)の存在が良くわかりませんでしたが、ブッダを導く神とシンプルに説明されていて、(そうなんだ)と納得しました。
ブラフマンと梵天は、実際は全く違う存在だと思っており、若干混乱していました。

また、仏伝とは全く違う性格で描かれたキャラクターとして、ブッダの一番弟子アナンダが挙げられていました。
私はスジャータもかなり違う描写ではないかと思いました。かなりピノコっぽいので。
リアルとフィクションをきちんと区別していないと、このような展覧会を通してみることで、『ブッダ』のすべてが仏伝と一致すると思う人が出そうな気がします。

観るまでは、こちらとしてもなんだか不安な気持ちがありましたが、総合してみればなかなかわかりやすく、仏像と『ブッダ』双方の理解につながるものでした。
まだブッダについてよくわかっていない子供にも、難しさを感じさせることなく飽きさせずに知識をつけさせるような工夫に満ちています。
実際、まだ夏休み前なのに、子供の姿がたくさん見られました。
残念なのは、建物の巨大さの割には、展示作品が少なく、思ったよりもあっという間に終わってしまった点です。
入場料も大人で800円と、かなり押さえた金額ではありましたが、もう少し観たかったというもの足りない気持ちが残りました。

ただ、常設展の展示品はそれはそれは多く、相当見甲斐があったため、充分満足しました。
さすがは所蔵数110,000の、日本一の博物館。建物もクラシカルで素敵です。

次にこの本館を訪れることがあったら、充分に体力をつけ、歩きやすい靴を履いて、じっくり時間をかけて観賞しようと思います。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

「手塚治虫のブッダ展」
Excerpt: 東京国立博物館で開催中の 特別展「手塚治虫のブッダ展」に行って来ました。 手塚治虫のブッダ展公式サイト http://www.budda-tezuka.com/ 東京国立博物館本館..
Weblog: 弐代目・青い日記帳 
Tracked: 2011-06-24 00:12