2011年09月13日

Preview『極道めし』

2d2ec167-3d13-4ef4-8322-afc355ea0b3f_n.jpg監督:前田哲
キャスト:永岡佑、勝村政信、落合モトキ、ぎたろー、麿赤兒
中野ZREO大ホール

土山しげるの人気グルメ漫画を実写映画化したもの。
刑務所暮らしという自由のない環境の中で、自分がこれまでに食べた一番おいしい食べ物について囚人が語り合うというストーリーです。
「ハンカチを二枚ご用意ください。一枚は涙、もう一枚はヨダレ用に。」と、招待状に書かれていたのが、しゃれていました。

5人の受刑者は、窃盗や詐欺で数年の懲役を受けている者ばかり。
強盗や闇金、ヤクザなど、ろくでもない人物が揃っていますが、社会復帰に向けて、真面目に刑務所勤めをしています。
一般人と違って腹にいちもつ、脛に傷もつ犯罪者たちが、一つの部屋で共同生活を送るのは、なかなか大変そう。
新入りもなかなかなじめずに、しばらくは一匹狼状態でいます。

決まりきった単純作業にルーティンワークの刑務所生活。
楽しみのない日々の中で、受刑者たちが考えたのは、正月のおせち料理を巡っての勝負。
暴力は禁止されているため、思い出語りで聞く者を一番うならせた者が勝利者となるルールです。

でも、刑務所の中でおいしいものを思い出したら、食べたくなってかえってつらくなりそうですが。
どれほどおいしいものが登場するだろうと思いましたが、割と庶民的なものばかり登場しました。
受刑者たちが低所得層なのかと思いましたが、ホストやヤクザもいるため、そういうわけでもなさそう。
やはり人のおいしい思い出は、豪勢な凝ったものよりも、日々の基本料理になるのかもしれません。

人の食への思い出は、人それぞれなんだと思います。
ただどの思い出も、食べ物単体ではなく、それを作ってくれた家族、一緒に食べた家族の、愛に包まれた幸せな思い出と一緒になってこそ、忘れられない記憶となって輝いているのです。
食という生きる上での根本的な行為が、犯罪者となった身を支える強い思い出となっていることに、食には物理的な意味以上のものがあると気づかされました。

チャンコの話した、自分が食べたことのないものには、全く感情移入しませんでしたが、ほかのメンバーの思い出話はどれもとてもおいしそう。
特に、ホストの黄金めしと、新入りのホットケーキはとっても食べたくなりました。
ずっとすかして慣れ合わなかった新入りですが、両親に捨てられた悲しい子供時代から、人をまともに愛せなくなっていることがわかります。
自分の気持ちを相手に伝えることもできずに恋人を傷つけてばかりいた彼。

刑務所でほかの囚人たちと交流することで、そうした感情を取り戻していきます。
数年後に社会に戻ってきた彼に、幸せの黄色いハンカチのような展開は、残念ながら訪れませんでしたが、それでも感謝の気持ちを言葉に出来たのは、成長の証。
彼の持つ、ホットケーキとラーメンの思い出は、どちらも彼を愛した母、そして恋人の心のこもった料理だったということが、涙を誘いました。

最年長の八さんは「死ぬ前に、パイナップルの缶詰を一人で全部食べたい」という願いを叶えて亡くなっていき、(うーん、私には無理〜)と若干引きながらも、悔いはなかっただろうと思いました。

"刑務所とシャバでは時間の流れが違う。刑務所での10日はシャバでの1日しかない。"というセリフはとても重いものでしたが、その長い時間を監視下で過ごすことが、受刑者たちの社会復帰に必要なのでしょう。
かなり低予算映画だと思いました。ほとんどが刑務所内のシーンですし、回想シーンも、海辺ではなくスタジオ撮影。
すきやきの話に出てくる牛も、映像では登場せず、イラストのような処理がされていました。

受刑者たちの罪状と懲役期間がはっきりわかりませんでしたが、その辺りはストーリーには大して重要ではないのかもしれません。
あとは、チャンコが素食生活が続く中でも、プロレスラー体型を維持しているのが気になりました。

個人的には、出演者の勝村政信と田中要次がなんとなくイメージが重なっていましたが、この映画に両者とも出演していたので、はっきり区別がつくようになりました。
うーん、食の自由があるって、幸せなことですね。

受刑者たちは冷めたものしか食べられないので、思い出す食べ物はどれもほかほかの作りたてのものばかりというのも気の毒に思いました。
そして、心に残る料理には、愛がふんだんに詰まっているということも感じました。
さりげない幸せとほろにがさの余韻に満ち、とにかく観た後はおなかがすいてしまう作品でした。
posted by リカ at 12:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 【Cinema】日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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