2011年10月01日

「ゴールデンスランバー」

img_lineup.jpg監督:中村義洋
出演:堺 雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、香川照之

原作者の伊坂幸太郎作品は好きですが、この作品は、ストーリーがあまりにきつく、ショッキングすぎる設定だったため、あまりいいイメージを持てていませんでした。
あのストーリーが映像化されるのは、一層ハードなものになりそうだと思い、敬遠しようかと思いましたが、この映画は全編仙台ロケで作られたということを思い出し、震災前の仙台の町を観たい気持ちから、観賞しました。

主役の堺雅人は、優しいヒーローという印象なので、この主人公役にはどうだろうと思いましたが、しっくりと合っています。
脇を固める俳優陣も、独特の演技派揃い。
ともすれば浮いてしまい、とても実在しそうにないキャラクターが続々と登場しますが、みんなそれぞれに強い個性を飛ばしながらも実在感を放っていました。

原作では、主人公を圧倒的な勢力で追いつめ、冤罪で葬り去ろうとする巨大な力に、読んでいて心がくじけそうになりましたが、映画では、そうした見えない恐怖よりも、ささやかながらも主人公を遠くから信じ、守り、支える人々の凛々しさが美しく際立っていました。
彼を信じ、日本の全体社会に反抗すると腹をくくった人たちの目つきの強さが印象的でした。

ラストシーンの下水道ロケは圧巻。筆力も十分にある作家ですが、やはり視覚化されるとまた迫力が違いますね。
実際に映像化されたシーンを観て、この作品は「ケネディ暗殺事件」と『レ・ミゼラブル』をモチーフとしたことに気づきます。
オズワルドは、キーワードとしても作中に登場しますし、無実の罪を着せられて警察の執拗な追跡から間一髪でパリの下水道を逃げ続けるジャン=バル・ジャンの姿は、主人公と重なります。

ジャヴェール警部を彷彿とさせる香川照之の迫力に圧倒されました。『カイジ』といい、やはりこの人は主役を追い詰める色濃い脇役がはまっています。

原作は、大きな陰謀に巻き込まれ、裏切られ、絶体絶命の主人公の逃亡劇を、かなり暗澹とした気持で読んでいましたが、映画では、心身傷つきながらも、とにかく逃げようとする主人公の必死さが心に残りました。
ほぼ原作に忠実に作られており、ラストシーンの子供との一瞬の交流は、さすがは伊坂作品とうならせるさりげない洒落っ気があり、満足しました。

もっと救いのない悲惨な話だと思っていましたが、映画は、生きる力が湧いてくるようなものに仕上がっており、後味さわやか。
悲惨なメインストーリーにばかり目を向けず、作者が伝えたかっただろう、サイドの非力ながらもかけがえのない支持者たちの頑張りに目を向けて、もう一度原作を読み返してみようと思いました。
posted by リカ at 14:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 【Cinema】日本映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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