2011年11月19日

「粋な江戸っ子浮世絵師・歌川国芳展」刺青彫師・賽天氏トーク

CIMG0336.JPG@ アダチ版画研究所 目白ショールーム

先日、TVで「海外で有名な日本人」を特集した時、オランダかどこかの国での一番人気の日本人は、北野たけしでも中田ヒデでもなく「ホリヨシさん」という人でした。
一体誰?と思ったら、世界のコンテストで優勝経験のある、横浜の刺青彫師、彫よしさんだということで、(へえ~!)と驚きました。

今回、浮世絵彫師の実演の後に、刺青彫師の人のトークを聞けるということで、おっかなびっくりしつつも興味シンシンで聴講しました。
賽天(さいてん)さんという、東京と札幌を拠点にしている方だとのことです。
そういった職業の方にお会いするのは初めて。
名前も迫力あるし、きっと北方健三のような、ドスをきかせた声の怖い雰囲気の年配の人かと思いきや、おしゃれな感じにシルバースーツを着こなし、淡い色つきメガネをかけた男性でした。
というかこの方、彫師の実演の時からスタッフサイドにいた人なので、てっきり版画関係者だと思っていました。
ただ、彫師の仕事をとても興味深そうに、近くまできてのぞいていたので、(あれ、内部の人ではないのかな?)とうっすら思っていました。
若干、アダチ版画の人たちとは服装が違ったことに、合点がいきました。

修行に耐え抜き骨と皮だけになった仙人のようないかめしい人かと思いきや、思ったよりもお年ではなく、オープンな雰囲気で、気さくに話をしてくれたので、少し驚きながらもほっとしました。

先ほどまでの、浮世絵との関連性から話が始まります。
浮世絵の武者絵の中にも、入れ墨文化があり、先ほどの国芳の『水滸伝』キャラクターにも、両腕いっぱいに入れ墨が入っています。

浮世絵、錦絵の派生の一つとして、入れ墨があったそうです。
入れ墨は、浮世絵の絵を実現したもので、実際に腕に描かれたものを観て、また絵師が発奮され、新たな刺青絵を描き、そうやってお互いが発展していったのだろうというお話でした。

CIMG0332.JPG彼が手がけたという男性の背中の画像をいくつも見せてくれました。
筋骨隆々の武者絵ばかりで、圧倒されます。
ヌードですがどれも、肩から腿まで細かく入れ墨が入っているため、全く裸だという感じがしません。
映画やドラマなどでしか見たことがありませんが、いや~、すごいものです。

今ではファッションタトゥーも人気ですが、賽天氏が手掛けるのは和彫り。
決まった人に弟子入りしたわけではなく、独学で技術を磨いたとのこと。
昔こそ、全て手で行っていたそうですが、今では、伝統的な手による針と機械で電気を通す針の両方で施術しているそうです。
タトゥーとの線引きは、なかなかできないもので、「そもそも洋が入ってきたから、和として意識されたもの。和服、和食などと一緒」という説明に、なるほどと思いました。

先ほど、よどみない解説をしてくれた学芸員は、今度は質問側に回ります。
学芸員が、入れ墨について迷いながら「作品」といったところを「仕事」と答えた賽天氏。
さりげない言葉の使い方に、仕事への情熱が見えました。

しばらく話をしたところで、モデルが登場しました。
なんと、実際に背中を見せてもらえるそうです。
背中いっぱいに、躍動感のある武者が彫られていました。
黒の線を入れて2週間、色を入れて1週間。まだ痛む頃だそうです。
写真画像でさえ、見るのは初めてだったのですが、本当の本物を目の当たりにして、圧倒されるばかりでした。

かなり動揺してしまって、トークの拝聴もおろそかになってしまったため、聞き間違いがあるかもしれませんが、刺青の歴史を教えてもらいました。
一心太助辺りからの歴史で、近松ものに登場してきた辺りから始まったそうです。
刑罰の入れ墨と区別されたとのこと。
刑罰は、焼きごてのようなマークで、こういった手の込んだ絵柄のものはないでしょう。

その後、文政期に入って男女混浴などと一緒に入れ墨は明治政府の取り締まりとなったとのこと。
昭和23年に、今の憲法で取りしまりの対象から外され、息を吹き返したそうです。

入れ墨の中でも、武者絵は低い評価だったとのこと。
やはり、入れる人の職業が気になるところですが、現代の入れ墨希望者は20-40代で、特に決まりきった職業に限定されているわけではなく、反社会的人は1割以下だそうです。
火消とか籠振りとか、もともとは江戸時代の職人カルチャーで、今よりも敷居が低かったのでしょう。
昔と今の共通キーワードは「反骨」だと話してくれました。

ちなみに背景がなく、メインの人物だけの柄は「抜き彫り」といって、30時間ほどで仕上がるそうです。
周りや背景も書き込むものは「額彫り」というそうです。
入れ墨をしたら、発熱して苦しむものと、本などで読んですっかりイメージができていましたが、今では針も衛生的になり、そう熱はでないとのことでした。

真皮層に色を入れ、表皮をすかして見るので、ずっと残るんですね。
白人は肌の色も明るいし、強い肌質なので、色を入れやすいそうです。

質問コーナーになり、いろいろな質問が出た後で、最後に私が「女性の方が主に好む柄は何ですか?」と質問しました。
「花鳥とか」と答えてもらいました。
でも私、初めて見聞するものばかりだったので、相当緊張していたらしく、花鳥と聞いて「花と蝶。」とつぶやき、「花と動物とか」と噛み砕いて言ってもらってしまいました。
花鳥風月じゃない、ああ。

会が終わった後に、モデルと目が合い、目礼してもらいました。
お話しできそうだったので「本当に熱は出ませんでしたか?」と聞いたら、「特には出なかったです」とのこと。
「私はレーシックをやる時も、決死の覚悟だったのに・・・」とつい言ったら、笑っていました。
「彫る前には、パッチテストやお試しにどこかちょっと入れてみるのか」とも聞いてみたら、そういうことはせず、いきなり背中に入れ始めるそうです。
「やっぱり無理!」とギブアップしそうになったとのこと。よっぽどの痛みなんですね。
今は、痛いというより痒いと言っていました。
ご職業は存じませんが、ヒップホップ系(?)の、人当たりの良い好青年でした。

その後、タトゥートライバルの人ともお話をしました。
そこが出版している入れ墨の写真集などを紹介してもらい、その芸術性にさらに驚きました。

私の知らない世界をかいま見られた気分。
日の当たらない世界ではありますが、目を向けてみると、奥深いアートであることがわかりました。

ただ、今回の参加者は、おそらくほとんどが浮世絵ファンの、年齢層の高い人ばかり。
コンサバ系の人々からの質問は、時には礼を欠いていたように感じられたものもありましたが、賽天氏は言葉を選びながら、慎重に、そして懸命に説明をしていました。

かなり衝撃的でしたが、今回同行してくれたMarieさんは、幅広いカルチャーへの興味と造詣の深い人なので、今回の激しく人を選ぶようなイベントでも、とても喜んでもらえました。
私も、なかなか機会のない、貴重な体験ができたと思いますが、同行の友人によっては、大いに引いてしまったと思います。
Marieさん、どうもありがとう!懐の深いあなたと一緒に行けて良かったです。
posted by リカ at 16:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 【finearts】その他 | 更新情報をチェックする
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