2015年09月18日

「夢をかなえて女浪曲師 なぜ私は浪曲に魅せられたのか」

1_n.jpg9月16日(水) by 春野恵子、一風亭初月、赤坂コミュニティカレッジ at +plus

浪曲のライブに行きました。
ずいぶん前に講談(文末にレビューリンク)を聴いたことはありますが、浪曲を聴くのは初めてです。

浪曲ってなんだろうと思ったら、「浪花節」(なにわぶし)のことなんですね。
浪花節だよ人生は!
あれ、「浪曲だよ人生は」ってことだったんですか!?

浪曲師は春野恵子氏、三味線は一風亭初月(はづき)氏。
『電波少年』の「東大一直線」に登場した家庭教師・ケイコ先生です。
当時見ていたし、著書『ケイコ先生の合格のルール』も読みました。
驚きの転身です。著書名には本名の名字がついていましたが、今は春野一門に弟子入りしたため、また違う名前になっています。

浪曲の三味線伴奏者は曲師(きょくし)というそうです。
曲を弾く人という意味でしょうけれど、どうも曲芸師に似てるなと思ってしまいます。

ケイコ先生、いえ恵子さんは、変わらずはつらつとしたきれいな方でした。
日本は語り芸が多い文化なのだそう。落語に始まり、講談、詩吟、文楽、浄瑠璃、義太夫節など。

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「皆さんがご存知の浪曲師は?」と会場に質問すると、何人もの手が上がります。
でも「広沢虎造」の次は、ほとんど出てきませんでした。
私は一人として知りませんでしたが、後で親に聞いたところ、祖父が好きで虎造のレコードをよくかけて聞いていたそうです。

落語は、昔は歌舞伎と同じく男性のみでしたが、浪曲は昔から女性も行っている、差別がない職業なのだとか。

特徴は、譜面がないということ。三味線の楽譜もないのだそう。
文楽は、あるそうです。
口伝文化のため、古いものは台本しか残っておらず、大変なのだとか。
五七語で語るため、節をつけられなくてはいけないそうです。

基本は、七五調の「何が何して何とやら」
低音の「乙」、高音の「甲(カン)」、その中間の音を、みんなで発声しました。
甲(カン)になると高いため、オペラのような声を出したくなりますが、洋楽と違って裏声は使わず、表の声だけを出すのだそう。
恵子さんの、太い迫力のある声が朗々と会場に響き渡ります。

「一声・二節・三啖呵」が重視されるのだそう。
物静かなケイコ先生像が180度変わりました。
すごくハキハキと、口をはっきり開けて喋り、別人のようでした。

浪曲には関西節と関東節があり、ほとんどが関西節だとのこと。浪花節ですからね。
関東の浪曲師も7割が関西節で、恵子さんも東京の人ながら、大阪に移住して二代目春野百合子師匠に弟子入りをし、関西節を学んだそうです。

かつて浪曲は国民一番の娯楽で、長者番付の1~3位を浪曲師が占めた時代もあったとか。有名な浪曲師は、劇場をいくつも持っており、儲かるからと、声がいい人はこぞって浪曲師になったそうです。

戦時中には、その人気を利用した忠君愛国の軍事浪曲も出たのだそう。
三波春夫も村田英雄も、浪曲師から転身した人とは知りませんでした。
『カポネ大いに泣く』は浪曲師が主人公なのだとか。
現在の現役は20人ほどで、ほとんどがご年配だそうです。

恵子さんは、そうした浪曲を活性化させようと、いろいろと活動しています。
大阪のラジオ局の「浪曲ポップス」コーナーに登場したり、玉川奈々福さんと「芸のためなら女の幸せ、あとまわシスターズ」を結成しているそう。

英語浪曲を始めてクラウドファンディングで予算を集め、広く海外公演も行っているということで、その活動の広さに恐れ入ります。

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浪曲は、聴く側もルールがあると教わりました。
・浪曲師が登場する時には「待ってました!」と声をかけること。
・始めますという挨拶にかぶせるように「たっぷり!」と声をかけること。
・聞かせ節のところで拍手をし、次の歌とかぶらないようにすぐやめること。
・「日本一!」「大統領!」などの合いの手も入れること。
どれもタイミングが大事ですね。真剣に聞いていなくてはなりません。

そうして、「樽屋おせん」を披露してくれました。
井原西鶴の『好色五人女』に入っているものだそう。

情景、心理が、七五調の節に乗って綿々と歌われます。
文章だと数行で済むところを、こぶしを回しながら歌うので、幅が出て、聴く人に感情移入させ、物語に入りこませます。
これは、娯楽が少ない昔の人々は夢中になったでしょう。

小舟のもやいの綱を切って川に流されたおせんがその後どうなったのかが気になって、後ほどあらすじを調べてみると、原作はどうも少し違っていました。浪曲風のアレンジかもしれません。

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最後に質問コーナー。
レパートリーは?の問いで教えてもらったのが、一門ごとに持っている作品があり、他の門の人がやるのはタブーだということ。
ただ、一番有名な浪曲師、広沢虎造さえも一門は途絶えているため、彼の持ちネタだった「清水次郎長」などが公演されないままなのだそう。

落語のようにネタを共有すればいいのですが、これも伝統的な決め事。
ただ、今では浪曲師が少ないので、最近は他の門の作品もやるようになってきており、少しずつ変わっていくかもしれないそうです。
「春野門下はおどろおどろしい作品が多いので、さわやかなレパートリーを増やしたい」とのことでした。

壇にかける布の名称は、単なる「テーブルかけ」だとか。
モンドリアンの作品を模した正絹のもので、お値段二桁万円。
金の刺しゅう入りなどになると三桁万円するとのこと。
ファンの方からプレゼントされるものなので「よろしくね」とのことでした。

そもそも恵子さんは、視聴率が30%もあった『電波少年』にぼっと出たことで一躍有名になりましたが、ちゃんと実力で勝負したいと、あっさり芸能界から身を引いたとのこと。
さすがは東大卒、堅実な考えですね。
浪曲と出会う前は、「月刊相撲」でコーナーを持っていたとか、四季オーディションを受けて落ちたなどと、いろいろなチャレンジをしており、その幅の広さに驚きました。
精力的に活動しており、浪曲のリバイバルに日々貢献されているようです。

浪曲は、敷居が高そうで縁遠く思っていましたが、実は人情ものの浪花節、とてもソウルフルでぐっと身近に思えました。
今度は玉屋と鍵屋が夫婦になった話「両国夫婦花火」を聴いてみたいです。

blog→【ハープ・講談】『下田開港150周年記念 唐人お吉ものがたり』(2004年05月16日)http://lily-art.seesaa.net/article/11618278.html
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