2016年07月04日

国吉康雄展 Little Girl Run for Your Life

6eb.jpg
「国吉康雄展」そごう美術館


今回初めて知った画家。岡山出身で1906年に16歳でアメリカに渡った彼は、はじめは特に目的はなかったものの、苦労をして日銭を得ながら画学生となって絵を学び始めて職業にしたという、日本よりもアメリカでの美術の影響を受けた洋画家です。

全体的に暗い色合いの不気味な感じのする作品群。
子供には無邪気さや快活さはなく、大人びた表情をして、見ている側が不安になります。詳しくありませんが、これがアメリカモダニズムや幻想的表現主義なのでしょうか。

IMG_6133.JPG


明るい軽やかな色調の作品を描くマティスと友人と知って意外な気がしました。
『ピクニック』は、セザンヌっぽい色合いだと思いましたが、同行の母はルノワールに似ているとの感想。
印象派のルノワールの作風とセザンヌの色調、どちらの影響も受けています。

カメラ撮影も行っていた彼の展示物には、時折写真作品も混ざっており、注意深く見ないとどちらかよくわからない小品もあります。

アメリカの国籍はないものの、北米を代表する画家十数名の中に入るほどになり、アメリカでの地位を確固たるものにした彼。
第二次世界大戦中には敵国外国人という扱いを受けたものの、「アメリカ人画家」としてのアイデンティティを持っていた彼はアメリカで日本を批判する立場をとりつづけます。
戦時情報局(OWI)から対日プロパガンダの仕事を受けて作成した「日本側の残忍な拷問や虐殺」のシーンが描かれた反日ポスターのシリーズも展示されていました。
10点ほど並んでおり、これを描いたのが同じ日本人というのは、やはりショック。
恐ろしい顔をした鎧武者をモチーフにしたものや「SINK HIM」と描かれたものなど。
アメリカで生きていくことを選択したこその結果でしょう。

IMG_6132.JPG


西瓜(スイカ)の絵があり、普通に見ると単なるスイカですが、「アフリカ系の人を白人が指す言葉」だという解説がありました。
なにか人種問題の隠喩を伝えたかったのでしょうか。その点に関する解説はありませんでした。
戦争による反日感情をかき立てる役目を追っていながらも、あらゆる人種に当てはまるように見える描き方を心がけたということ。
彼の作品は、当時の時代の世相を強く受けていたのだと思えます。

望郷の念は起きなかったのか、反日ポスター以外で日本をモチーフにしたものは、このくらいしかありませんでした。

3b5.jpg
日本の張子の虎とがらくた 1932年


入り口を入ってすぐに『少女よ、お前の命のために走れ』という作品(ちらし上部)がありました。
巨大なバッタとカマキリが描かれ、その間に小さく少女の後姿が見えるという不可解な構図で、そこに描かれた少女が「私はなぜ画家に走るように促されたのか?」という疑問を持ちながら彼の作品を案内していくという展示スタイルになっていました。

その答え探しをしながら画家の人生を追っていくという手法はいいのですが、最後まで行っても答えは特に出なかったため、多少もやっとしました。
「答えは未来にある」ということで、まだ先に委ねられている模様。
彼の日本での評価はまだこれからということかもしれません。
posted by リカ at 20:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 【finearts】西洋画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック