2017年06月02日

「名刀礼賛 もののふ達の美学」内覧会

e202390a.jpg2017年5月31日(水) 泉屋博古館 分館

黒川古文化研究所と泉屋博古館の連携企画特別展「名刀礼賛 ― もののふ達の美学」ブロガー内覧会に参加しました。

兵庫県西宮市に位置する黒川古文化研究所(昭和25年設立)は、東洋の古美術を2万点以上所蔵し、国宝・重要文化財を含む名刀の一大コレクションで知られています。
今回は泉屋博古館との連携企画により、東京で初めて、研究所の所蔵品が公開されることとなりました。

展示されるのは、国宝「短刀 無銘(名物 伏見貞宗)」や重要文化財「太刀 銘 備前国長船住景光」といった国宝2口、重文10口を含む、平安時代から江戸時代までの刀剣約30口と、刀装具や書画など。
「刀剣」「拵えや鍔などの刀装具」「武士が描いた絵画」の三部構成で展示されています。
 ※特別に展示室での撮影許可を頂いております。

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泉屋博古館の野地分館長の挨拶のあと、黒川古文化研究所の川見典久研究員によるギャラリートークがありました。
磨き抜かれた日本刀を前にすると、その美しさと妖しさに取り込まれそうな気持ちになって、ただ茫然と見入っている私。
今回はもっと詳しく鑑賞できるよう、初心者にもわかりやすい解説をしていただき、刀の鑑賞ポイントとなる「地肌」「姿」「刃文」の3点を学びました。

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黒川古文化研究所 川見典久研究員による解説


鎌倉時代に作られた太刀は太く長いものでしたが、戦国時代になると馬上で刀が抜けやすいように、実用的に刃長が短くなり、また腰に差すようになったことで更に短くなり、銘がなくなっていったそう。
さらに実際に使っている刀は、研ぐ必要があるため、研ぐにつれて必然的に細身になっていったそうです。
そして、後の時代になると切っ先が太くなったのだそう。普通は重さ1kgほどだそうです。

実際に刀として使われながらも作られたままの形状を保つ古刀はもはや存在せず、時代を経て太刀が刀になったものもあるそう。
神社などに奉納され、実際に使用されなかった古刀のみが完成時の形で保存されているとのことです。
「細身で腰ぞりの刀は上品」との川見氏の言葉に、なんだか色気を感じるなと思いました。

時代ごとの使い方に合わせて少しずつ形が変わっていった刀。
歴史の変遷を雄弁に語っています。

【T 刀剣】
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右は室町時代の太刀、左は江戸時代の刀。
太刀は刃を下にし、刀は上に向けるのが、太刀と刀の大きな違いです。


国宝は鎌倉末期の刀2点。
京都の刀工、来国俊(らいくにとし)の作で徳川将軍家伝来の国宝「短刀 銘 来国俊」と、貞宗作と伝えられる「短刀 無銘(名物 伏見貞宗)」です。

「伏見貞宗」は、8代将軍・徳川吉宗(1684〜1751)の命で編さんされたといわれる『享保名物帳』に「近江源口藩主加藤家所有の伏見貞宗」として掲載された名物刀剣の一つ。
「貞宗」とは、「正宗」の後継者と言われる相模国の刀工。
刃の長さ30.2cm。表には不動明王、裏には毘沙門天の種字が彫られています。
目利きの本阿弥家13代光忠により「金子三百枚」と大付された折り紙が附属しています。
賤ヶ岳の七本槍・七将の一人、加藤嘉明が入手したとのこと。素晴らしい刃文でした。

中世期には、日本刀の大半が備前で作られました。
今回も備前刀が13振展示されており、ほかと比べて、ダイナミックな波紋を持つという印象です。

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「折り紙」とは本阿弥家による刀剣の鑑定書。
室町時代以降、刀剣が贈答品としても取り扱われるようになり、その価値を証明する必要が生じたそうです。
なぜかというと、価値がわからなければ、お礼のお返しが決められないから。
日本人の風習は、昔も今も変わっていませんね。
「折り紙付き」という言葉の語源は、ここにあるそうです。
なるほど!初めて本来の用途の折り紙を見ました。
普通の正方形の色折り紙とは違い、墨で記され、花押が押された証明書を蛇腹折りにしたものが、言葉の由来となったものでした。

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梅花皮鮫(かいらぎざめ)の皮で作られた明治時代の鞘脇指拵がありました。
梅の花のような模様が浮き出た、華やかな逸品でした。

江戸時代に作られた日本刀は「新刀」とされます。
国包の「刀 銘 山城第禄藤原用恵国包」がありました。
国包(くにかん、初代仙台国包)は、伊達政宗の銘を受けて上洛して鍛冶を学び、のちに仙台に戻って名刀をんだ刀工。国包(二代目以降の読みはくにかね)の名は、明治の13代目まで続きました。

また、井上真改の「刀 銘 山城第禄藤原用恵国包」もありました。
大阪正宗と言われた刀工で、刃には不動明王の化身、倶利伽羅剣が刻まれていました。

【U 拵えと鐸・刀装具】
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江戸時代になると、武士達が戦で刀剣を使うことは、実際にはほとんど無かったそうです。
派手な鞘を作れなくなったこともあり、変わりとして刀の鐔(つば)や目貫といった刀装具の細工に凝るようになりました。
49点の刀装具を展示。冒頭に展示されていた守長「太刀 銘 守長造」の附属物もありました。

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さまざまな技法を駆使して、鐔、小柄、笄(こうがい)といった小さな刀装具に花鳥風月、故事、和歌などの意匠を表しています。
鍔の素材が多岐に渡ることを、初めて知りました。

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御用彫物師の後藤家の作品もありました。細工の精巧さを確かめたくて、手元ルーペが欲しくなります。
今回の展覧会では、そんなニーズに応えて、単眼鏡の無料貸し出し・販売も行っています。

【V 絵画−武士が描いた絵画】
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戦がない間、絵画を描き、その才能を開花させて、画家となった武士もいました。
渡辺崋山といったら蛮社の獄ですが、彼は武士であると共に画家でもありました。
彼の弟子として作画を学んだのが椿椿山(つばきちんざん)。
その師弟の作品が並んで展示されていました。

刀剣の一大コレクションを誇る黒川古文化研究所の所蔵品を目の当たりにできるのは、都内では初めてのこと。初心者にもわかりやすいような解説パネルもあります。
時代ごとの刀や装身具の変遷がわかるとともに、刀を通して武士の教養の高さと美意識を感じることができ、たしかに「名刀礼賛 もののふ達の美学」という名の通りだと納得できる展覧会となっています。

特別展「名刀礼賛 ― もののふ達の美学」
 開催期間:2017年6月1日 〜 2017年8月4日
 開館時間:10:00〜17:00 (入館は16:30まで)
 会 場:泉屋博古館 分館(東京都港区六本木1-5-1)
 休館日:月曜日(祝休日の場合は開館し、翌日休館)
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