2017年06月12日

フランス絵画の宝庫 ランス美術館展

at 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
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ポール・ゴーギャン「バラと彫像」1889年


パリの東130kmほどにある、フランス北東部シャンパーニュ地方の中心地ランス(Reims)は、歴代の王が戴冠式を挙げた、世界遺産のノートルダム大聖堂で知られている町です。
そのランス美術館コレクションの17世紀から20世紀までの作品とランスに縁の深いレオナール・フジタ(藤田嗣治)の作品コレクションの展覧会が開催中です。

     1.国王たちの時代
     2.近代の幕開けを告げる革命の中から
     3.モデルニテをめぐって
     4.フジタ、ランスの特別コレクション
     「平和の聖母礼拝堂」のための素描

1.国王たちの時代

ブルボン王朝が始まった16世紀から、太陽王ルイ14世治世の17世紀、ロココ調の18世紀と、フランスの芸術は飛躍的な発達を遂げました。

カラヴァッジオ風の陰影を描いた画家を「カラヴァッジェスキ」というそうです。
その代表とされるテオドール・ロンブーの「コンサート」(17世紀)。
3人の音楽家がクローズアップされていますが、真ん中の人物は、楽器をひっくり返しているため、コンサートとは呼べないような図柄になっています。

フランドル画家、ヤーコブ・ヨルダーンスの「サテュロス」(17世紀)
サテュロスはバッカスの従者。ヤギの特徴をもつ半獣半人の姿で描かれます。


2.近代の幕開けを告げる革命の中から

ダヴィッド「マラーの死」

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ジャック=ルイ・ダヴィッド(および工房)「マラーの死」(1793年7月13日以降)

(あれっ?)と思いました。この絵、ベルギー王立美術館で何度か観たことがあります。
構図も何もかもがそっくり。どういうわけでランス美術館に?
でも、大きさがどうも違う気がします。ベルギーで観たものは、もっと大型作品だったように思います。
ダヴィッドが、同じ構図、同じタイトルの作品を複数描いていたのかと思いましたが、よくわかりませんでした。
原画はベルギー王立美術館所蔵のものであり、Wikipediaには「ダヴィッドの弟子が手がけた複製画が何枚か現存しており、ディジョン、ランス、ヴェルサイユの美術館などで見ることができる」とあります。
本作はダヴィッド(および工房)作となっていることから、作画には弟子の手も入っていると見做すのがよいのでしょう。

暗殺という息の詰まる一瞬を、崇高に描き上げた一枚。新古典主義らしい作品です。
これは英雄の悲劇的な死という、マラーを礼賛した描き方になっているとのこと。
ミケランジェロの『ピエタ』としばしば比較されているとのことは、知りませんでした。

ちなみに制作年月日が「1793年7月13日」とされているのは、この日がマラー暗殺日だからです。

ドラクロワ「ポロニウスの亡骸を前にするハムレット」

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ウジェーヌ・ドラクロワ「ポロニウスの亡骸を前にするハムレット」(1854−56)


ドラクロワは19世紀ロマン主義を代表する画家。政治家タレーランの子という噂があったそうです。
新古典主義の巨匠アングルと比べられた彼の作品は、往々にしてオリエンタリズムに満ちたものとなっています。
これはシェイクスピアの『ハムレット』の作中シーンを描いたものです。

デュビュッフ「ルイ・ポメリー夫人」

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エドゥアール・デュビュッフ「ルイ・ポメリー夫人」(1875)


知らない画家ですが、大判の華やかな作品が目を引きました。
シャンパーニュ地方らしく、描かれているのはシャンパン会社、ポメリー社の社長息子の妻。
青いドレスの美しさとモデルの健やかな美しさが印象的でした。

3.モデルニテをめぐって

ポール・ゴーギャン「バラと彫像」 1889年

今回のポスターになった作品。(1枚目画像)
一見、よくある静物画のようですが、なにげないようで緻密に計算された絵なのだそう。
薔薇が光線の加減で青やピンクの影を帯びている様子が描かれており、安定の良さを感じました。

ピサロ「オペラ座通り、テアトル・フランセ広場」

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カミーユ・ピサロ「オペラ座通り、テアトル・フランセ広場」1898年


ピサロはパレ・ロワイヤル広場に面したホテル≪グラン・ドレル・デュ・ルーヴル≫の一室から眺めたパリの風景を連作的に描いた作品を10作近く残しており、これもその一枚となります。
通りの奥に見えるのがオペラ座。
馬車が行き交う、アール・ヌーヴォーや世紀末芸術で華やいだ、豊かな19世紀末パリの雰囲気が伝わってきます。

4.フジタ、ランスの特別コレクション

藤田嗣治は、フランス人となり洗礼を受けたのち、レオナール・フジタとして活躍し、自ら作成したランス礼拝堂に眠っています。
シャンパンのG.H.マム社は、フジタがデザインしたバラの絵を今でもふたのデザインに用いています。
この美術館は、シャンパーニュ地方のランスと縁が深かった彼の作品コレクションも有しており、今回特別コレクションとして30点弱の作品が展示されました。

「少女」(1957年)は、みずみずしいタッチで描かれていますが、彼が71歳の時の作品だと知り驚きました。
「猫」は、おそらく彼本人が作成しただろう木彫りの額に注目しました。

レオナール・フジタ「マドンナ」
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レオナール・フジタ「マドンナ」1963年


「乳白色の肌」と言われる、輝く独特の乳白色を用いたフジタですが、これは珍しくも、聖母マリアを黒人として描いています。取り囲む天使たちもみな黒人たち。
もともと中東の人なので、実際からは遠からずといったところでしょう。
このマリアは、映画「黒いオルフェ」の女優、マルベッサ・ドーンがモデルとなったそうです。
言われてみれば、確かに現代風の顔つきです。

あまり知識がないままに訪れた展覧会でしたが、行ってみるとかなりの傑作揃いで、見がいがありました。
この展覧会は、6月25日(日)まで開催中です。
「フランス絵画の宝庫 ランス美術館展」

posted by リカ at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする
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