2017年07月12日

「レオナルド×ミケランジェロ展」ブロガー特別内覧会

28.jpg7月11日 at 三菱一号館美術館
by 岩瀬 慧(展覧会担当学芸員)、
「青い日記帳」主宰 Tak氏

三菱一号館美術館でこの日より開催が始まった「レオナルド×ミケランジェロ展」。
イタリアルネサンス期の巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci 1452年 - 1519年)と、ミケランジェロ・ブオナローティ(Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni 1475年 - 1564年)。この2人の芸術家を比較した展覧会になっています。

見どころは素描(ディゼーニョ=デッサン)。
2人のデッサンを「顔貌」「絵画と彫刻のパラゴーネ」「馬」「万物への関心」「書翰、詩歌」といったテーマ別に対比させた展覧会は、日本では初の試みとなります。

担当学芸員の岩瀬慧氏と美術ブログ「青い日記帳」のTak氏に、美術館館長も加わっての説明会となりました。

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展覧会の構成は以下の通りです。

   序章:レオナルドとミケランジェローそして素描の力
    1:顔貌表現
    2:絵画と彫刻:パラゴーネ
    3:人体表現
    4:馬と建築
    5:レダと白鳥
    6:手稿と手紙
   終章:肖像画

注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

1:顔貌表現

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レオナルド・ダ・ヴィンチ『自画像』(ファクシミリ版)
1515-1517年頃 トリノ、王立図書館


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マルチェッロ・ヴェヌスティ(帰属)『ミケランジェロの肖像』
1535年以降 フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ


15年ぶりに《レダと白鳥》の絵画制作に取り掛かることとなったミケランジェロは、かなり気合いが入っており、丁寧な素描を残しています。
かし、骨格が男性っぽいため、この絵のモデルとなったモデルは男性と判明。
女性らしく見せるためにまつげを長く書き込んでいるそうです。

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ミケランジェロ・ブオナローティ『《レダと白鳥》の頭部のための習作』
1530年頃 フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ


レオナルドは左利きで、左上から右下へのハッチング(細かい線を引くこと)が多い反面、ミケランジェロは右利きで、クロスハッチング(斜線を交差させる描き方)をしています。この線は、素描だからこそ分かるものになっています。

2:絵画と彫刻:パラゴーネ

ルネサンス期、絵画と彫刻のどちらが優れているかを問うパラゴーネ(比較芸術論争)が起こります。
レオナルドは、絵画が二次元の平面に立体感や奥行きを作り出すため優勢だと主張しました。

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レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく『聖アンナと聖母子』
1501-1520年頃 フィレンツェ、ウフィツィ美術館


ルーブル美術館所蔵の本人による同名の作品とかなりそっくりに描かれたもの。
背景が少し異なる程度です。

同じ赤ん坊を90度回転した角度から描いたデッサンが、2枚並んで展示されていました。
ダ・ヴィンチの作品を手本として学んだ弟子の作品です。
当時の画家は、弟子を抱えた工房で作品を制作しており、師匠が描いたデッサンを弟子が鍛錬のために模写することが、日常的に行われていました。

5:レダと白鳥

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(右)フランチェスコ・ブリーナ(帰属)『レダと白鳥(失われたミケランジェロ作品に基づく)』1575年頃 フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ

(左)レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく『レダと白鳥』1505-1510年頃 フィレンツェ、ウフィツィ美術館

「○○に基づく」と書かれているのは、○○のオリジナルを元にして、別の人物が描いた作品ということです。
どちらの作品も、既にオリジナルは存在しませんが、弟子が参考にしながら描いた作品が残されています。

『レダと白鳥』は白鳥と乙女がモチーフとなった美しい作品ですが、画像右側のミケランジェロ作品に基づいた方は、姫ががっしりした体型をしているため、多少違和感を感じます。
これは、男性モデルを使ったからだそう。
逆に、画像左側のレオナルド作品に基づいた方は、白鳥がかなり男性的に描かれています。
並べて鑑賞してみると、好対照の描かれ方となっている2作品でした。

6:手稿と手紙

レオナルド・ダ・ヴィンチは、なんでもできるマルチな天才だと思っていましたが、「無学の人間」と自らを語っていたと知って、驚きました。
彼は鏡文字などを駆使していながら、ギリシア語・古代ローマ語ができないことから、そう言って「無学」のコンプレックスを抱えていたそうです。
どんな天才にも、悩みはあるものですね。
『トリヴルツィオ手稿』の第30紙葉表「語彙の一覧、男性の横顔」は、びっしりと言葉が書き込まれたノートで、受験生の単語ノートを連想させるものでした。

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レオナルド・ダ・ヴィンチ『解剖手稿』(ファクシミリ版)第198紙葉表「子宮内部と胎児の研究」1511-1513年頃 [ウィンザー城王立図書館]

その横に、細かく正確な子宮内部の胎児図が描かれたノートが陳列されており、その詳細なデッサンに見入り、しばし前から動けませんでした。

終章:肖像画

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ミケランジェロ・ブオナローティ『十字架を持つキリスト(ジュスティニアーニのキリスト)』1514-1516年(未完作品、17世紀の彫刻家の手で完成)
バッサーノ・ロマーノ、サン・ヴィンチェンツォ修道院付属聖堂

今回の展覧会では、通常1階のスーベニアコーナーになっている部屋に、大理石でできた2500(キリスト像だけで2010)mmもの大きな銅像が、展示されていました。
この美術館では、スーベニアコーナーも展示室として使えるように作られているそうです。

このキリスト像は、近年になってミケランジェロ作品だだと認められたものです。
作成依頼を受けて大理石を彫り進めていくうちに、顔の左側に黒い傷が出てきたため、ミケランジェロが作成を放棄したもの。次に作られた第2バージョンは、教会に据えられており、これはその知られざる第1バージョンになります。

「全裸のキリストというのがとにかく珍しい」と館長。確かに、これまで見たことはありません。
通常は禁止事項の中に入るものですが、巨匠・ミケランジェロだから作成できた古代キリスト像。
キリストとアポロ像の合体として作られた古代彫刻となっています。

ミケランジェロが放棄したことで未完成だったこの像に、別の彫刻家が手を入れて、17世紀には完成形を取っていたとのこと。数奇な運命をたどり、今回遠い日本までやってきました。
こちらの像は撮影可。360度周って、全ての角度から彼の彫刻の力強さを確認できます。

このキリストは、「コントラボスト」という左足に重心を置き、右足を浮かせた状態をとっています。
どこか女性風でもあるこの立ち方は、銅像によく見られますが、私はボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』を連想しました。

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ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」
1485年 フィレンツエ ウフィッツイ美術館
参考画像:今展覧会には出展されていません


23歳離れていたとはいえ、「宿命のライバル」と言われ、互いを強く意識していた二人。
静的で分析的な作品を残した科学者肌のレオナルドと、動的で生き生きとした作品を残したミケランジェロの作風は、似ているようでやはりそれぞれ異なっており、今回は両者を比較できるいい機会となっています。


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左は"最も美しい素描"といわれるレオナルド『少女の頭部/「岩窟の聖母」の天使のための習作』


「レオナルド×ミケランジェロ展」[公式サイト]
会期:2017年6月17日(土)〜9月24日(日)
休館日:月曜休館(祝日は開館)
会場:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2) 
posted by リカ at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 【finearts】西洋画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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