2019年11月06日

吉野石膏さん、知りませんでした!…「印象派からその先へ-世界に誇る吉野石膏コレクション展」

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■ 会について

ルノワール、モネ、ゴッホ、セザンヌ、ピカソ、マネ、コロー、アンリ・ルソーといった印象派の作家を中心に、ポスト印象派やエコール・ド・パリの作家までをほぼ網羅した、近代西洋美術のいいとこ取りといった感のある、満足感の高いコレクションです。
今回は、ブロガー・特別内覧会に参加し、本展担当の岩瀬慧学芸員と青い日記帳のTakさんによるギャラリートークを聴きながら拝観しました。
写真は、許可をいただいて撮影しています。

■ 吉野石膏とそのコレクションについて

石膏建材メーカーの吉野石膏株式会社は、1901年に創業。
社名は、山形県の吉野鉱山の石膏を原料に製品を製造し始めたことから。
耐火建材石膏ボードの日本国内最大手で「タイガーボード」で知られています。
三代目の1970年代から本格的に絵画の収集を開始し、2008年に吉野石膏美術振興財団を設立。
質量ともにレベルの高い西洋近代美術コレクションを有しています。
現在、コレクションの多くを創業の地、山形県の山形美術館に寄託。
山形美術館では「吉野石膏コレクション-珠玉のフランス近代絵画」と称し、一部を常設展示しています。

■ 展覧会の構成

3章構成。
・第1章「印象派、誕生~革新へと向かう絵画~」
・第2章「フォーヴから抽象へ~モダン・アートの諸相~」
・第3章「エコール・ド・パリ~前衛と伝統のはざまで~」

■ 展示作品

出展作品は、ミレー、ドガ、ルノワール、ファン・ゴッホ、ピカソ、ピサロ、モネ、シャガールなどの72点。
バルビゾン派から印象派、フォーヴィスムやキュビスム、さらにエコール・ド・パリまでの、近代美術の流れを見られるようになっています。

◆ モネ 2点

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右)クロード・モネ《テムズ河のチャリング・クロス橋》1903年 油彩/カンヴァス
ロンドンの霧を愛したモネ。
彼はこの作品のほかにも、自然状況の霧に近代発展を遂げたロンドンの工場の煙が加わった、曖昧な空の様子をとらえた作品を、幾枚も手掛けています。

左)クロード・モネ《サン=ジェルマンの森の中で》1882年 油彩/カンヴァス
今回の展示会に使われている壁紙の色は、ある1枚の展示作品から取られたと、学芸員さんに教えていただきました。
その絵には、壁紙の色全てが入っているとのこと。
答えは教えていただけませんでしたが(というか聞きそびれました)、この絵に合わせたのではないでしょうか?

◆ モネの《睡蓮》

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クロード・モネ《睡蓮》1906年 油彩/カンヴァス
モネの作品は5枚展示されています。
彼は1900年代から、カンヴァスを縦に伸ばし、正方形に近い形にした睡蓮の絵を描くようになったそうです。

◆ ルノワール 2点

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右)ピエール=オーギュスト・ルノワール《森の散歩道(ル・クール夫人とその子供たち)》1870年 油彩/カンヴァス
森を歩いて行く女性と子供たち。
その一瞬を切り取った図は、刹那のようでありながら、永遠のようにも見える、不思議な印象を与えてくれます。

左)ピエール=オーギュスト・ルノワール《庭で犬を膝にのせて読書する少女》1874年 油彩/カンヴァス
木漏れ日の下で本を読む少女。ストライプ柄のドレスのラインに火がちらちらと差し込む様子が表されています。
光のゆらぎが見えそうな作品。すてきな1枚です。

パステル画 2点

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右)エドガー・ドガ《踊り子たち(ピンクと緑)》1894年 パステル/紙
左)ピエール=オーギュスト・ルノワール《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》1887年 パステル/紙
どちらも油彩作品を見慣れている画家ですが、ここに展示されているのはパステル画。
油彩よりも細かな筆致で、固めに描かれていますが、全体的に柔らい印象になっています。
ルノワールが描いたのは10歳の少女。
油性作品よりも細部までハッキリと描きこまれています。
肩に流れる髪のつやや、髪の下にちらちらと見える服の青色も、丁寧に表現されています。

◆ ゴッホの変遷 2点

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右)フィンセント・ファン・ゴッホ《雪原で薪を運ぶ人々》1884年 油彩/カンヴァス(板に貼付)
上野の森美術館で開催中の『ゴッホ展』と同じように、特徴的な異なる表現法で描かれた2枚が並べられています。
ゴッホの表現法を見出す以前の過渡期の作品が展示されているだけに、Takさんも『ゴッホ展』を観てきたとのことで、「固い絵が多かった」と言われていました。
右は、若い時に注文を受けた時の作品。
"ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』のような、食堂に飾るもの"というリクエストだったのに、依頼主を言いくるめて、働く農民の姿にしたのだそう。けっこう強気ですね。
バルビゾン派の影響が見られるとのことで、ミレーっぽい構図です。

左)フィンセント・ファン・ゴッホ《静物、白い花瓶のバラ》1886年 油彩/カンヴァス

パリに拠点を移し、印象派画家たちの影響を受けた後の作品。
様々な色が使われている明るい作品で、有名な《ひまわり》よりも色彩の華やかさに富んでいます。

◆ シャガールコレクション

展覧会で一番見応えがあったのは、シャガール。
今回、初期から晩年までのシャガールの油彩画が10作品展示されています。
吉野石膏のシャガールコレクションは、質、量ともに国内トップクラス。
彼の作品展示室は青い壁紙になっており、シャガールの青の中に沈んでいきそう。
特に印象的だったのは、
《天使と恋人たち》1956年 油彩/カンヴァス
《グランド・パレード》1979年油彩/カンヴァス の2作。
《天使と恋人たち》は、青空、夜空と、画面下に行くにつれて青の色が濃くなっていき、下部にいる影のような青い男性(自分)が、純白のウエディングドレス姿の恋人を抱きしめて、その白が上部の青空の雲の色に反映されていくという色彩の流れ。
「シャガールの青」のグラデーションの美しさを楽しめます。


《グランド・パレード》は、92歳の時の作品。
彼の作品は、年を重ねるにつれてどんどん明るくカラフルになっていきます。
革命、戦争、迫害、亡命、そして愛する妻の死というつらい経験を乗り越えて、大きな愛につつまれた幸せそうな作品を描くようになった彼。
大きな絵の前に座り、彼が苦難の後に手中にした透明な色調に、ただただ感動しました。

■ さいごに

銘品ぞろいのコレクション展。19世紀中頃から20世紀にいたる著名な画家たちの作品が、これほどたくさん日本で収集されていたこと、そして今まであまり知られていなかったことに驚きます。
吉野石膏が「ぶらぶら美術・博物館」のスポンサーだということは、番組を見て知っていましたが、これほど美術に寄与していることは知りませんでした。
今度、山形に行った時には、山形美術館に足を運び、常設展をぜひ観てみたいと思います。

■ 会期

「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション展」  
2019年10月30日~2020年1月20日
三菱一号館美術館


posted by リカ at 15:55| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする
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