2019年12月10日

ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵 ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年

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■ 展覧会概要とハンガリー史

日本とハンガリーの外交関係開設150周年を記念した、ハンガリー最大の美術館であるブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーのコレクション展。
日本とオーストリアも、今年150周年ということで、いろいろな企画が催されています。
両国とほぼ同時に外交関係が始まったのですね。

ハンガリーの歴史をざっくりおさらいすると、オスマン帝国のヨーロッパ侵攻により、1541年に三分割されました。
①ハンガリーの北部・北西部・クロアチア:ハプスブルク領
②ハンガリーの中・南部(ブダペストを含む):オスマン帝国領
③東部:トランシルヴァニア自治領
ハンガリーの三分状態はその後約130年続きます。オスマン国だった時代もあったとは。
1699年に②と③が①に組み込まれ、ハンガリー全域がオーストリア・ハプスブルク家の領土とされました。

その後、民族運動を経て1867年にオーストリア=ハンガリー帝国という二重帝国状態になり、第一次世界大戦終結に伴い1918年にハンガリー共和国として分離独立。
ハンガリー革命後にハンガリー王国となるも、第二次大戦後に社会主義時代などを経て、現在は第三ハンガリー共和国となっています。
なかなか複雑です。

17-18世紀のハンガリー王国の首都は、現在のブダペストではなく、スロバキアの首都、現ブラチスラヴァだそう。
ややこしいですね。ハンガリー史を踏まえておかないと、間違えてしまいそう。
ハンガリー共和国からハンガリーになったのは、2012年の1月1日のことでした。そんなに最近だったとは。

ヨーロッパ中部にあるため、さまざまな国の影響や干渉を受け続けてきた場所。
それだけに、文化的に熟した国でもあります。

以前、ブダペストにある国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーを訪れました。
素晴らしい絵画の数々に圧倒されましたが、日本では知られていないハンガリーの作家たちが多いという印象でした。

2012年に(ハンガリーになったため?)2館は一つの組織に統合され、現在収蔵分野の再編が進められています。
今回は1994年以来25年ぶりに日本で開催されるコレクション展です。
展示はⅠ章「ルネサンスから18世紀まで」とⅡ章「19世紀・20世紀初頭」の2部構成。

Ⅰ章「ルネサンスから18世紀まで」

■ クラーナハの不釣り合いカップル

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ルカス・クラーナハ(父)《不釣り合いなカップル 老人と若い女》
1522年、ブダペスト国立西洋美術館

ドイツ・ルネサンスを代表するクラーナハの作品。
「老女と若い男」バージョンの《不釣り合いなカップル 老人と若い男》(1520-22頃)も並んでいます。
前者は、若い女に触る老人と、彼の財布に手を伸ばす女が描かれ、後者は、老女が青年にの手にコインを握らせて、愛を金で買おうとしている様子が描かれています。

■ キリスト教国として

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ティツィアーノ《聖母子と聖パウロ》
1540年頃、ブダペスト国立西洋美術館

オスマン帝国の支配下からハプスブルク帝国に併合されたハンガリーには、カトリック教会のフレスコ画や祭壇画、宮廷肖像作家が登場します。
ヴェネチア共和国の巨匠、ティツィアーノの《聖母子と聖パウロ》。
剣と本を持ち、ローマ兵士風のいでたちをした聖パウロが、聖母マリアと幼いイエスに敬意を表しています。
聖母子とも、ティツィアーノらしい気品のある顔立ちをしています。

■ ゴヤの作品、その他

 ゴヤの絵画がありましたが、すぐにはわかりませんでした。

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フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス
《カバリェーロ侯ホセ・アントニオの肖像》(1807)

 彼の本名は、フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス。
 薄暗い展示室の中だと、一見、ゴヤと書かれていることに気づきません。
 まだまだ修行が足りません。

 個人的に気に入った、すてきな絵画もいろいろありました。
ボニファーチョ・ヴェロネーゼと工房《春》(1530年代末/50年代初頭)
 風に乗る浮遊感と、女性の髪のなびき方が美しい作品。

ドレペドロ・ヌニェス・デ・ビリャビセンシオ《リンゴがこぼれた籠》(17世紀後半) 
 犬の毛並や、少年ののびやかな体つきなど。抑えた色合い。
 Wikipediaの英語版「Pedro Nuñez de Villavicencio」の紹介ページに、当該作品が掲載されています。
 実物はもっと素晴らしい色合いです。

《聖ヨセフをカルメル修道会の守護聖人にするよう、アビラの聖テレサに促す聖母》
 これは長いタイトルが気になりました。
 キリスト教義の素養がないため、背景がわかりませんでした。解説があれば助かったのですが。

バルトロメ・ゴンザレス《王子の肖像》
 フェリペ3世の宮廷画家だったゴンザレス。
 ちなみにスペイン王家の宮廷画家として有名なベラスケスは、そののちのフェリペ4世付きの宮廷画家です。
 まだ小さな王子の衣装には、いろいろなものが下がっています。
 よく見ると、鈴、笛のほか、赤サンゴやアナグマの手など。
 いったいどんな分か?と思いますが、当時は子供の死亡率が高かった時代。
 これは死神に連れていかれないようにとの魔除けだそうです。

■ 性格表現の頭像

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フランツ・クサーヴァー・メッサーシュミット
《性格表現の頭像 子どもじみた泣き顔》
1771-1775年、ブダペスト国立西洋美術館

彫刻作品では、フランツ・クサーヴァー・メッサーシュミットの頭像作品2点が際立っています。
2018年に西洋美術館で開催された『ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか』でも、69点あるこのシリーズの一作を観ました。
しかめっ面や大きく口を開けた顔などの奇妙な表情が生々しく表現されています。

Ⅱ章「19世紀・20世紀初頭」

■ ハンガリーで最も愛されている絵

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シニェイ・メルシェ・パール《紫のドレスの婦人》
1874年、ブダペスト、ハンガリー・ナショナル・ギャラリー

本展のポスターに使われている主要作品。
19世紀ハンガリー近代美術の先駆者、シニェイ・メルシェ・パールの作です。

紫のドレス、草地の緑、花の黄色。どの色彩もそれぞれが鮮やかに発色し、光を帯びた印象的なコントラストとなって、モデルの魅力を引き立てています。

彼はミュンヘンで絵画を学び、パリとの関係はありませんでしたが、この絵に表されるように、1870年代のパリ印象派のような光を描く絵画表現を追求しました。

この作品は評論家の間では不評でしたが、ハンガリー国民の間で一番人気を博し、ハンガリーで最も愛される名画として切手をはじめ、様々な関連グッズが作られているそうです。

ほかにも
ムンカーチ・ミハーイの《パリの室内(本を読む女性)》(1877)、《本を読む女性》(1880年代初頭)
ギュスターヴ・ドレ《白いショールをまとった若い女性》
ロツ・カーロイ《春―リッピヒ・イロナの肖像》

といった、エレガントで美しい女性を描いた作品が並び、まさに貴婦人の肖像画の間といった感じ。
いつまでもいたくなるような部屋でした。

■ アール・ヌーヴォーの世界観

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ヴァサリ・ヤーノシュ《黄金時代》1898年
ブダペスト、ハンガリー・ナショナル・ギャラリー

ハンガリー世紀末美術を代表する画家ヴァサリ・ヤーノシュの大作。
寄り添うカップルが、ヴィーナス像にバラをささげ、煙を立ち上らせている、香り立つようにロマンチックな作品。
アール・ヌーヴォー調の額もヤーノシュ本人の作で、額の装飾がより一層作品を際立たせ、全体的に統一した世界観を作り上げています。

■ 観終えて(おわりに)

「ドナウの真珠」と称えられるハンガリーの首都、ブダペスト。所蔵作品も逸品ぞろいです。
今回は、ルネサンスから約400年にわたってのヨーロッパとハンガリーの芸術名品130点が一挙来日しています。
紹介される機会の少ないながらもすばらしい銘品の数々を、日本にいながらにして見られるということに、感激を覚えました。



posted by リカ at 17:06| Comment(2) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
《紫のドレスの婦人》、これまで知らなかったんですが、とても素敵な女性ですね!欧米の美人画は、日本人の(私の?)美的感覚とは合わないなと思うことがあるのですが、彼女の表情には、強さと優しさが共存していて、なんかナウシカを連想しちゃいました(^^)/。
Posted by ゆみこ at 2019年12月28日 12:28
ゆみこちゃん、コメントありがとう!あなたは和風美人の方がお好みかしら~?
ハンガリーは、アジアの地を引く民族というのもあってか、どことなく親しみのある国なんですよね。

前に行ったときは、英語がほとんど通じなかったけれど、今ならそんなことなさそう。
また行ってみたいなあ!!
Posted by リカ at 2019年12月28日 15:06
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