2019年10月11日

『記憶にございません!』…記憶があるのにないと言う。記憶がないのにあると言う。

こうなるともう、悲劇は喜劇。

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監督・脚本:三谷幸喜、主演:中井貴一
TOHOシネマズ 渋谷

中井貴一が珍しく憎まれ役を演じるということで、気になっていました。
彼の主演は『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』(2012年)以来。
あの時の日本橋での渾身の演技には、涙を搾り取られましたが、さて今度はどんな役かというと・・・

史上最悪の支持率の首相役!

なにそれ~?

映画のCMを見ると、相当性格が悪い、イヤな役のようです。
確かにこの人の悪役って、観たことがありません。

そんな嫌われ者が主人公なんて、と若干観るのに気が重かったのですが、そこはさすがのエンターテインメント三谷作品、まったくの杞憂に終わりました。

テンポが良く、おもしろいです。
初めこそ鬱屈としていましたが、自分が記憶喪失になったこと、それをトップシークレットとして隠し通さなくてはならなくなったことで、周りも家族も、そして自分自身をも巻き込んだ、綱渡りの日々が始まります。

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役者がみんな生き生きとして、演技上手。観ていて不安がありません。
内閣内部の動きもわかります。
議員はよく「秘書が...」といいますが、秘書には首相秘書官と事務秘書官と、また仕事が分かれているんですね。

閣僚の中に半袖半ズボンの大臣がいて、羽田総理の省エネスーツを思い出したり、吉田羊の白いスーツに、誰かを意識しているようだと思ったり、現実の内閣もちらほら透けて見えます。

草刈正雄が、ツワモノでくせ者の内閣官房長官を楽しそうに演じていました。
5人の首相の内閣官房長官を勤め続けているというやり手。
官房長官は次期首相候補だと思っていましたが、ずっとその役に居続けることってあるんでしょうか?
そんなに首相が嫌われているのなら、世論から、内閣官房長官待望論が出てこないもの?
まあ、映画なので、何でもアリではありますが…。

けっこうドロドロとした足の引っ張り合いも行われ、退陣合戦が火ぶたを切って落とされます。
「・・・スナイパーを呼べ・・・!」という官房長官の重いセリフに、てっきり首相が狙撃されるのかと思い、血なまぐさい展開になるのかと緊張したら、クスッと笑える拍子抜けのオチが待っていました。
やはり安定の三谷作品です。

この前、TOHOシネマズ六本木で、映画『おっさんズラブ』を観たばかり。
この渋谷館でも、21:30からの上映になっていました。レイトショー?
田中圭は、この映画にも警官役として登場します。
'はるたん'とはきっちり違う演技でした。やはり演技者です。

見慣れた俳優さんでも、役になり切ると、わからなくなるものです。
米国大統領が木村佳乃だったとは。外国人風メイクでわかりませんでした。
彼女は「黒髪を染めない、パーマをかけない」をモットーにしていたはずですが、役柄の上では気にしないのでしょうか?
(ずいぶん前に聞いた話なので、とっくに撤回しているのかもしれません)

また、(首相を皮肉る夜のニュースキャスターの欧米風メイクがすごいなあ、いったい誰だろう?ハーフの人っぽいけれど)と思ったら、まさかの有働由美子キャスターでした。
ええ~?びっくり!メイクの力技!
見た目も口調も変わり、もはや完全に別人になっていました。

天海祐希がカメオ出演的にちらっと出ているということでしたが、全く、かけらも気付きませんでした。
どうしても気になって、あとで出演場所を調べましたが(それは気づかないよ~)というシーンで、うなるしかありませんでした。

次に見る時も、わかっていてもまた見逃してしまいそうなトラップがあります。
しかし元宝塚の大スターを、そこまであっさりと使い切るなんて、贅沢すぎまよ、監督。

宮澤エマも出演おり、映画館を出た後で連れが「おじいさんが宮沢喜一だから、三谷監督は中井貴一と、キイチつながりを意識したのかも」と言いました。
まさかそんな?・・・でもどうなんでしょうね、三谷さん?

なによりびっくりしたのは、ROLLYが出ていたこと。
ライブに行って、間近で彼を見てきたというのに、エンドロールを見るまで全く気付きませんでした!!
メイクが違いすぎて!!!
メイクの力を、いろいろな配役から実感する映画にもなりました。

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映画のサブタイトルには、クスッと笑いました。
"Hit Me Anyone One More Time"。
「誰か、私に当てて、もう一回!」
石つぶてのこと?自虐的な叫びでしょうか?

ブリトニー・スピアーズのデビュー・シングル「…Baby One More Time」のタイトルが、もともと「Hit Me Baby (One More Time)」だったというネット情報を見つけました。
まさか、三谷監督はブリトニーの歌をもじったのでしょうか?
ファンなの?全く関係なし?
…謎です。

帰宅後、その日の夕刊に掲載されていた三谷監督のエッセイに、公開中のこの映画の話が出ていました。
主演俳優たちへの賛辞と、自分が執筆した完全オリジナルの脚本のアピールが書きこまれており、楽しく読みました。

一人の男性の一発逆転のドラマ。
どんなところからも、人はやり直せると、勇気を与えてくれる内容です。
観た人はみんな、気持ちが軽くなり、スキップして帰れそう。
音楽もストーリーに合っていて耳なじみが良く、夢がある、後味のいい映画でした。


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posted by リカ at 19:06| Comment(0) | 【Cinema】日本映画 | 更新情報をチェックする

2019年09月26日

3Dドーム映像作品『9次元からきた男』

日本科学未来館ドームシアター

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私は完全な文系人間で、科学は学校の授業レベルのものしかわかりません。
この世は3次元か4次元だと思っていましたが、9ですって?
9次元ってなんでしょう?

● 超ひも理論

まず、この宇宙がどのように誕生したのか、どんな姿をしているのかという疑問を解き明かす「超弦理論(超ひも理論)」。
これは万物の根源は「粒子」ではなく極小の「ひも」で出来ていると考える理論です。
1本の線のようだったり、輪ゴムのようだったりするひもが粒子になっているといいます。

このひも理論によれば、我々のいる宇宙は10次元で構成されているといいます。
ただ人間が直感的に理解できるのは空間の3次元と時間の1次元だけで、われわれの目に見えない6次元は、この小さな世界に折りたたまれています。
超弦理論では、空間が9次元。
ちなみに、超ひも理論の発端なる「ヒモ」モデルを初めて考案したのは、南部陽一郎という日本人だそうです。

● ざっくり説明

この作品は、重力を使って宇宙を理解しようとしているマクロな世界の法則と、素粒子のようにミクロな世界の法則とを結びつける、究極の統一理論を追いかけつづけている科学者たちの姿を映像として表現したものです。
宇宙のマクロの世界と素粒子のミクロの世界を表す理論は矛盾しますが、それを統一するのが、現代物理学究極の「万物の理論」。
現在最も有力な仮説「超弦理論」の世界がビジュアライズされます。

主人公T.o.E.(トーエ)が何者であるかは、まだ不明ですが、T.o.E.とはTheory of Everything(万物の理論)の意味。
物理学の究極の目標である「万物の理論」であり、宇宙の謎。
その究極理論の候補と考えられている「超弦理論」の9次元空間を、自由に移動できる男です。

私たちと同じ3次元空間に住む科学者たちが、T.o.E.を捕まえて「万物の理論」の秘密を知りたいと願っているという物語の設定。
トーエの渋い声役は、俳優の小山力也氏でした。

初めに問いかけられる「自分とは何か」という疑問が、いつしか「宇宙創世のルーツとは何か?」に大きく変わっていきます。
ミクロの世界での「不確定性原理」、「余剰次元」、「カラビ-ヤウ空間」、「膨張する宇宙」などといった科学の話が映像化され、目の前に非現実世界が広がります。
難しいテーマではありますが、観て味わうことが目的の体感映画なので、とにかく映像に引き込まれます。
科学理論は、あまりわかりませんでしたが、それでもおもしろかったし、メディアアートで表現された映像を通して観ると、理解できたようです。
3D CG技術を駆使した、都心の超高層ツインズビルがぐにゃりとゆがんで、神社の朱鳥居に変化する光景などにも目を奪われました。

最後まで顔を隠していたT.o.E.。
それは万物の理論がまだ明らかになっていないということなのでしょう。

3D眼鏡をかけてのドームシアターでの鑑賞なので、映像が立体的に、臨場感たっぷりに見えました。
監督は『呪怨』の清水崇氏、監修は現代物理学の権威、大栗博司教授。
とても観がいのある映像です。

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posted by リカ at 18:01| Comment(0) | 【Cinema】日本映画 | 更新情報をチェックする

2019年09月20日

ラブ以上にアクションでした~「劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~」

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TOHOシネマズ 六本木ヒルズで鑑賞。
金曜日ながら、レディースデイのように女性ばかりだろうと思いきや、男性の姿もそこそこ見かけました。
といっても、みんなカップルでしたが。(男同士ではない)
感想(というかコメント)を、簡潔に箇条書きにします。

ドラマから1年後の設定:
・舞台は上海からしれっと香港へ移動。ロケ地の事情?
・おじいちゃんと壺の扱いがあまりに雑すぎ
・結婚指輪にしてはあれはどうなの…

・男性3人の、濃すぎる朝の修羅場
・「真っ黒じゃーん」の表現2回。①ちずが春田へ、②春田がジャスへ
・なぜちずはダーリンと別れたのか?別れた設定の必要アリ?

・わんだほうはしれっと移転済み。特に説明なし
・牧は話をしなさすぎ、春田と向き合わなすぎ
 (異動したこと、倒れたこと、同居解消など)

・社内全体の意思疎通のなさ。即日撤去はあり得ないでしょう
・不動産屋が地上げ屋に…いつのバブル期?
・唐突すぎる、春田母の帰宅宣言

・プロポーズまでした牧のことを母に紹介していない春田
・春田母の帰宅宣言を受けて、出て行った牧。春田はどうしたのかの描写なし。
・二人のマグカップが変わった意味は、あるのかないのか?

・日中にうどん粉をかぶり、サウナに行った春田たち3人(推定午後)
・残業後にサウナに行った牧たち2人(推定深夜近く)
 ・・・5人のサウナでの鉢合わせは、時系列的に合わない

・新規参戦したジャスと狸穴は、実はどちらもいい人だった
・5人の子持ちなのに仕事帰りに優雅にホテル泊する狸穴
・別居し喧嘩しすれ違っていても、いつ仲直りしたのか浴衣姿で花火祭りに繰り出す春田と牧

・観客にキツすぎる、おっさんず(部長と狸穴)の接近戦
・マロの愛をはっきり理由をつけて拒絶した蝶子なのに、プロポーズを受ける謎
・商店街のお店は畳むことに決めたのに、また続ける?

・狸穴は5人も子どもがいるのに、孫をじいじに遭わせてあげないなんて親不孝すぎ
・出張る牧両親(春田を家に呼びつけて別れを促す牧パパ、会社にやってきて謝る牧ママ)
・牧妹は登場せず

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・大火事→逃げ道なし→なぜか座って話をする→そのあと、なぜか脱出してる!?
・相変わらず春田と牧の関係への反対者はおらず
・靴片方なしで火事現場を走り回るのは危険で不可能(部長)

・武川さんの恋の対象年齢、そして好みの幅広さに驚愕(牧~部長)
・唐突に明かされる狸穴ファミリーのエピソード
・企業での仕事のバタバタシーンがメイン。

・映画製作費がたくさんついたので、火薬と火を使うことにしたとか?
・あまり私服シーン無し。細やかな心理のやりとりが足りない
・アクション盛りだくさんの割に、情緒的に物足りない

・壺のおじいちゃんが単身で天空不動産本社に乗り込む
 →なぜ春田の名前といる場所を知っていたのか?
 →キーホルダーを返すために通訳なしで来日し、会社社長室にやってくる謎
 →話が伝わらないのにどういうわけか大きな商談を結ぶ

・部長のハート型ライトなし(多分なかった)
・「当分恋はしない」と言ったのに、果敢にアタックしてブーケをもぎ取る部長
・作品大ファンのおかずクラブ・オカリナじゃなく、なぜか相方のゆいPが登場
 (オカリナは作品愛が強すぎて、観る側でいたいので出演できないと断ったためだと判明しました)

・完結と言うにしてはスッキリしない
・甘さよりハードボイルド
・制作側と観る側の期待に少しずれがあるのでは?

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正直、観終わったあとは、どうにもスッキリしないモヤモヤ感が残りました。
派手なアクションシーンが多く、役者さんたちはお疲れ様でしたが、これで完結と言っていいものなのだろうか?期待した内容とはどうも違う気がする…と、かなり消化できないままになりましたが、その数日後に「おっさんずラブ」のドラマの続編が10月から放送されることが発表されました。

なるほど、それであのヒジョーにビミョーな終わり方になったのね~。
ドラマとドラマ2の間のストーリーということなら、問題ありません。
話の展開も終わり方も納得して楽しめます。
でも「映画が完結版」だって、あんなに宣伝していたのに~!?

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新参戦したジャスと狸穴は、それぞれに家族への特別なエピソードを持っており、それを春田が知ることで、家族には様々な形があると理解させる役割があったのかもしれないとも思えます。

今回、お気に入りのマイマイの破壊力はいまひとつでした。
恋する乙女モードだったので、毒気が抜けるのは仕方がありませんが。
また、主題歌に違う歌を聴けると思っていましたが、ドラマと同じスキマスイッチの「Revival」だったのが少し残念でした。

それを補って有り余る、グレードアップした武川さんの華麗なる足ドンが観られたのは、大満足です。

あの映画のエンディングからどうやってドラマに入っていくのか、また話がこじれにこじれてやきもきさせられるのか、と考えますが、この映画を踏まえての秋ドラマは、間違いなく楽しめることでしょう。
早期ドラマパート2放映に向けて、いろいろな調整が大変だったと思いますが、間を置かずに放映されるところに、制作側と役者たちの作品愛を感じました。

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posted by リカ at 18:06| Comment(0) | 【Cinema】日本映画 | 更新情報をチェックする