2018年04月19日

プーランクの夜会

出演者:黒岩航紀(ピアノ)、伊藤優里(フルート)、佐竹真登(オーボエ)、矢野健太(ホルン)、大内秀介(ファゴット)、照沼夢輝(クラリネット)、岸本萌乃加(ヴァイオリン)

場所:東京工業大学 大岡山キャンパス ディジタル多目的ホール

プログラム
・愛の小径(フルート、ピアノ)FP106b(1940)
・オーボエ、ファゴット、ピアノのためのトリオ FP43(1926)
・ホルンとピアノのためのエレジー FP168(1957)
・フルート・ソナタ FP164(1956-57)
・城への招待(クラリネット、ヴァイオリン、ピアノ)FP138(1947)
・ヴァイオリンソナタ第2楽章 FP119(1942-43 rev. 49)
・六重奏曲(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、ピアノ)FP100(1932)

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La Tour Eiffel, c.1935 Raoul Dufy

東工大コンサートシリーズ2018春は、20世紀前半にパリで活躍した作曲家フランシス・プーランク(1899-1963)の室内楽作品集。
彼の曲は、親しみやすく美しいメロディや踊りたくなるような軽快なリズムが特徴です
中でも今回は、外国人がフランスに抱く洗練されたお洒落なイメージを醸し出す選曲とのこと。

『愛の小径』は、まさにそうしたパリの雰囲気たっぷりの、優美な一曲。
フランス人作家ジャン・アヌイの『レオカディア』の劇中歌で、ワルツ2曲とタンゴ1曲で構成されており、華やかな気分になります。

『城への招待』は、やはりジャン・アヌイによる舞台作品のために作られた曲で、世界中に限られた数のレンタル楽譜しか存在せず、その使用料が高いことから演奏機会が少ないために、幻の傑作とされているそう。
初めて聴きましたが、幻とするにはもったいない、ロマンチックな名曲。
もっと演奏の機会が増えればいいのにと思います。
(ちなみに日本では、ヤマハが代理店となって貸し出ししているそうです)

軽妙な曲ばかりかと思いましたが、『ホルンとピアノのためのエレジー』は、自動車事故死したホルン奏者への追悼作、そして『ヴァイオリンソナタ』は、飛行機事故死したヴァイオリニスト、ジネット・ヌボーの依頼による、スペイン内戦の際にフランコ政権に銃殺されたスペインの詩人ガルシア・ロルカへの追悼曲。
人の死を悼む、切なくも愁いを帯びたメロディが、演奏されました。

最後の『六重奏曲』は重厚な木管アンサンブル。
ヘミングウェイが滞在した、第一次大戦後のパリの街の狂乱がイメージされているそうです。
不協和音が響くモダンなフレーズあり、ジャズのテイストありの革新的な曲でした。

演奏者はこのシリーズによく出演される藝大卒業生の方々。
安定したタッチで息の合ったセッションを聴かせてくれました。
posted by リカ at 17:25| Comment(0) | 【music】Classic・室内楽 | 更新情報をチェックする

2018年01月18日

無伴奏の魅力

at 東京工業大学 大岡山キャンパス
by 辻本玲(チェロ・日本フィルソロ・チェロ奏者)、
岸本萌乃加(ヴァイオリン・藝大)、
藤原功次郎(トロンボーン・日本フィル首席奏者)
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<プログラム>
(チェロ)
G.カサド 無伴奏チェロ組曲
K.ペンデレッキ 無伴奏チェロのためのディヴェルティメント

(トロンボーン)
J.S.バッハの作品 主よ人の望みの喜びよ、グレゴリオ聖歌など
モーツアルト アヴェ・ヴェルム・コルプスほか

(ヴァイオリン)
J.S.バッハ シャコンヌ 無伴奏パルティータ第2番から


無伴奏というと、バッハの無伴奏チェロソナタを連想しますが、今回は伴奏のつかないソロ演奏の音楽会。
バッハ以外の無伴奏チェロ組曲を聴くのは初めてです。
カサドはバルセロナ(カタルーニャ)出身の今世紀の作曲家で、自身もチェリスト。
ペンデレッキも現代音楽家で、非常に難解な曲ながら、演奏者は技術を駆使して見事に弾きこなしていました。

弦楽器の合間に金管のトロンボーンが入るのが不思議でしたが、もともとは教会でのみ演奏されていた楽器だとのこと。この楽器が交響曲に初めて使用されたのは、ベートーヴェンの第5「運命」と第6「田園」(1808年)だそうです。
ビッグバンドの時とは違う、まろやかな音色が会場に響きました。

カーネギーホールでの演奏も果たし、優良演奏者に送られるカーネギーホール賞を受賞した演奏者。
この日は1月17日、阪神淡路大震災が23年前に起こった日で、10歳の時に被災したという彼は追悼演奏も聴かせてくれました。

「主よ人の望みの喜びよ」は、管楽器のソロだとブレスが大変。
演奏直前に、演奏者自らが「これ、うちの電話待ち受けのメロディです」と言ったので、会場が吹き出し、一気に和みました。

「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を金管で聴くのは初めて。モーツアルトの友人が亡くなった時に作曲したものだそう。
アンコールは、「ダニーボーイ」でした。

最後のヴァイオリンは、前回のメシアン演奏会の時の方。
演奏者は藝大の現役大学院生。今回も難しいフレーズが終始続く難曲を見事に弾きこなしてくれて、会場が静かな興奮のるつぼと化しました。

アンコールは、クライスラーの「スケルツォ」。
「3分ほどで終わります」と本人が言いましたが、とてもテンポが速くめまぐるしく指が動く、これまた難しい曲を聴かせてもらいました。

チェロとヴァイオリンの方は、その才能を評価され、CoCo壱番屋からストラディバリウスを譲渡されているのだそう。
ココイチは、そんな芸術的支援を行っているんですね。
調べてみたら、創業者はとてもクラシックに理解のある方でした。(→関連記事
「ですので皆さん、カレーを食べましょう」と主催者が締めくくっていました。

久しぶりの大雨の日でしたが、みずみずしい演奏家によるクオリティの高い演奏でした。
posted by リカ at 10:32| Comment(0) | 【music】Classic・室内楽 | 更新情報をチェックする

2017年11月10日

世の終わりのための四重奏曲

藝大生と東工大生による名曲コンサート&メシアン 世の終わりのための四重奏曲
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at 東京工業大学 70周年記念講堂
by 藝大:黒岩航紀(ピアノ)、岸本萌乃加(ヴァイオリン)、矢口里菜子(チェロ)、照沼夢輝(クラリネット・日本フィル)
東工大+TBSK

(プログラム)
ポッパー:ハンガリアン・ラプソディ
ドビュッシー:月の光
カプースチン:8つの演奏会用練習曲より「トッカティーナ」
バルトーク:ルーマニア民族舞曲集
ラヴェル:古風なメヌエット(木管五重奏版)
ビゼー:カルメン幻想曲(木管五重奏版)
ドヴォルザーク:アメリカ(木管五重奏版)
ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲
ドビュッシー:シャルル・ドルレアンの詩による三つの歌(トロンボーン四重奏版)
オリヴィエ・メシアン:世の終わりのための四重奏曲(藝大グループ)
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東工大にある登録有形文化財の70周年記念講堂での演奏会。
芸大出身の4名は、国内外で活躍する若手ホープばかり。
学生たちがステージ変更を行う中で、ピアニストの椅子を出し忘れ、ピアニストが空気椅子状態で演奏する真似をしてみるなど、アットホームな一面も。
前半は東工大生を含めた音楽グループの演奏が続き、それぞれが異なる楽器編成、異なる選曲だったため、楽しく聴きました。

後半は、問題のメシアン。
「滅多に演奏される機会がない曲」とアナウンスされましたが、私は過去にも聴いたことがあり、(う~ん)と思いながらの再びの鑑賞。
⇒過去のレビューhttp://lily-art.seesaa.net/article/10728611.html

20世紀音楽の不協和音が続き、聴き慣れない身には曲の構成が読めず、展開が見えない中で集中を保ち続ける必要があるため、最後まで落ち着きませんが、好みはさておき、かなり難度の高い曲であるため、演奏できる人は限られています。
そういう意味で、演奏側にも聴く側にも非常に忍耐が強いられる難曲です。

連れは、タイトルを見て「セカオワ!」と言いました。
世の終わりがこんなイメージよりは、セカオワの方がいいですね。
こちらはフランスの作曲者オリヴィエ・メシアン(1908 - 1996)の、ナチスドイツによる捕虜収容所体験がベースになっています。
ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・クラリネットという変わった四重奏は、当時収容所にいた音楽家の楽器に合わせたという生々しい理由からです。初演は極寒のバラック小屋の中だったそうです。

メシアンは、この寒さと飢えに苦しんだ捕虜生活中に「視覚連想」(色彩と聴音との内的同時性)を獲得したそうです。また音楽の構成は「ヨハネの黙示録」の第10章に基づいており、宗教音楽的な要素も入っているようです。

聴く側は何楽章かさえもわからない中、演奏者たちの放つ研ぎ澄まされた音にただ耳を傾けます。
相当気力体力のいる作品で、演奏終了後は、会場銃がほっとした空気に包まれました。
聴衆の気持ちとしては(気分を換える、明るいアンコール曲でもあったらなあ)と思いましたが、演奏家たちも見るからに疲労困憊しており(お疲れさまです)、アンコールは一切なく、そのまま静かに終幕となりました。

芸大出身の4名の演奏はそれぞれに素晴らしく、生で聴けた感動がありました。
posted by リカ at 18:02| Comment(0) | 【music】Classic・室内楽 | 更新情報をチェックする