2018年06月04日

生誕150年 横山大観展

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横山大観展とは不思議な人だと、今回改めて思いました。
富士山で有名な大家ですが、万人に人気の画家のようには捉えていませんでした。
なのに、展覧会には、後ずさりしてしまうほど大勢の人が押し寄せていたのでビックリ。

どうしてこんなに集まっているのでしょう。
教科書に載っている有名な画家だから?
そんなにみんな、大観好きなの?
会期終了直前ということもありますが、それにしても異常なほどの人気ぶり。
まあ、私のように(知っているようであまり知らないから知りにきた)という人も多いのかもしれません。

「『明治』の大観」「『大正』の大観」「『昭和』の大観」の3章から成る構成。

1『明治』の大観
東京美術学校の第1期生の大観は、校長の岡倉天心の指導を受けて、輪郭線を描かずに絵画を組み立てる「朦朧体」を生み出しました。
この時期はいろいろな作風を模索中で、さまざまな表現に挑戦しています。
力強い作品を見ていると、彼本人もバイタリティがありそうだと思います。

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《 迷児 まよいご 》 1902(明治35)年 絹本木炭 個人蔵


タイトルの子供よりも、周りの大人の方に目がいきます。
描かれているのは孔子、釈迦、キリスト、老子。
聖人たちに囲まれた子どもは、信仰が揺らいでいる当時の日本を表しているのだそう。
そういった意味での迷子なんですね。

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《 白衣観音 》 1908(明治41)年 絹本彩色 個人蔵


大作ながら長い間所在が分からず、2017年10月に東京国立近代美術館が約100年ぶりの発見を発表した作品。
今回の展覧会が発見後初公開となります。
この絵見たさに美術ファンが押し寄せているのかもしれません。

生身の女性風に描かれている観音像ですが、どうにもバランスが悪く、大観は人物画が苦手なのかと思います。
デッサンに問題が?
それでも不思議と名画の面持ちを保っています。これが大観の画力でしょうか。

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《彗星》 1912(明治45)年頃 絹本墨画 個人蔵


1910(明治43)年に地球に接近したハレー彗星。
彗星を水墨画で描くという大胆な発想は、大観ならではでしょうか。
約76年周期で地球に近づくハレー彗星。
次にやってきた1986年のハレー彗星を肉眼で観ており、その時の興奮が大観とクロスしました。

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《瀑布(ナイヤガラの滝・万里の長城)》(1911年頃、佐野東石美術館蔵)


なかなかこんなタイトルの絵画はありません。
型破りで自由な発想のもとに描かれた作品。 
日本の明治期の美術界に新しい風を吹き込んでいた彼の業績となっています。

2『大正』の大観
1913年(大正2)年に師の岡倉覚三が亡くなった翌年、大観は日本美術院を再興します。
彼の「朦朧体」はこれまであまり受け入れられませんでしたが、次第に伝統的絵画手法に新しい感覚を取り入れる彼の業績が評価されるようになってきました。

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《秋色》(1917年)


大作が2枚並びます。
《秋色》では、琳派に用いられる槇や蔦のモチーフを取り上げて絢爛豪華な風情をもちながら、鹿たちは素朴な表情をしています。

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《 群青富士 》 1917(大正6)年頃 絹本金地彩色 静岡県立美術館蔵


今回のポスターに使われた作品。
《群青富士》の鮮やかな色使いが目を引きます。
雲海から頭を出す富士は、デフォルメされており、どこかユーモラスさも漂います。

3『昭和』の大観
昭和に入ると、大観は日本画壇を代表する画家となりました。
この時期に大観の有名な代表作のほとんどが制作されています。

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《 夜桜 》 1929(昭和4)年 紙本彩色 大倉集古館蔵


大倉喜七郎の尽力により1930(昭和5)年にローマで開催された日本美術展覧会に出展された作品。
大倉集古館ですでに何度も観ておりますが、何度見ても美しい大作です。

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《 紅葉 》 1931(昭和6)年 紙本彩色 足立美術館蔵


隣には《 紅葉 》。豪華絢爛な大作が二枚並ぶと、迫力があります。
《夜桜》と《紅葉》が一緒に展示される様子が、今回見たかったものの一つ。

「彩管報国」を提唱した大観は、絵筆(彩管)を執って国に尽.くすという理念のもと、さまざまな絵を描きました。
「海に因む十題のうち~」「山に因む十題のうち~」というシリーズ作品の売上金五十万を陸海軍へ献上したことでも有名です。
また富士山の絵を、皇室だけでなくヒトラーにも献上した軍国日本提唱者。

富士には日本国の象徴というイメージがありますが、大観はさらに軍国日本を象徴させたのだと思うと、かなり複雑な気持ちになります。
彼が残した作品は、そんな当時の思惑など関係なく、名画として今でも残されています。

第2会場 《生々流転》
第2会場には、重要文化財の《生々流転》(1923年、東京国立近代美術館蔵)が公開されています。
40メートル以上の超大作で、絵巻物のような日本一長い画巻。
たっぷりと空白を使って水の流れを表した、水墨技法の集大成です。

番外 『明治東京恋伽』

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会場を出たところには、萌えキャラのパネルが。
『明治東京恋伽』(めいじとうきょうれんか)というアプリゲームだそうです。
大観も菱川春草も、こんなにかわいくなっちゃって。
3つの時代を生きた大観先生、平成はさらにすごい時代になっていますよ・・・!

posted by リカ at 17:32| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする

2018年05月29日

国立科学博物館 常設展

国立科学博物館の地球館・日本館の常設展を見学。
大混雑していた特別展「人体」とはうってかわって、館内は空いていて快適。
一つ一つ見ていくとかなり膨大な時間が必要となるため、今回は「恐竜」に的を絞りました。

まずは地球館地下1階「地球環境の変動と生物の進化-恐竜の謎を探る-」へ。
恐竜のコーナーです。
アメリカ・ノースダコタ州で発見されたトリケラトプスの実物標本。
世界で2個体しか見つかっていないトリケラトプスの全身骨格の1つ。貴重な実物ですね。
レイモンドという愛称だそうです。

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ティラノサウルスのレプリカも迫力がありました。
愛称はかわいらしく、バッキー。
バッキーのアップ写真を待ち受け画像にしました🎵

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次に日本館へ移動。
開館以来、同じ場所で動き続けているというフーコーの振り子を見ながら、3階北翼「日本列島の生い立ち」コーナーへ。
日本で発見された様々な生物の化石が展示されています。
日本国内で初めて発見された首長竜のフタバスズキリュウの復元骨格、実物化石標本などもあります。

出たところに「ぼくはただの石じゃない」というコーナーがありました。

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アンモナイトの化石が置かれており、それを撫でていると、鏡に映る図がどんどん変わってきました。
おお~、身体がついて、手足を動かしています。
化石のアンモナイトが命を吹き返したCGです。

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おもしろい~。
展示室でアンモナイトをたくさん眺めてきたところなので、実際に触れられて嬉しくなりました。

日本館は建物も一見の価値があります。
中央ホールに埋め込まれたステンドグラスの窓。

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天井は白亜のドームになっており、東京駅をほうふつとさせる形になっています。

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下を見下ろすと、映画のようなロビー階。

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階段と踊り場もクラシカル。

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カーブを描く手すりも重厚です。

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外国人観光客に知られているスポットなのか、館内には海外の家族連れが割と多く見られました。
今回は、月の石や小惑星イトカワの微粒子には行きつかなかったので、また見学しに来ようっと。

国立科学博物館 常設展

posted by リカ at 18:19| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする

2018年05月28日

特別展 「人体 ー神秘への挑戦ー」

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けっこう長いスパンでの特別展ですが、評判通り大人気。
チケットを買うのにも、買ってからも行列ができています。
ということはもちろん、中に入ってからも行列は続きます。
ものすごい人に驚きました。
内容的に、美術館に比べて圧倒的に子供の比率が高いですが、みんな騒ぐこともなく、静かに見学していました。

2017年秋から全8回で放送されたNHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク」とのコラボ企画展。
とはいえ、独立してまとまった展覧会となっているため、番組を観ていない私にも入りやすかったです。

全3章構成。
1章 人体理解へのプロローグ
人体解明の歴史や、初期における人体研究の手法が紹介されています。

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アンドレアス・ヴェサリウス『ファブリカ』
1543年 広島経済大学

博物館の企画だけあって、所蔵の標本や模型が多く展示されています。
15世紀後半から始まる人体解明・解剖学の歴史を、著名な研究者の業績に沿って、時系列に紹介していきます。
循環器系、神経系、消化器系、運動器系の人体の各パーツの紹介ごとに、レオナルド・ダ・ヴィンチの「解剖手稿」の原本が展示されていました。

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レオナルド・ダ・ヴィンチ「解剖手稿」より(英ウィンザー城王室コレクション)
【右】頭部断面、脳と眼の結びつき部分 1490-92年頃
【左】消化管と腎臓、そして尿管部分 1508年頃

おびただしい展示物の中でも印象的だったのは、江戸時代に日本へ入ってきた「キンストレーキ」。
グロテスクですが、19世紀前半にフランスで考案され、江戸時代末期に日本に輸入された、紙粘土製の人体模型。
日本には4体しか現存しない貴重な資料です。

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【右】キンストレーキ(男性) 19世紀 金沢大学医学部記念館
【左】キンストレーキ(女性) 19世紀 福井市立郷土歴史博物館(展示終了)


2章 現代の人体理解とその歴史

また個々の臓器・器官が種類別に並べられて、人体の構造がわかりやすく理解できるようになっています。
ヒトの臓器標本も展示されていますが、苦手な人を配慮して、希望者のみ観られるような設営になっています。

「脳」が人体の「司令塔」となる一番大事な部分だという、従来の固定観念を、圧倒的な最新の技術と情報量で覆してくれます。
人体は、脳が放つ命令に従って他の器官が機能するわけではなく、心臓、肝臓、腎臓などの臓器・器官が自律し、互いにメッセージ細胞(ホルモン)を発信・伝達し合っているネットワーク構造が形成されているのだそう。
トップダウン形式ではなかったんですね。

図や標本や各種模型や解説版をたくさん見て、頭が飽和状態になった頃に、NHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク」と連動したコーナーがありました。
顕微鏡映像にカラフルな着色を施した写真コーナーや、人体の伝達構造を電気的に表現したインスタレーション「NETWORK SYMPHONY」で、感覚的に理解できるような工夫が施されていました。

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人が立った場所で、臓器の伝達の様子が変わる仕組み。
会場に大勢の人がいたため、天井はチカチカと輝き続けます。
人体内部とはおもえない、宇宙空間のような美しさを体感しました。

3章 人体理解の将来へむけて

日進月歩で進んでいる現在の科学研究。
次々と解明される最新ゲノム解析結果について紹介されていました。

今回の展覧会用に作られた解説用の模型は、どれも巨大に作成されており、とても見やすいものとなっています。
とにかく人であふれかえっているため、規格外の大きさなのが助かりました。

解説パネルも非常に詳細で、好きな人なら何度でも足を運んでしまいそう。
チケット売り場で観た感じでは、一人で観に来ている人もけっこう多く、確かにじっくり鑑賞したい人向きの企画展です。

出口はスーベニアショップがあります。
ポップなお土産は、どれも凝った楽しいものばかりでした。
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特別展 「人体 ー神秘への挑戦ー」
2018年3月13日~6月17日
国立科学博物館

posted by リカ at 18:00| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする