2018年04月17日

特別展『名作誕生-つながる日本美術』

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日本美術史を華やかに彩ってきた名作の数々。
本展は、制作時期の社会背景やその影響といった面から、「つながる」というモチーフのもとに、日本を代表する名作を紹介しています。

第1章 祈りをつなぐ
第2章 巨匠のつながり
第3章 古典文学につながる
第4章 つながるモチーフ/イメージ

構成は大きく4章に分けられ、さらに12のテーマに分けて名作を紹介しています。

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国宝《普賢菩薩騎象像》(ふげんぼさつ きぞうぞう)
平安時代・12世紀 東京・大倉集古館蔵


第1章『祈りをつなぐ』のテーマ2「祈る普賢」で採り上げられるのは、普賢菩薩像。
象に乗っている姿は共通していますが、作品ごとにいろいろな表情があります。
普賢菩薩はこれまでもっぱら仏像ばかり見てきて、絵画を見る機会はなかなかなかったためか、描かれた普賢菩薩の周りを大勢の女性陣が取り囲んでいる絵に目が留まりました。

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重要文化財《普賢十羅刹女像》鎌倉時代・13世紀 奈良国立博物館蔵


かつては鬼神でしたが、法華経の善神となった信心深い10人の女性、十羅刹女(じゅうらせつにょ)だそうです。
女性たちに取り巻かれた普賢さまは、ファンに囲まれたスターのようでした。

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重要文化財《仙人掌群鶏図襖》(さぼてん ぐんけいず ふすま)
伊藤若冲筆 江戸時代・18世紀 大阪・西福寺蔵


さすがは若冲、鳥の動きどころか、息遣いまで感じさせる力強い描写です。
左から2羽目の凛々しく立つ雄鶏は、かつて切手にもなりましたね。

次は第2章『巨匠のつながり』のテーマ6「若冲と模倣」。
中国・明時代の「鳴鶴図」を手本に、17世紀に狩野探幽、18世紀に若冲が行った模写作品が並んで展示されていました。
若冲は、天才絵師という評価を受けていますが、作品を見ると、名作を模倣し、地道に研鑽を積んで、きちんと技術を高めていったことが伺えます。

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国宝《松林図屛風》長谷川等伯筆
安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵


第4章『つながるモチーフ/イメージ』のテーマ9「山水をつなぐ」には、日本水墨画を代表する等伯の松林図屛風。
いろいろな展覧会で何度も見たことがありますが、何度見てもやはりいいですね。
この作品の展示期間は4月13日(金)~5月6日(日)となっています。

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菱川師宣《見返り美人図》江戸時代・17世紀 東京国立博物館


テーマ12「人物をつなぐ」には、こちらもまた切手になった見返り美人図がありました。
「浮世絵の祖」とよばれている元禄期の菱川師宣ですが、先ほど東京芸大美術館で観た『東西美人画の名作 《序の舞》への系譜』には、彼の作品はなかったなあと思い起こします。
描かれるはつらつとした人物像は「菱川様の吾妻俤(ひしかわようのあずまおもかげ)」と言われたそう。

130点にもなる名作を観終わった最後に、『国華』が3冊展示されていました。

明治22年創刊の日本・東洋古美術研究誌『國華』は、現在も発行中の、日本で最も古い雑誌。
本展は『國華』創刊130周年記念と朝日新聞140周年を記念しての特別展です。
この日本を代表する美術雑誌を、いつか手に取って読んでみたいと思います。


特別展『名作誕生-つながる日本美術』
4月13日(金)~5月27日(日)
東京国立博物館 平成館


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2018年02月05日

国宝 雪松図と花鳥 -美術館でバードウォッチング-

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三井記念美術館


展示終了前日に訪れた展覧会。
(花鳥図なら、戌年ではなく酉年に開催すればよかったのでは?)と思いましたが、この展覧会が開始したのは去年の12月、ちゃんと酉年でした。
年末年始を挟んだ時期柄、国宝や縁起のよい美術品が展示されています。
鳥の作品数が多く、充実していました。

● 円山応挙「雪松図屏風」(国宝) 

数ある円山応挙作品の中でも、国宝はこの1点のみだそう。
この美術館では、毎年新年に恒例としてこの作品を公開しているそうです。

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円山応挙筆「雪松図屏風」(国宝)6曲1双 江戸時代・18世紀 北三井家旧蔵


この雪の白は、着色せず紙の色をそのまま生かしているのだそう。
そう言われて見直しても、枝にかぶさるような雪には立体感があり、そうは思えないほど。色を塗るよりも難しそうです。

鳥モチーフの作品を見続けてきたため、今回は花鳥図の展覧会だったかとうっかり勘違いしかけて、今回の目玉の国宝「雪松図屏風」(左隻:円山応挙)を目の前にした時には、つぶさに眺めて(・・・どこにも鳥がいない。見方が悪いのかな)と思ってしまいました。

また、屏風の数え方を知りました。
このように6面がつながっているものは、6曲1双というのだそう。

小さめのものは「曲」ではなく「面」で、2面1双というのは半分に折れる小さめの屏風のことを指すそうです。

● 渡辺始興「鳥類真写図巻」

江戸時代は、大名から庶民まで、貧富の差無く、小鳥を飼うブームがしばしば起こっていたのだそう。

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渡辺始興「鳥類真写図巻」江戸時代 新町三井家旧蔵


次に展示されていたのは、渡辺始興の「鳥類真写図巻」。
数多くの鳥たちの詳細なデッサンは、今でも見入るほどに精緻です。
鳥の正面からの顔は、結構こわいですね。

● 柴田是真「稲菊蒔絵鶴卵盃」

江戸末期から明治中期にかけて活躍した蒔絵師、柴田是真(ぜしん)の「稲菊蒔絵鶴卵盃」。
器の素材はツルの卵。長さ10センチの卵を縦半分に切り、金を塗って加工したもの。
ツルやダチョウの卵に蒔絵を施した工芸品は、明治期から輸出され、欧州で珍重されたそうです。
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柴田是真「稲菊蒔絵鶴卵盃」江戸~明治時代 北三井家旧蔵


ほか、象彦(西村彦兵衛)の作品が3点ありました。

● 呉春ほか15名合筆「群鶏図屏風」

個人的に気に入った1枚。14名の絵師がめいめいに鶏の絵を描き、横にサインを加えています。そこに北三井家の当時の当主も混ざり、真ん中に1羽描いています。
画家がめいめい自由な発想で描いでおり、通常の鶏のほかに宙を飛んでいる鶏やひよこなどが描かれています。
何度数えても14羽しかいないのはなぜだろう?と思ったら、横にさりげなく描かれた籠にも一人絵師がついており、籠の中に鶏がいるという解釈なのだろうと気がつきました。

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呉春ほか15名合筆「群鶏図屏風」江戸時代 北三井家旧蔵


後の方の解説板に「三井家は鳥好きが多く、鳥の収蔵品が多かった」とあり、なるほどと思いました。実際に多くの鳥を飼っていたとのこと。
新町三井家の三井高遂(たかなる)氏は、鶏好きが高じて鶏研究者となり、全日本チャボ保存協会の会長も務めたそう。

鳥の華やかさやなめらかで動的な形は、アート化すると、さまざまな面白さが生まれます。鳥好きの自分としては、いずれ鳥をテーマにした三井の一大展覧会が開催されることを、期待しています。
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2017年11月07日

平山郁夫 シルクロードコレクション展

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日本画壇の重鎮で、バーミヤンの文化保存に尽力した平山郁夫(1930-2009)が描いたシルクロードの旅の足跡。

シルクロードというと、アラビアの辺りかなと漠然と連想しますが、実際にはローマから中国にかけての広い地域。
そこを、海外渡航がメジャーではなかったころから何回にも渡って訪れてスケッチをしてきた夫妻。
実際に訪れた場所を地図で見ると、その移動範囲の広さに改めて驚きます。

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イラクの『サマーラーの塔』などといったスケッチは、和紙に描いているので絵の具が染み、独特の風合いを出しています。

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『敦煌石窟 57窟 南壁の菩薩像』スケッチ画


何といっても圧巻は『パルミラ遺跡を行く・朝』と『パルミラ遺跡を行く・夜』。
ラクダに乗った一行が砂漠を静かに通っていく、対になったこの2点の大作が、パルミラ遺跡の絵の両脇に据えられている空間では、一気にシルクロードロマンの世界に引き込まれます。

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『パルミラ遺跡を行く・朝』


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『パルミラ遺跡を行く・夜』2006年


女王ゼノビアで有名なパルミラですが、ローマ帝国と敵対していたんですね。
上の絵画も『コリント』も、画材にガラスを混ぜているのか、作品は砂絵のようにきらきらと輝き、アラビアンナイトの風情たっぷりでした。

バーミヤンの大石仏が破壊された後も現地へ赴いた彼。ありし日の大石仏と破壊後の絵を並べて展示されていました。
失われた文化遺産に、胸が痛みます。

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左『バーミアン大石仏を偲ぶ』 右『破壊されたバーミアン大石仏』


薬師寺玄奘三蔵院の壁画大下図の原画が10分の1で展示されていました。
突然日本が舞台になり、一瞬(おや?)と思いましたが、そういえばシルクロードの交易路は奈良にまで続いていたのでした。
シルクロード交易路の絵画は約40点が展示されています。

平山氏は、常に妻の美知子氏と一緒に渡航していました。彼女は芸大を首席で卒業し、自身も芸術家でありながら、「家の中に芸術家は2人必要ない」という恩師の前田青邨のことばを受けて、自分は絵筆を折り、夫のサポートに徹したという人。
エッセイなどを残しており、多才な方だったということがわかります。
時代が時代なら、サポートに周ったのは平山氏の方だったかもしれません。

シルクロードのたとえば「敦煌」というと、平山氏の絵画を連想する人が多いと思いますが、私は作家の井上靖の小説の方を思い出します。
井上氏は平山氏よりも23歳年上でしたが、それぞれが文と絵を担当して本を出版するなど共同作業を行っていました。

今回は、渡航の際に夫妻で集めたシルクロードの収集品も展示されています。
金銀装身具の精緻さには、失われた文化の高度さが伺えます。
夫妻が文化財保護のために各国で収集し。日本へと持ち帰った現地の工芸品や地域の織物など約170点も展示されています。

文化財保護に莫大な援助協力をし、実際に保護活動に携わった彼らは、ユネスコにその運動を評価され、世界文化遺産保護に貢献した金メダル表彰を受けています。

インドは女神像が多く、豊満な石像が展示されています。
中性(ほぼ男性)のみの日本の仏教文化とは雰囲気が違います。

収集品は小さいものも多く、また細部にわたり精巧な模様が施されている芸術性の高いものが多いため、一つ一つじっくりと鑑賞。
模様の美しい銀製鍍銀水差しや、『馬をかたどったリュトン』など馬や女性の模様が彫り込まれた器、壁ほどに大きなカシミールショールなど。
奈良の正倉院収蔵の円形切子装飾碗もありました。
ネックレスやイヤリングの精巧さと美しさ。今でも十分使えます。

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平山作品は目にしたことがあるものが多かったのですが、夫婦の収集工芸品を見たのは初めて。
展示されているシルクロードのお宝は、小品が多いながら芸術性価値が高いものばかりで充実しており、見ごたえがありました。

最後に平山氏の「パミール高原を行くロバに乗る自画像」が展示されていました。
眉を寄せた困り顔で、全く美化されておらず、どことなくユーモラス。
乗り疲れてしまったのでしょうか。
徳永家康の"しかみ顔"を思い出しました。

夫妻のもつ確かな芸術の目と、平山作品を通してのシルクロード交易路文化が紹介されている、シルクロードのロマンに浸れる展覧会です。
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「平山郁夫 シルクロードコレクション展
 夫妻の視点が織りなす、人類への遺産 」:公式サイト
そごう美術館
10月27日(金)〜12月3日(日)
posted by リカ at 12:03| Comment(0) | 【finearts】日本画 | 更新情報をチェックする