2019年11月05日

正倉院の宝物が東京で見られるチャンス!「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」

50bc.jpg



■ 会について

聖武天皇・光明皇后ゆかりの品々が収められている、正倉院。
毎年秋に、奈良国立博物館の「正倉院展」で、所蔵品が公開されていますが、今回は、天皇陛下の御即位を記念し、特別展として東京の国立博物館でもお披露目されています。
奈良でも一年に一度しか見ることができない正倉院の貴重な宝物を、東京で見られるチャンスです。

■ 展覧会の構成

6章構成です。

第1章「聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物」
正倉院宝物の中核である《東大寺献物帳(国家珍宝帳)》に記された品々の紹介。

第2章「華麗なる染織美術」
正倉院宝物の膨大な数の染織品には、唐で流行した華麗な唐花文の文様が多く見られます。

第3章「名香の世界」
足利義政、織田信長、明治天皇が一部を切り取った事で有名な「蘭奢待(らんじゃたい)」として知られる香木など。

第4章「正倉院の琵琶」
正倉院宝物を代表する、華麗な装飾の《螺鈿紫檀五絃琵琶》。

第5章「工芸美の共演」
法隆寺(607)献納宝物と正倉院(752)宝物が並べて展示されています。

第6章「宝物をまもる」
正倉院の文化財の伝承について。現在では、X線や赤外線カメラなどを用いた調査・点検が続けられています。

■ 正倉院とは

奈良の東大寺の正倉(倉庫)として作られた、校倉造(あぜくらづくり)の大規模な高床式倉庫。
現在は宮内庁が管理しています。
約1260年間、聖武天皇・光明皇后ゆかりの品をはじめとする、天平時代を中心とした多数の美術工芸品約9000点を収蔵している建物。
1997年(平成9年)に国宝に指定され、翌1998年(平成10年)に「古都奈良の文化財」の一部として、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。

■ 展示作品

正倉院の宝物を計43件展示。
前期展示品では、インド起源の「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」

後期展示品では、夜光貝やこうがいなどで装飾した「平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいのはっかくきょう)」など。
あわせて「竜首水瓶(りゅうしゅすいびょう)」などの法隆寺献納宝物も、計16件展示されています。

■ 注目の一品、《螺鈿紫檀五絃琵琶》

歴史の教科書に載っている、日本人にとっておなじみの五絃琵琶です。
聖武天皇に献上され、その後、光明皇后が聖武天皇の七七忌(四十九日)に東大寺大仏に献納した宝物。
奈良時代(8世紀)に中国から伝来したもので、正倉院宝物の目録の中でも最も古い『国家珍宝帳』に記載されています。
93b6c8b71a29c4b5608cc5be2fd5149f.jpg
 
55e37d3e6cbd1202b5c17d4568c23253.jpg

頭部が真っ直ぐに伸びているインド起源の五絃琵琶。

インドから中央アジアのオアシス都市国家、亀茲(きじ)国経由で唐に入り、日本にもたらされたといわれます。

唐から伝来した古代の品で現存する唯一の五絃琵琶は、この1品のみ。

南インド産の紫檀の木地に、夜光貝の螺鈿や玳瑁(たいまい)で、見事な装飾が施されています。
正面のバチ受けには、フタコブラクダの背に敷物を掛けて乗った人物が琵琶を奏でています。
201907142019298ecs.jpg

ちなみにこの人物が弾いているのは、頭部が直角に折れた、ペルシャ(イラン)起源の四弦琵琶。
ペルシャは四絃琵琶で、インドは五絃琵琶。
楽器はインドの五絃琵琶なのに、装飾の絵はペルシャの四絃琵琶という点が、ちょっとややこしいですね。
五弦琵琶は平安中期になくなり、現在の琵琶は四弦です。
音域が四弦琵琶よりも狭く、演奏法も難しかったのが、すたれた理由とされています。
   *   *   *   *   *   *
今回の展覧会は、正直(教科書や資料集で知ってるからね~)という軽いノリで向かい、(何としても見よう!()という気持ちではありませんでした。
しかし、五絃琵琶の実物を前にして、胸を弾丸で打たれたような大きな衝撃を受けました。
細部にわたる緻密な装飾は、なんと美しく繊細なんでしょう。
観ても見ても、完璧なひと品。楽器でありますが、まごうことなき完全な芸術品です。

ぐるりと裏側も見られるようになっており、裏側に周ってさらに胸打たれました。
びっしりと埋め込まれた螺鈿の精緻さ。
それが、1200年以上の年月を経て、今なお美しくきらきらと輝いています。

言葉にできない心の動き方。
この琵琶の前でいったん心臓が止まり、その直後に命を吹き込まれたような、大きな心の動きを感じました。

   *   *   *   *   *   *

宮内庁が制作に取り組み、8年をかけて本年完成した、この琵琶の精巧な模造品も、あわせて展示されていました。
会場エリアには琵琶師の松浦経義氏が奏でた五絃琵琶の音色が流れており、当時の雰囲気にひたることができました。

■ 観られなかった《瑠璃盃》

正倉院の宝物としてもう一つ習ったものがありましたね。
そう、瑠璃盃(るりのつき)です。
images.jpg

琵琶との感動的な出会いがあっただけに、こちらも本物をこの目で見たい気持ちが募りました。

今回の東京展では見られなかったので、いつの日にか、ぜひ拝見したいものです。

■ 会期


前期 2019年10月14日(月・祝)~11月4日(月・祝)
後期 2019年11月6日(水)~24日(日)
* 前後期で大幅な展示替えがあります(五絃琵琶は前期のみ)
    
   *    *    * 
* 奈良国立博物館(奈良市)では、ほぼ同時期に、毎年恒例の正倉院展が開催されています。
「御即位記念 第71回正倉院展」
10月26日~11月14日
続きを読む

2019年07月29日

兜が重くて武士はつらいよ~日本のよろい!

5_日本のよろい!ポスター.jpg

日本のよろいは、武士の身を守る道具ですが、加えてさまざまな工芸技術が織り込まれた一つの芸術品でもあります。
武士の戦場での活躍を際立たせる効果を狙って、人目を引く華やかな美しさも求められ、デザイン性に富んだものになっています。

この展示では、中世・近世に作られた本物のよろいと、現代に作られたよろいの製作見本をあわせて展示し、複雑に見えるよろいの構造などを分かりやすく紹介します。

yoroi.jpg

重要美術品 金小札紅糸中白威腹巻(きんこざねべにいとなかじろおどしのはらまき) 安土桃山時代・16世紀

500年ほど前に製作された甲冑です。

ちなみにこの「重要美術品」とは、「重要文化財」とは違います。
優れた美術品や歴史的資料の海外流出を防ぐ目的で制定された、準国宝級の美術品のことです。
重要美術品は1950年の『文化財保護法』の制定時に廃止となりましたが、重文(重要文化財)に次ぐものという意味で、現在でも使われることがあります。


IMG_4131.jpg

現代のものとしては、伊達政宗など、戦国武将の鎧をイメージして作られた甲冑の製作見本が4体、飾られていました。
実際にこうした武将たちが集っていたら、さぞや目立っただろうと思います。

「親と子のギャラリー」と書かれているように、たしかに子供連れもいましたが、むしろ外国人に大人気でした。
よろいを触ったり、かぶとをかぶったりできる、体験型の展示で、大喜びで兜をかぶせてもらっている外国人の様子を見て、私もかぶせてもらうことに。
彼らのおかげで勇気が出ました。

10258019540347_censored.jpg

実際にかぶってみると、重くて頭を動かせません。
うっかり下を向いたら、もう首を上げられなさそう。
「20キロくらいありますよ」と、兜を支えてくれながら、係の人が教えてくれました。

なんとなく、ひこにゃんの兜に似ていますね。


期間中は革や鉄でできた小さな板“小札(こざね)“を紐で結び合わせる“おどし”の技術を使った飾りづくりのワークショップ(予約制)や、鎧の着用体験(先着順)が実施されています。
本館-特別4室 日本文化体験コーナー
2019年7月17日(水) ~ 2019年9月23日(月)
⇒ More

2019年04月24日

サンダーソンアーカイブ ウィリアム・モリスと英国の壁紙展 -美しい生活をもとめて-

IMG_1918.jpg

去年の夏から全国のあちこちで開催された「ウィリアムモリスと英国の壁紙展」。
ここ横浜が最後の展示となります。
19世紀に起こった産業革命により、イギリスの中産階級の生活様式は一変しました。
それまでの部屋の内装に使われた漆喰や壁画、タペストリーから、手頃な値段の壁紙が流行したのです。

1870年代に活躍した詩人兼デザイナーのウィリアム・モリス(1834-96)。
自然と装飾とを組み合わせた彼の壁紙デザインは、当時の時代背景に乗って人気を呼び、人々の暮らしの中に浸透していきました。

この展覧会では、モリスのデザインを中心として、英国の壁紙会社サンダーソン社所蔵の歴史的壁紙や版木など、約130点が英国外で初めて展示されます。つまり日本初公開です。
その中には日本から輸入した金唐紙もあり、ジャポニズムの影響を見ることができます。

第1章 ウィリアム・モリス以前 ~フレンチ・スタイル、リフォーム・スタイル、オリエント・スタイル

モリスが登場する前のイギリス壁紙の変遷が展示されます。

花とロココ調.jpg
《花とロココ調スクロール》1850年頃

19世紀半ばのイギリスでは壁紙の生産量が高まり、フランス風デザインから平面的・幾何学的なパターンに変わりました。
万国博覧会をきっかけとして注目された東洋風デザインもあり、日本の「金唐革紙」からの影響も紹介されます。

第2章 ウィリアム・モリスとモリス商会 ~モリスのデザイン(1860-90年代)、モリス商会の活動

モリスの活躍により、壁紙のバリエーションは一気に増えました。
花や鳥のモチーフや、連続した幾何学的な法則性が見える作品など、モリスの壁紙デザインがずらりと鑑賞できるのがこの第2章。
制作用版木も並べられ、日本の版画と同じように色を重ねていく制作方だとわかりました。


99ee2c8417159c3f9f6e8a60d3febfe4.jpg
《ピンパーネル(るりはこべ)》1876年


d1b369b2ad6bf7704fa595486fc14e0e.jpg
ジョン・ヘンリー・ダール《ゴールデン・リリー(黄金のゆり)》1899年

● クラシックモリスコーナー

IMG_1912.jpg

モリスデザインの壁紙を用い、英国アンティーク家具を備えたトラディショナルな居間のコーナー。

第3章 アーツ・アンド・クラフツ運動

ここではモリス以降、彼のデザインに影響を受けた19世紀末から20世紀初めのデザイナーたちの壁紙が紹介されます。
大量生産の潮流の中で、手仕事で美しく有用なものを作ろうとし、生活の中の芸術をめざしたモリスの思想は、のちのアーツ・アンド・クラフツ運動につながっていきました。

21d5c86c015e08d9bf45d133621255b3.jpg
C.F.A.ヴォイジー《サヴァリック》1896年頃

2b34ca44c14c44a12fe03528fd6fc1c0.jpg
ドロシー・ヒルトン《オレンジとレモン》1902年頃

ピュアモリスコーナー

現代のライフスタイルに合わせたモノトーンのコーナー。
モリスが目指した「生活の中に美を取り入れる」という考え方を現代モダン風に表現しています。

IMG_1915.jpg

日本では、部屋の壁紙はあまりなじみがありませんが、数多くのパターンに共通しているのは、そのどれもが人が住む部屋の心地よさを目指したデザインだということ。
人々の暮らしが豊かになっていくにつれて、生活の心地よさや華美ではない装飾が日常に求められ、取り入れられていった様子を、さまざまなデザインからうかがい知ることができます。
さりげない「生活の中の美」を目指している壁紙は、どれも時代を経ても色あせず、飽きがこない美しいデザインです。
2019年4月20日(土)~2019年6月2日(日)
会場 そごう美術館