2019年07月26日

少数精鋭、お宝ぞろい~特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」

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本展では、7〜8世紀に奈良県北東部に創建された岡寺(おかでら)、室生寺(むろうじ)、長谷寺(はせでら)、安倍文殊院(あべもんじゅいん)の4寺が所蔵する名品を展示。
全作品15件のうち、国宝が4件、重要文化財が9件の豪華なラインナップです。


● 岡寺

岡寺からは、開祖とされる飛鳥時代後期から奈良時代にかけての高僧・義淵僧正の《義淵僧正坐像》(国宝)。

● 室生寺

真言宗室生寺派の大本山、室生寺からは、《国宝》十一面観音菩薩立像など。

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《国宝》釈迦如来坐像 平安時代・9世紀 奈良・室生寺蔵

平安時代初期の一木彫像とは思えないクオリティの高さと保存の良さ。
衣装の襞が深く彫り込まれています。

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《国宝》十一面観音菩薩立像 平安時代・9~10世紀 奈良・室生寺

● 長谷寺

長谷寺の御本尊は、奈良時代の8世紀初頭につくられた、10メートルを超える《十一面観音菩薩立像》。
その御本尊を模してつくられた、長谷寺式十一面觀音菩薩像が展示されています。
こちらは小型です。

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《重要文化財》十一面観音菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 奈良・長谷寺蔵

展示品の中で個人的に気に行ったのが、雨乞いの難陀龍王立像(なんだりゅうおうりゅうぞう)。
長谷寺の御本尊、十一面観音菩薩立像の脇侍で、もう一体の脇侍、赤精童子(雨宝童子)立像も隣に展示されています。

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《重要文化財》難陀龍王立像 舜慶作 鎌倉時代・正和5年(1316) 奈良・長谷寺蔵

頭に龍を載せているために横にして寝かせられず、立った状態のままで厳重梱包をして、大変な思いをして東京まで運んできたそうです。

● 安倍文殊院

安倍文殊院からは、快慶作《文殊菩薩像》の像内から発見された文殊菩薩像像内納入品の経巻《仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等》。
国宝です。

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《国宝》文殊菩薩像像内納入品《仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等》 1220(鎌倉時代、承久2年)
奈良・安倍文殊院蔵 画像提供=奈良国立博物館

それぞれのお寺を参拝しても、こうした銘品は通常は非公開か、宝物殿の中に安置されており、なかなかお目にかかることができません。
いい機会となりました。

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特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」
東京国立博物館 本館11室
会期は6月18日~9月23日

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2019年04月18日

特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」

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去年のうちから東京開催を待ち焦がれていた東寺展。
平安京遷都に際し、官寺として建立された東寺(教王護国寺)
弘法大師空海は、ここを真言密教の根本道場としました。


この展覧会では、東寺が所蔵する100件以上の密教美術品や仏教文化財が紹介されます。
うち31件が国宝。
見どころはなんといっても、空海が難解な密教体系を人々にわかりやすく理解させるために作った立体曼荼羅。
21体ある立体曼荼羅のうち、国宝11体、重文4体の合計15体の仏像群がやってきます。
これほどまでに東寺の外部で展示されるのは、今回が初めてです。
会場は4部構成です。
第1章 空海と後七日御修法(ごしちにちみしほ)
第2章 密教美術の至宝
第3章 東寺の信仰と歴史
第4章 曼荼羅の世界
第1章 空海と後七日御修法(ごしちにちみしほ)

「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」とは、真言宗十八本山の各山の高僧と百名近い僧侶が、一日三座七日間にわたり国家の安泰や世界平和を祈願する、真言宗最高の厳儀。
その際の堂内の様子が、会場に再現されています。

● 国宝 金銅密教法具

法具は密教の祈りに使われるもの。
金銅盤の上に法具3点が乗った組法具は、空海の日本帰国に際して師の恵果が授けたものの一つと考えられています。

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国宝 金銅密教法具「五鈷杵」「五鈷鈴」「金剛盤」各1口
中国 唐時代・9世紀

第2章 密教美術の至宝

密教の独特な芸術品が紹介されます。
難解なところもありますが、そこは密教ですから、仕方がありませんね。

● 両界曼荼羅図

金剛界と胎蔵界の両界曼荼羅図。彩色されたものとしては現存する最古のもの。
インド風の画風で描かれており、東寺の西院で使用されていました。

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両界曼荼羅図(西院曼荼羅〈伝真言院曼荼羅〉) 2幅 平安時代・9世紀

第3章 東寺の信仰と歴史

順を追って、いよいよ仏像の展示室に入ります。

■ 国宝 兜跋毘沙門天立像

8世紀の唐で作られた、中国オリジナルのエキゾチックな毘沙門天像。
すらりとした体躯に中央アジア風の衣装と顔立ち。
平安京の守護のために、羅城門の楼上に立っていたと伝えられます。

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「国宝 兜跋毘沙門天立像」
中国 唐時代・8世紀

このウエストの細さよ!
掲載しているチラシの画像は、下部が切れていますが、実際には足元に「地天女」とその両脇の「尼藍婆」「毘藍婆」がいる、かなり独特の像になっています。

第4章 曼荼羅の世界

いよいよ東寺講堂の立体曼荼羅のコーナー。
密教の経典『金剛頂経』の世界観を立体的に表したもので、21体の仏像から15体(うち国宝11体、重文4体)が展示されています。
毎回東寺の講堂に入るたびに圧倒される大迫力の立体曼荼羅が、ここ上野で観られるなんて。
こんなに東京に持ってきてくれるなんて、ありがたいことです。
現在の東寺には、6体しか残されていないため、今講堂に行った人はがっかりすることでしょう。

「五大明王」は不動明王以外すべて見られます。
一番中心となる不動明王像は写真のみですが、ほかの明王たちはどれもおそろしいほどの大迫力です。

■ 降三世明王立像

東方を守護する降三世明王はシヴァ神夫婦を踏みつけています。
どちらも顔立ちは穏やかで、とても悪しきものには見えません。
むしろ4つの顔を持ち、どの顔も恐ろしげな明王の方が悪の権化のように思えます。
初めて見た時にはショッキングでしたが、これこそが空海が求めた、密教をわかりやすく伝えることなのでしょう。

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降三世明王立像 1体 平安時代・承和6年(839) 東寺

この展覧会では、全角度展示のため、仏像を360度から鑑賞できます。
これは普段安置されている講堂では不可能なこと。
降三世明王の後ろ側に周ると、通常は決して見ることができない、更なる恐ろしい顔を見つけられます。

■ 大威徳明王騎牛像

西方を守護する阿弥陀如来の化身、大威徳明王。
6つの顔、6本の腕、6本の足を持ち、全てに動きを感じます。

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大威徳明王騎牛像 1体 平安時代・承和6年(839) 東寺

正面からだとわかりませんが、横から見ると、牛は首を引き、角を立ててこちらを威嚇しています。
明王も牛も、どっちもこわい!

■ 持国天立像
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持国天立像 1体 平安時代・承和6年(839) 東寺

四天王は「持国天」「増長天」の2体がやってきています。
衣装の流れに風の動きを感じます。

■ 増長天立像

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増長天立像 1体 平安時代・承和6年(839) 東寺

■ 国宝 帝釈天騎象立像

今回、この帝釈天像一体が撮影可能となっています。
東寺の講堂内は撮影不可のため、ここで撮影できるとはすごいことです。
普段は曼荼羅の左端に位置し、決まった角度からしか見られない帝釈天を、ぐるりと回り込んで鑑賞します。
柱越しに見るため、こんなに軽やかに像にまたがっているということも、これまであまり実感できずにいました。
うーん、すばらしい。

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国宝 帝釈天騎象像
平安時代・承和6年(839) ※写真撮影可能

講堂の照明とは違う、一つ一つの作品に向けて計算されたライティングにより、仏像群は宗教的な意味合いを持つだけでなく、精緻な彫刻の施された芸術品であるということを、改めて再確認できました。

東寺の帝釈天は日本一のイケメン仏像として知られているため、女性が大勢観に来ているのかと思いましたが、この像の周りを取り囲んで熱心に撮影しているのは、圧倒的に男性が多かったのが印象的。

ただ個人的には、東寺の立体曼荼羅では帝釈天よりも梵天がお気に入りの私。
今回の展示品の中にはなく、留守番の6体の方に入っているのが残念です。
いずれにせよ、展示品の充実ぶりに満足度の高い東寺展。
会期後、全ての仏像が京都に戻ったのちにまた、東寺の講堂を訪ねてみたいと思います。
開催概要
特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」
会期 2019.03.26-2019.06.02
会場 東京国立博物館
posted by リカ at 18:35| Comment(0) | 【finearts】書・版画・彫刻 | 更新情報をチェックする

2018年11月08日

京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ

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去年の『運慶展』以来、すっかり定番となった、仏像の大展覧会。
今回は、京都・大報恩寺の所蔵品です。

見どころは、この3点。
1.慶派仏師の快慶とその弟子の行快、運慶の弟子の定慶の3人の名品が中心。
2.寺外初公開の秘仏、行快の「釈迦如来坐像」と快慶晩年の名品「十大弟子立像」。
3.光背を外した(会期後半)定慶の「六観音菩薩像」[重要文化財]。

大報恩寺と聞いても、京都のどのお寺なのか、わかりませんでした。
「千本釈迦堂」と聞いて、(ああ)と思います。
北野天満宮の近くにあり、おかめ発祥の地として知られるお寺。
参拝したこともありますが、正式名称が思い出せませんでした。

1220年に義空上人に開創された、真言宗智山派の寺院。
2020年に開創800年を迎える記念行事として、今回霊宝殿の所蔵品が展示されています。

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慶派にはスターが多く、名前が似ていてわからなくなるので、初めに一旦おさらいしておきましょう。
まず、慶派と呼ばれる仏師の祖が、康慶(こうけい)。
康慶の息子が運慶(うんけい)で、康慶の弟子が快慶(かいけい)。
去年、東京に運慶フィーバーが起きましたが、今年はもう一人の立役者である快慶のターンです。

[慶派の祖]康慶→[息子]運慶→[弟子]★定慶(じょうけい)
      ||
[慶派の祖]康慶→[弟子]★快慶→[弟子]★行快(ぎょうかい)

今回は、★印の3人の仏師による仏像が展示されています。

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● 《千手観音菩薩立像》

かつて、大報恩寺の近く、北野社(現在の北野天満宮)大鳥居の南側に、足利義満が建てた北野経王堂がありました。
堂は江戸時代に解体され、所蔵品の輪蔵や経典、仏像は、大報恩寺に移管されることとなりました。
まず初めに、北野経王堂ゆかりの名宝が紹介されます。

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千手観音菩薩立像 平安時代・10世紀

入ってすぐに出迎えてくれた像。
手の表情が平安を物語っている、美しい像。
作者不詳ですが、精緻に作りこまれており、観ているだけで、心穏やかになります。
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● 《釈迦如来坐像》

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行快作 [重要文化財] 釈迦如来坐像
鎌倉時代・13世紀

展示室いっぱいに、釈迦如来坐像と十大弟子立像が陳列されています。
中央に鎮座しているのは、ご本尊の秘仏「釈迦如来坐像」(重要文化財)。
このお釈迦様の像がある千本通のお寺なので「千本釈迦堂」と呼ばれているのです。

普段は本堂内陣の厨子の中に安置されており、年に数回しか公開されません。
これが、寺外初公開。そのためか、とてもいい保存状態です。

快慶の弟子、行快の作品で、きりりとした表情をしていました。
秘仏の後ろにまでぐるりと回り込める360度の展示。
贅沢な空間です。

その周りに立っているのは、快慶晩年の十大弟子立像。
釈迦の十人の主要な弟子たちで、皆布をまとった質素な格好ながら、立ち姿や筋肉の載せ方で、年若や年長さが巧みに表現されていました。

あまり詳しくないながらも、一番弟子の阿難陀(あなんだ、アーナンダ)と、釈迦の実子の羅睺羅(らごら、ラーフラ)はわかりました。
お寺では現在、釈迦如来は本堂、十大弟子は霊宝殿に、別々に保管されているそうですが、今回の特別展では、釈迦と十大弟子が同じ空間に展示されており、昔の配置を体感することができます。
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● 肥後定慶作《六観音菩薩像》

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肥後定慶作 [重要文化財] 六観音菩薩像
鎌倉時代・貞応3年(1224)

寛文10年(1670)に、北野経王堂から大報恩寺に移された六観音菩薩像。
重要文化財に指定された、唯一の六観音像です。

六観音菩薩とは、日本の密教での観音菩薩の組み合わせ。
聖観音、千手観音、馬頭観音、十一面観音、准胝観音、如意輪観音の六体を指します。

作者は運慶の弟子・肥後定慶。
鎌倉時代、定慶という名の人は4人もいたらしく、区別をつけるために、この人は肥後定慶と呼ばれています。
どれもすらりとした細身の立ち姿の美しい観音像。
准胝観音像の胎内に、彼の銘があったそうです。

最後の聖観音は、なんと写真撮影OK。
会期の前半、10月28日までは光背をつけた姿で、会期後半、10月30日からは、光背を取り外した姿で展示。
360度周れて、普段見ることのできない間近で背中も観られる、珍しい機会です。

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聖観音像

会場スペースは運慶展の半分しかなく、残り半分ではマルセル・デュシャン展が開催中。
展示数の物足りなさはありますが、空間を潤沢に使い、照明を駆使して、360度仏像を鑑賞できるようにした展示法はとても印象的で、スペクタクル感にあふれたものでした。

スーベニアショップには、お寺の御朱印のほか、『聖おにいさん』とのコラボグッズのTシャツやキーホルダー、クリアファイルなどがいろいろと揃っていました。
二人が着ている快慶・定慶Tシャツも売られており、原作を知らない同行の親は不思議がっていました。
(でも説明すると長くなるので、黙っていました…!)

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特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
東京国立博物館 
2018年10月2日(火)~12月9日(日)
画像:公式サイトより
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