2016年10月04日

「エッシャー展―視覚の魔術師―」

そごう美術館
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オランダの版画家M.C. エッシャー(Maurits Cornelis Escher, 1898-1972)の作品展。
エッシャーコレクションを誇るハウステンボス美術館所蔵の約100点が展示されています。

だまし絵といえばエッシャー、エッシャーといえばだまし絵。
そう思ってだまされに行きましたが、彼の作品はそれだけではありませんでした。

最初からああいった絵を描いていたわけではもちろんなく、イタリア滞在中に描いた風景画など、初期の頃は目に映るままの光景を描いています。

のちのだまし絵への繋がりはまだ感じられませんが、とても緻密で立体的な作品。
俯瞰力もありました。

子供向けの魔女の絵本の挿絵も手掛けたりしていました。
モノクロで絵が怖いですが、彼の絵にかわいらしさは皆無。

その後アルハンブラ宮殿で、ムーア人によるモザイク模様に感銘を受けた彼。
この辺りから彼独特の緻密なデザインパターンが生み出されていきます。

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「騎士」


結晶学者の兄の影響を受けて平面充填(平面を同じ図形で埋める方法)を研究し、数学的な<平面の正則分割>の思考も取得したことで、平面を連続模様で埋め尽くす技法が編み出されたのだそう。
<平面の正則分割>によるデザインの平行移動や裏返しに立体感と緻密さを加えることで、彼独自の世界が展開されていくこととなりました。

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「昼と夜」(Day and night)1938年
左右がシンメトリーに作られています。


モノクロの作品が多いと思ったら、彼の作品はほぼ木版画。
なおさらその緻密さに驚かされます。

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「もう一つの世界」(1947年 木口木版・板目木版 3色刷)


第二次世界大戦勃発中も、政治には興味を示さず版画に没頭していたという彼。
その姿勢が、世相を反映させない硬質な作品となっているように思われます。

改めて作品と向き合ってみると、単なる「だまし絵」を超えて印象に残るのは、不思議な秩序のとれた静けさ、そして繊細さ。
見れば見るほど精密で幾何学的で美しく、世界中の人をひきつけているのがよくわかります。

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「ベルベデーレ(物見の塔)」(1958年 リトグラフ)


エッシャーの絵が表紙を飾った1970年刊の「週刊少年マガジン」 が特別展示されていました。
意外な取り合わせに思えますが、3刊連続でエッシャー作品を表紙にしたことが、日本で彼が知られるきっかけとなったそうです。

「視覚の魔術師」と言われ、建築は不可能と言われる彼の作品。
その<不可能立体>を立体化したコーナーがあり、観客は皆じっくり観察していました。

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鏡に映った物が、実物とは違った形に見えるという謎。
目の錯覚による不思議さを体感。

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晩年まで精力的に制作に取り組んだものの、存命中はあまり芸術家としての正しい評価を得られなかったそうですが、彼の作品は、数学や物理、心理学の理論を取り入れて生み出された広い意味でのアート。
今なお色あせずに多くの人を魅了し続けるのは、人が様々な見方から鑑賞し、そして一様に驚かされ続けるからなのでしょう。


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2015年03月21日

微笑みに込められた祈り 円空・木喰展

00083987.jpgat そごう美術館

副題「微笑みに込められた祈り」がぴったり。
2年前に東京国立博物館の「飛騨の円空」展を観て以来、仏像のイメージを超えた自由さにあふれる円空仏の魅力にはまっています。
今回は、木喰(もくじき)仏も一緒に観られるという、贅沢な展覧会。
会期終了前日とあって、会場内はけっこう混んでいましたが、周りと一緒に一体一体をじっくり見ていったので、「前がなかなか進まない」といったストレスは感じませんでした。

日本回国修行、つまり全国行脚しながら木の神仏像を彫り続けることを修行とした、円空(1632-1695)と木喰(1718-1810)。
日本中を巡り、木喰に至っては、沖縄以外の全都道府県を訪れたそうです。
この2人の作品の合同展覧会は、首都圏では初めてというのが意外。
2人とも江戸時代の人なので、一緒くたにとらえがちですが、円空の死後に木喰は生まれていました。
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2013年03月29日

東京国立博物館140周年特別展「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」

P518.JPG円空や木喰による、木彫りの仏の素朴な暖かさが好きです。
日本中を巡った円空(1632-95)は生涯で12万体の木仏を彫ったとされており、今回は岐阜の千光寺所蔵の円空仏61体を中心にした、100体の飛騨の円空仏が展示されています。

これまでにないくらい、展示スペースが小さかったのですが、一体一体の仏像の大きさを考えると、妥当な広さになるのでしょう。
円空の仏像は、あまり詳細までは造りこんでいない、素材の木の質感がダイレクトに伝わってくるようなもの。
それだけに、優美さよりも勢いを感じます。
強さが感じられる、無駄なものを一切省いた、無造作にも見える簡潔さは、鳶職人が作ったようにも思えます。
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