2018年03月13日

特別展「仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-」

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東京国立博物館 平成館


仁和寺展があまりに素晴らしかったため、最終日に再び訪れました。
展示は第1会場と第2会場に分かれており、第1会場は書がメイン。
2回目となる今回は、仏像に集中するべく、第2会場目がけて入りました。

● 仁和寺の観音堂須弥壇再現

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まずは臨場感たっぷりの第4章「仁和寺の江戸再興と観音堂」。
再現された観音堂の須弥壇にはご本尊の千手観音菩薩立像や眷属の二十八部衆など、数多くの仏像がびっしりと並んでいます。笛を吹く迦楼羅もいます。

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今回は、両脇を陣取る風神雷神に着目しました。
リアルな表情ですが、後姿はかわいかったです。

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第5章「御室派のみほとけ」の御仏は、全23体のうち3件6躯が国宝、18体が重文というすごすぎるラインナップ。
第1会場にある薬師如来像(高さ約12㎝)は、日本一小さい国宝です。

● 葛井寺 千手観音坐像

千手観音は、どうしても藤井寺のご本尊が圧巻。
全1041本のうち、密集した千本以上の手は、スペースの関係からみんなまっすぐの形をしていますが、その中から伸びた手にはさまざまなものを持っています。
怖いはずのドクロ(画面左側)が丸々としているので、次第に大福のようにも見えてきました。おいしそう…。
この像は、手の広がりがあるため、前にも横にも立体的に大きいもの。ですが、観音様は蓮華座に座っており、よくこの細いところでバランスが保たれているものだと感嘆します。

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藤井寺では毎月18日にのみこのご本尊が御開帳されていますが、トップのちらしのように窓からのぞく観覧方式だと少し距離があるため、正面から対面できて、しかも360度ぐるり巡ることができる今回はまたとない機会です。

● 雲辺寺の千手観音菩薩坐像

千本はないものの、雲辺寺(徳島)の千手観音菩薩坐像の手は、一本一本に表情がありとてもエレガント。
ひとつとして同じ形のものはありませんでした。
さらにこの観音様、アクセサリーもゴージャスで華がありました。

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● 神呪寺の如意輪観音菩薩坐像

もう一体、手つきが気に入った神呪寺(かんのうじ)の如意輪観音菩薩坐像。
普通の如意輪観音の坐り方とは少し違っています。それを崩した形のよう。
正面から見ると一見わかりませんが、横から見ると、肩から手が3本ずつ、計6本出ています。
そのうちの一本が、人差し指の上に何か乗せて回しているようで、ユーモラスな感じに親しみを持ちました。

仁和寺展 神呪寺 如意輪観音菩薩坐像.jpg


薄暗い展示室の中、淡い照明を受けた仏像の前で、一心に手を合わせている人を何人も見かけました。
展示の前に仏像から魂を抜いているとはいっても、やはり心を強く揺さぶられます。立派な仏像を前にすると、人は自然と祈りを捧げたくなるのだろうと思いました。

じきに春になると、仁和寺境内には御室桜が咲き誇ります。一度満開の時に訪れてみたいものです。
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2018年03月01日

特別展「仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-」

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東京国立博物館 平成館


真言宗御室派総本山「仁和寺」をメインとした、全国の御室派の寺社の文化財・寺宝を一堂に観覧できる展覧会。

西暦888年に宇多天皇により開山された、天皇家ゆかりの門跡寺院・仁和寺は、平成6年に世界遺産の指定を受けています。天皇の住まいがあったことで「御室」と呼ばれ、宗派の名前や庭園に咲く「御室桜」の名前の由来になっています。
所蔵する文化財は、なんと10万点以上だそう。

今回の出展作品全174点のうち、国宝は24点、重要文化財は75点。
作品の半数以上が国宝と重文です。
神々しくて、目がどうにかなりそう。

実際にその寺院に行っても見ることができない秘仏やご本尊まで、展示に含まれています。各寺院にとっても非常に大切なお宝を見ることができる、すばらしいチャンスです。

音声ガイドは、目下公開中の日中合作映画「空海ーKU-KAIー美しき王妃の謎」出演の、阿部寛氏と染谷将太氏がナビゲーター。

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昨年の「運慶展」よりはマイナーかしらと思いましたが、入館まで30分待ち状態で、館内も非常に混んでおり、なかなか落ち着いて見られる状況ではありませんでした。
土曜日だったので仕方がありませんが、人気ぶりに驚きました。

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第1会場は書、第2会場は仏像。
第1会場には歴代天皇直筆の手紙など、国宝級書跡がずらりとそろい、とても見ごたえがあります。

● 国宝「三十帖冊子」

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(画像)公式twitter

空海が長安の青龍寺で2年間を密教を学んだ後、その教えを、空海や橘逸勢らが書写して持ち帰ったとされる書物が「三十帖冊子」。
「三筆」の筆跡に見入る人が多く、ガラスケースの前は黒山の人だかりでした。

第1会場だけでもハイレベルの作品が続きますが、本当に度肝を抜かれるのは、正面階段を挟んで反対側に位置する第2会場です。

● 国宝 阿弥陀如来坐像および両脇侍立像(京都・仁和寺)

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(画像)公式サイト

仁和寺の金堂の、三尊形式の阿弥陀如来像。
真言宗のご本尊は大日如来のため、阿弥陀如来像がご本尊というのは珍しいことです。

● 重要文化財 五智如来坐像(大阪・金剛寺)

五智如来とは、大日如来を中心とする五体の如来の呼び名です。
北方世界の釈迦如来、西方世界の阿弥陀如来、南方世界の宝生如来、東方世界の薬師如来、そして中央に大日如来という位置をとりますが、なかなか五体の如来を一堂に見る機会はありません。
暗く照明を落とした展示室内に、金色の仏像がキラキラと輝いており、五体揃って更に眩さが増していました。みんな異なる印相をとっていました。

● 国宝 十一面観音様(大阪・道明寺)

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葛井寺からほど近い道明寺の国宝で、お寺でのご開帳は毎月18日と25日のみ。
白檀でつくられた平安初期一木彫像で、360度全方向から鑑賞できます。
非常に美しく、母性がにじみ出ている観音様。心穏やかになります。

● 国宝 千手観音菩薩坐像(大阪・葛井寺)

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(画像)公式サイト

この作品の展示が2月14日から開始されるため、今回そのタイミングを待って来館。
奈良時代に制作された、今回出展の66体の彫刻の中で最も古い仏像。

見たことがないほどの大迫力です。頭には11面、腕は1041本の十一面千手千眼観音。
一つ一つの手の平には眼が描かれています。
葛井寺でも見ることができないこの仏像を間近に見れて、眼福の至り。

● 重要文化財 不動明王坐像(広島・大聖院)

宮島の大聖院を参拝したことがありますが、あそこにいるのは立像の波切不動明王では?と調べてみました。
こちらは重要文化財のため、霊宝館に安置されているそうです。
赤く塗られた立体的な光背と写実的な像でした。

● 重要文化財 千手観音菩薩坐像(香川・屋島寺)

葛井寺の千手観音像のすぐ後の展示なので、驚きも少し少ないかもしれないという残念なポジションですが、見れば見るほど驚きが大きくなります。
10世紀の制作で、なんと頭と体の主要部分は一木造り。腕は左右19本ずつで、その厚みのある存在感には圧倒されます。
これをここまで運び込むのには、どれだけの苦労があったことだろうと思います。

● 仁和寺の観音堂再現

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仏像展示室で誰もが感嘆の声を上げるのは、仁和寺の観音堂とその須弥壇に安置される仏像33体がオールスターで再現されたコーナー。
これは圧巻です。
壁画まで復元展示しています。
仁和寺を参拝しても、普段、観音堂に入ることはできません。そこの仏像全てをまるまる展示できるのは、現在、この観音堂が改修工事中だからだとのこと。
いいタイミングが重なり、夢のような再現が実現されました。

更に嬉しいことに、こちらのコーナーは写真撮影OK。なんて太っ腹なんでしょう。
みんな夢中で、カメラを向けていました。
これは国宝・重文指定を受けていない仏像だからですが、本当に一つ一つが素晴らしく、さらにそれが33体集合しているこの様子は、鳥肌が立つほどの感動があります。
私は東寺の立体曼荼羅と三十三間堂の千手観音を初めて見た時の感激を思い出しました

前回の運慶展でも感じましたが、トーハクは 作品の見せ方に拘っており、特に立体的な仏像は、照明や配置の効果により、一つ一つの作品をより素晴らしく展示しています。
とてもハイレベルな展覧会。仏教芸術に興味がある方は、大満足すること請け合いです。

● 東京国立博物館 平成館 公式サイト
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2016年10月04日

「エッシャー展―視覚の魔術師―」

そごう美術館
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オランダの版画家M.C. エッシャー(Maurits Cornelis Escher, 1898-1972)の作品展。
エッシャーコレクションを誇るハウステンボス美術館所蔵の約100点が展示されています。

だまし絵といえばエッシャー、エッシャーといえばだまし絵。
そう思ってだまされに行きましたが、彼の作品はそれだけではありませんでした。

最初からああいった絵を描いていたわけではもちろんなく、イタリア滞在中に描いた風景画など、初期の頃は目に映るままの光景を描いています。

のちのだまし絵への繋がりはまだ感じられませんが、とても緻密で立体的な作品。
俯瞰力もありました。

子供向けの魔女の絵本の挿絵も手掛けたりしていました。
モノクロで絵が怖いですが、彼の絵にかわいらしさは皆無。

その後アルハンブラ宮殿で、ムーア人によるモザイク模様に感銘を受けた彼。
この辺りから彼独特の緻密なデザインパターンが生み出されていきます。

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「騎士」


結晶学者の兄の影響を受けて平面充填(平面を同じ図形で埋める方法)を研究し、数学的な<平面の正則分割>の思考も取得したことで、平面を連続模様で埋め尽くす技法が編み出されたのだそう。
<平面の正則分割>によるデザインの平行移動や裏返しに立体感と緻密さを加えることで、彼独自の世界が展開されていくこととなりました。

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「昼と夜」(Day and night)1938年
左右がシンメトリーに作られています。


モノクロの作品が多いと思ったら、彼の作品はほぼ木版画。
なおさらその緻密さに驚かされます。

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「もう一つの世界」(1947年 木口木版・板目木版 3色刷)


第二次世界大戦勃発中も、政治には興味を示さず版画に没頭していたという彼。
その姿勢が、世相を反映させない硬質な作品となっているように思われます。

改めて作品と向き合ってみると、単なる「だまし絵」を超えて印象に残るのは、不思議な秩序のとれた静けさ、そして繊細さ。
見れば見るほど精密で幾何学的で美しく、世界中の人をひきつけているのがよくわかります。

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「ベルベデーレ(物見の塔)」(1958年 リトグラフ)


エッシャーの絵が表紙を飾った1970年刊の「週刊少年マガジン」 が特別展示されていました。
意外な取り合わせに思えますが、3刊連続でエッシャー作品を表紙にしたことが、日本で彼が知られるきっかけとなったそうです。

「視覚の魔術師」と言われ、建築は不可能と言われる彼の作品。
その<不可能立体>を立体化したコーナーがあり、観客は皆じっくり観察していました。

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鏡に映った物が、実物とは違った形に見えるという謎。
目の錯覚による不思議さを体感。

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晩年まで精力的に制作に取り組んだものの、存命中はあまり芸術家としての正しい評価を得られなかったそうですが、彼の作品は、数学や物理、心理学の理論を取り入れて生み出された広い意味でのアート。
今なお色あせずに多くの人を魅了し続けるのは、人が様々な見方から鑑賞し、そして一様に驚かされ続けるからなのでしょう。