2017年11月07日

運慶の後継者たち-康円と善派を中心に

12.jpg

トランプ大統領訪日中の厳戒態勢の都心を抜けて、東京国立博物館へ。
今回は平成館の『運慶』展ではなく、本館が目的です。

ここはなんといっても、撮影可の美術品が多いのがありがたいところ。
外国人も熱心に見学しています。

DSC_1160.jpg
塩山蒔絵細太刀拵 初代飯塚桃葉作 江戸時代・18世紀


初代飯塚桃葉は、蜂須賀家の御用蒔絵師。
儀式用に作られた細太刀の美しい鞘の絵巻は、まさに芸術品です。

DSC_1161.jpg
【重文】金銅聖観音懸仏 鎌倉時代・建治元年(1275)
 

鏡板に立体的な仏像・神像を取り付けた懸仏。
穏やかで安らいだ、美しい表情です。

刀剣の部屋には刀剣女子が展示品の前に貼りついていました。
国宝まで撮影可とは太っ腹です。

DSC_1163.jpg
【国宝】太刀 長船景光(号 小龍景光) 鎌倉時代・元亨2年(1322)


鎌倉時代末期に活躍した景光は、長光の子で備前長船派の正系の刀工。この太刀は直刃調の刃文で景光の最高傑作とされています。
倶利伽羅龍と梵字が浮き彫りになっており「小龍景光」と号されています。

DSC_1165.jpg
【重文】刀 相州正宗(名物 石田正宗) 鎌倉時代・14世紀


正宗が作刀した日本刀の一つで、号の「石田」は石田三成が所持したことに由来しています。

小部屋を通って今回の目的地、本館14室にやってきました。
特別展『運慶』展の公開に合わせて、ここで『運慶の後継者たち―康円と善派を中心に』が開催されております。

運慶の孫にあたる康円(1207~?)と、康円と同じ頃に活躍した仏師、善円(のち善慶と改名、1197~1258)の作品をメインとした展示。
善円らの系統の仏師たちは善派と呼ばれ、康円の慶派とは別に、奈良を中心に活動していました。
展示品は康円作が10点、善円作が1点、無銘3点の計14点。
うち12点が重要文化財です。

DSC_1168.jpg
重要文化財 菩薩立像 鎌倉時代・13世紀


この像は、上下の唇にも薄い水晶板を当てており、玉眼だけでなく玉唇の技法が用いられています。

ほかの鎌倉時代重要文化財では、興福寺伝来の文殊菩薩坐像と善財童子立像、京都・神護寺蔵の愛染明王坐像が展示されています。(3点とも康円作)

運慶の流れを汲んだ生き生きとした仏像が間近で見られ、小さな展示ですが、運慶以後の鎌倉彫刻が紹介されています。

23.jpg


晴天の美しい休日。ちょうど奥の庭園が公開されており、美しい敷地内で多くの人がくつろいでいました。

DSC_1169.jpg

-----------------------------
『運慶の後継者たち―康円と善派を中心に』
2017年8月29日(火) ~ 2017年12月3日(日)
東京国立博物館 本館(日本美術):公式サイト
posted by リカ at 15:25| Comment(0) | 【finearts】その他 | 更新情報をチェックする

平山郁夫 シルクロードコレクション展

00089486.jpg

日本画壇の重鎮で、バーミヤンの文化保存に尽力した平山郁夫(1930-2009)が描いたシルクロードの旅の足跡。

シルクロードというと、アラビアの辺りかなと漠然と連想しますが、実際にはローマから中国にかけての広い地域。
そこを、海外渡航がメジャーではなかったころから何回にも渡って訪れてスケッチをしてきた夫妻。
実際に訪れた場所を地図で見ると、その移動範囲の広さに改めて驚きます。

img04.jpg


イラクの『サマーラーの塔』などといったスケッチは、和紙に描いているので絵の具が染み、独特の風合いを出しています。

img04 (1).jpg
『敦煌石窟 57窟 南壁の菩薩像』スケッチ画


何といっても圧巻は『パルミラ遺跡を行く・朝』と『パルミラ遺跡を行く・夜』。
ラクダに乗った一行が砂漠を静かに通っていく、対になったこの2点の大作が、パルミラ遺跡の絵の両脇に据えられている空間では、一気にシルクロードロマンの世界に引き込まれます。

2e3713d3-s.jpg
『パルミラ遺跡を行く・朝』


df0ee7b974e0023f468b417c7e0096c9.jpg
『パルミラ遺跡を行く・夜』2006年


女王ゼノビアで有名なパルミラですが、ローマ帝国と敵対していたんですね。
上の絵画も『コリント』も、画材にガラスを混ぜているのか、作品は砂絵のようにきらきらと輝き、アラビアンナイトの風情たっぷりでした。

バーミヤンの大石仏が破壊された後も現地へ赴いた彼。ありし日の大石仏と破壊後の絵を並べて展示されていました。
失われた文化遺産に、胸が痛みます。

70.jpg
左『バーミアン大石仏を偲ぶ』 右『破壊されたバーミアン大石仏』


薬師寺玄奘三蔵院の壁画大下図の原画が10分の1で展示されていました。
突然日本が舞台になり、一瞬(おや?)と思いましたが、そういえばシルクロードの交易路は奈良にまで続いていたのでした。
シルクロード交易路の絵画は約40点が展示されています。

平山氏は、常に妻の美知子氏と一緒に渡航していました。彼女は芸大を首席で卒業し、自身も芸術家でありながら、「家の中に芸術家は2人必要ない」という恩師の前田青邨のことばを受けて、自分は絵筆を折り、夫のサポートに徹したという人。
エッセイなどを残しており、多才な方だったということがわかります。
時代が時代なら、サポートに周ったのは平山氏の方だったかもしれません。

シルクロードのたとえば「敦煌」というと、平山氏の絵画を連想する人が多いと思いますが、私は作家の井上靖の小説の方を思い出します。
井上氏は平山氏よりも23歳年上でしたが、それぞれが文と絵を担当して本を出版するなど共同作業を行っていました。

今回は、渡航の際に夫妻で集めたシルクロードの収集品も展示されています。
金銀装身具の精緻さには、失われた文化の高度さが伺えます。
夫妻が文化財保護のために各国で収集し。日本へと持ち帰った現地の工芸品や地域の織物など約170点も展示されています。

文化財保護に莫大な援助協力をし、実際に保護活動に携わった彼らは、ユネスコにその運動を評価され、世界文化遺産保護に貢献した金メダル表彰を受けています。

インドは女神像が多く、豊満な石像が展示されています。
中性(ほぼ男性)のみの日本の仏教文化とは雰囲気が違います。

収集品は小さいものも多く、また細部にわたり精巧な模様が施されている芸術性の高いものが多いため、一つ一つじっくりと鑑賞。
模様の美しい銀製鍍銀水差しや、『馬をかたどったリュトン』など馬や女性の模様が彫り込まれた器、壁ほどに大きなカシミールショールなど。
奈良の正倉院収蔵の円形切子装飾碗もありました。
ネックレスやイヤリングの精巧さと美しさ。今でも十分使えます。

img04 - コピー.jpg

平山作品は目にしたことがあるものが多かったのですが、夫婦の収集工芸品を見たのは初めて。
展示されているシルクロードのお宝は、小品が多いながら芸術性価値が高いものばかりで充実しており、見ごたえがありました。

最後に平山氏の「パミール高原を行くロバに乗る自画像」が展示されていました。
眉を寄せた困り顔で、全く美化されておらず、どことなくユーモラス。
乗り疲れてしまったのでしょうか。
徳永家康の"しかみ顔"を思い出しました。

夫妻のもつ確かな芸術の目と、平山作品を通してのシルクロード交易路文化が紹介されている、シルクロードのロマンに浸れる展覧会です。
-------------------------------------------------
「平山郁夫 シルクロードコレクション展
 夫妻の視点が織りなす、人類への遺産 」:公式サイト
そごう美術館
10月27日(金)〜12月3日(日)
posted by リカ at 12:03| Comment(0) | 【finearts】日本画 | 更新情報をチェックする