2018年04月18日

至上の印象派展 ビュールレ・コレクション

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ちらしは2種類。下はセザンヌの《赤いチョッキの少年》1888-90年


2月から開催中のビュールレ・コレクションを観てきました。
スイスの絵画収集家ビュールレ(1890-1956年)による600点におよぶ美術コレクションは、幅広い時代の作品が収集され、とりわけ印象派・ポスト印象派の作品は質が高い傑作揃いと高く評価されています。
ビュールレ・コレクションの全作品は、2020年にチューリヒ美術館に移管されることとなっています。

今回の展示作品は64点。それほど多くありませんが、日本人に人気の高い印象派、ポスト印象派が中心の観がいがある作品ばかり。
モネ、マネ、ルノワール、ドガ、ファン・ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌという、そうそうたる画家の作品ぞろいです。
また、出展作品の約半数が日本初公開となります。

10年前の2008年、ビュールレ美術館から絵画4点が盗まれ、世界の美術ファンが騒然としました。
そのセザンヌ《赤いチョッキの少年》、ファン・ゴッホの《花咲くマロニエの枝》、ドガの《リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち》、モネの《ヴェトゥイユ近郊のケシ畑》は、すべて無事に回収され、今回の展示品となっています。

1. 肖像画 2. ヨーロッパの都市 3. 19世紀のフランス絵画
4. 印象派の風景ーマネ、モネ、ピサロ、シスレー
5. 印象派の人物ードガとルノワール 6. ポール・セザンヌ
7. フィンセント・ファン・ゴッホ 8. 20世紀初頭のフランス絵画
9.モダン・アート 10. 新たなる絵画の地平

という10の章で構成されています。
作品は全て、チューリヒのE.G.ビュールレ・コレクション財団蔵。

休日に行ったこともあり、会場はとても混んでいます。
場所柄か、外国人ファミリーの姿も多く見かけました。

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ポール・セザンヌ 《風景》 1879年頃


セザンヌ作品は6点。油彩画ですが、水彩画のような爽やかさがあります。
近くに行ってその筆致を確かめました。

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クロード・モネ 《ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑》1879年


モネ作品は4点。中でもこのヒナゲシの色に、目を奪われました。
曇天と対照的なヒナゲシの赤。華やかですがどぎつくはない、モネらしい色使いです。
両手いっぱいに花を摘んでいるのは、モネの家族でしょうか。
この作品は、ビュールレが印象派絵画に魅了されるきっかけとなった一枚だそうです。

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エドゥアール・マネ 《ベルヴュの庭の隅》 1880年


マネ作品も4点。モネにタッチが似た作品です。
センセーショナルな「草上の昼食」や「オランピア」で物議を醸した彼も、モネたちとの交流をへて、この頃には印象派的な自然の描写を取り入れています。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール 《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢
(可愛いイレーヌ)》 1880年


絵画史上で最も有名な少女像と言われるこの作品。
今回の展覧会の要の一枚でもあり、混んだ会場内でも、この絵画の前は、ひときわ大きな黒山の人だかりができていました。
この絵の前は特に、前の人の背が高くて見えにくかったのは、やはり男性ファンが多いからでしょうか。
ほかの絵を見ている時にも「俺、今日はイレーヌだけ観に来たんだけど、ほかの絵もいいね」と話す青年二人の会話が聞こえてきました。

優しげで頼りなげなまなざしに、豊かに肩に流れるつやつやとした髪、透き通るような肌。
吸い込まれそうで、見ているだけで幸せになるような少女像です。
モデルのイレーヌは、裕福な銀行家の娘でしたが、ユダヤ人だったため、その後ナチスによりつらい半生を送ることになりました。
この作品もナチスに没収され、そののち戻されるもイレーヌが手放したことで、ナチスに武器を売って財を成したビュールレの手に渡るという数奇な運命をたどっています。
この明るい絵が描かれた頃には、そうした複雑な運命が待っているとは誰も予想しなかったでしょう。
暗黒の時代の間も、誰かに破壊されることもなく、戦火の中でも無傷で作品が残り、今こうして日本で鑑賞できるということに、感動を覚えます。

描かれたイレーヌは8歳だと知って、なかなかの衝撃を受けました。
10代の少女だと思っていたら、そんな小さな女の子だったとは。
まあ、いろいろな情報を入れずとも、とにかく一見の価値ありです。

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フィンセント・ファン・ゴッホ 《花咲くマロニエの枝》 1890年


ゴッホ作品は6点。この作品は彼が療養院から退院した後に描かれた、晩年の作品。
静かで落ち着いた題材の中にも満開の花の生命力が感じられ、色のコントラストに目を奪われます。
英語で「Chestnut」と訳されており、外国人の男性が「マロニエは栗デスカ?」と連れの女性に聞いていました。「Marronnier」は「マロン」の仲間ですからね~。

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クロード・モネ《睡蓮の池、緑の反映》1920/1926年頃


最後のコーナーは、モネの睡蓮の絵。
高さ2メートル、幅4メートルの大作です。
オランジュリー美術館にある、壁に沿った長いモネの睡蓮の絵よりは小ぶりですが、この作品はこれまでスイス国外に一度も出たことがないという貴重な作品でした。

今回の展覧会のイレーヌ像を使ったコピー文句「絵画史上、最強の美少女(センター)」は、けっこう賛否両論ですね。
世界的な名作にアイドルチープ感がついてしまいそうですが、話題になったことで観客も増えたことでしょう。
ミュージアムショップには、可愛いイレーヌの格好をしたリカちゃん人形が売られていました。

たいていの人なら満足できるだろうこの展覧会。
GW中は混雑必至でしょうから、早めの鑑賞をお勧めします。
東京の後は九州、名古屋でも開催される予定です。

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至上の印象派展 ビュールレ・コレクション
東京・国立新美術館 2018.2/14(水)~5/7(月)
九州国立博物館 5/19(土)~7/16(月・祝)
名古屋市美術館 7/28(土)~9/24(月・祝)
posted by リカ at 17:41| Comment(2) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする

2018年04月17日

特別展『名作誕生-つながる日本美術』

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日本美術史を華やかに彩ってきた名作の数々。
本展は、制作時期の社会背景やその影響といった面から、「つながる」というモチーフのもとに、日本を代表する名作を紹介しています。

第1章 祈りをつなぐ
第2章 巨匠のつながり
第3章 古典文学につながる
第4章 つながるモチーフ/イメージ

構成は大きく4章に分けられ、さらに12のテーマに分けて名作を紹介しています。

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国宝《普賢菩薩騎象像》(ふげんぼさつ きぞうぞう)
平安時代・12世紀 東京・大倉集古館蔵


第1章『祈りをつなぐ』のテーマ2「祈る普賢」で採り上げられるのは、普賢菩薩像。
象に乗っている姿は共通していますが、作品ごとにいろいろな表情があります。
普賢菩薩はこれまでもっぱら仏像ばかり見てきて、絵画を見る機会はなかなかなかったためか、描かれた普賢菩薩の周りを大勢の女性陣が取り囲んでいる絵に目が留まりました。

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重要文化財《普賢十羅刹女像》鎌倉時代・13世紀 奈良国立博物館蔵


かつては鬼神でしたが、法華経の善神となった信心深い10人の女性、十羅刹女(じゅうらせつにょ)だそうです。
女性たちに取り巻かれた普賢さまは、ファンに囲まれたスターのようでした。

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重要文化財《仙人掌群鶏図襖》(さぼてん ぐんけいず ふすま)
伊藤若冲筆 江戸時代・18世紀 大阪・西福寺蔵


さすがは若冲、鳥の動きどころか、息遣いまで感じさせる力強い描写です。
左から2羽目の凛々しく立つ雄鶏は、かつて切手にもなりましたね。

次は第2章『巨匠のつながり』のテーマ6「若冲と模倣」。
中国・明時代の「鳴鶴図」を手本に、17世紀に狩野探幽、18世紀に若冲が行った模写作品が並んで展示されていました。
若冲は、天才絵師という評価を受けていますが、作品を見ると、名作を模倣し、地道に研鑽を積んで、きちんと技術を高めていったことが伺えます。

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国宝《松林図屛風》長谷川等伯筆
安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵


第4章『つながるモチーフ/イメージ』のテーマ9「山水をつなぐ」には、日本水墨画を代表する等伯の松林図屛風。
いろいろな展覧会で何度も見たことがありますが、何度見てもやはりいいですね。
この作品の展示期間は4月13日(金)~5月6日(日)となっています。

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菱川師宣《見返り美人図》江戸時代・17世紀 東京国立博物館


テーマ12「人物をつなぐ」には、こちらもまた切手になった見返り美人図がありました。
「浮世絵の祖」とよばれている元禄期の菱川師宣ですが、先ほど東京芸大美術館で観た『東西美人画の名作 《序の舞》への系譜』には、彼の作品はなかったなあと思い起こします。
描かれるはつらつとした人物像は「菱川様の吾妻俤(ひしかわようのあずまおもかげ)」と言われたそう。

130点にもなる名作を観終わった最後に、『国華』が3冊展示されていました。

明治22年創刊の日本・東洋古美術研究誌『國華』は、現在も発行中の、日本で最も古い雑誌。
本展は『國華』創刊130周年記念と朝日新聞140周年を記念しての特別展です。
この日本を代表する美術雑誌を、いつか手に取って読んでみたいと思います。


特別展『名作誕生-つながる日本美術』
4月13日(金)~5月27日(日)
東京国立博物館 平成館


posted by リカ at 17:00| Comment(0) | 【finearts】日本画 | 更新情報をチェックする