2018年04月16日

東西美人画の名作 《序の舞》への系譜

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今回の展覧会は、上村松園『序の舞』(重要文化財)の修理完成記念の一般公開。
江戸時代の風俗画や浮世絵から、『序の舞』に至るまでの明治期から昭和戦前期までの、東京と関西での美人画の系譜をたどっています。

構成は分かりやすくシンプル。
第1章 美人画の源流
第2章 東の美人
第3章 西の美人
第4章 美人画の頂点

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鈴木春信や喜多川歌麿、上田松園と比較されて「東のしょうえん」と言われ、明治・大正期に活躍した池田薫園など、そうそうたる画家の作品が貼らびます。

鏑木清方の(きよかた、なんですよね。いつもきよたか、と言い間違えてしまいます)が樋口一葉を描いた「一葉」とその作品の挿絵「にごりえ」もありました。

また金子孝信「季節の客」、三浦孝の「栄誉ナラズヤ」、水谷道彦の「春」など、戦争で死亡した東京美術学校学生の卒業作品も展示されていました。
藝大は、画家にならずして亡くなった無名の学生の名作も所蔵しているため、展示できるという強みがありますね。

そして美人画の頂点として「序の舞」が置かれています。
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上村松園《序の舞》(重要文化財)昭和11年(1936) 東京藝術大学蔵


凛として控えめで美しい日本女性。
こうした美しさを描きだせるのは、やはり女性ならではないかと思います。

さまざまな美人画の中でも、印象的だったのは次の2点。
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島成園「香のゆくえ(武士の妻)」大正14年(1915)
福富太郎コレクション資料室蔵


島成園は、松園、池田蕉園とともに"三園"と称せられた画家(全員女性)。
描かれているのは木村重成の妻、青柳。大阪夏の陣に豊臣側として出陣する夫の兜に香をたきしめる様子です。
討ち死にした重成の首が家康の元に届けられた時、香の香りが漂って、家康は妻の覚悟に感じ入ったという逸話を描いています。
そんなエピソードを知ってみると、その表情のはかなさが理解できます。

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松本華羊「殉教(伴天連お春)」大正7年(1918)頃
福富太郎コレクション資料室蔵


松本華羊も女性画家。華やかな桜と幸せそうな表情の女性とは不釣り合いな、手錠をかけられた様子。
キリシタンとしてとらえられた吉原の遊女朝妻が、処刑される前に桜の花を見たいと望み、彼女を憐れんだ役人が、望み通り桜が咲くのを待って処刑したという「朝妻桜」の伝承に基づいた作品だそう。

参考出品として上村松園の画材一式が展示されており、その中に木の定規がありました。
ふと見ると、普通の定規よりも大きい目盛でした。
初めて見る尺差し。センチメートルが一般化される前は、尺差しが使われていたんですね。

今回は、音声ガイドが無料という嬉しいサービスで、ほとんどの人が借りていました。
さらにBGMとして、芸大教授監修によるフレンチ・クラシックなどが流れ、フォーレやドビュッシーの曲を聴くことができるのも藝大美術館ならでは。
能楽囃子を聴きながら「序の舞」の現物と向き合えるという贅沢を味わえました。

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東西美人画の名作 《序の舞》への系譜
2018年3月31日(土)〜5月6日(日)
東京芸術大学美術館
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posted by リカ at 18:08| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする

2018年03月14日

プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光

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国立西洋美術館


スペイン王室の収集品を元に開設されたプラド美術館の収蔵品。
今回はその中でも宮廷画家ベラスケス(1599-1660年)の作品7点と17世紀絵画61点を中心とした70点が展示されています。

17世紀のスペインには、国王フェリペ4世に重用されたベラスケスのほか、リベーラ、スルバランやムリーリョなどの大画家が登場しました。
フェリペ2世時代のティツィアーノや、外交官として諸国を渡り歩いたルーベンスの作品もコレクションに加わっています。

ベラスケスはスペインの国民的画家であり、今回のようにプラド美術館蔵の7作が同時に見られる機会はかなりレアだそう。
たしかにかつてプラド美術館に行った時には、ちょうどベラスケス特別展が開催中で、大勢の人々が長い列をなしていたことがありました。

前回の『北斎展』は、版画ということもあり、小さい作品がほとんどでしたが、今回は大作がメイン。
天井の高い王宮に飾られていたからでしょう。見上げるように鑑賞しました。

● 宮廷画家として

ベラスケスといえば、フェリペ4世の娘のマルガリータ王女の絵が思い出されます。
彼が手がけた王女の肖像画7枚のうち3枚がプラドに所蔵されていますが、今回王女の絵は一枚も来ていません。
代わりにフェリペ4世の長男の王太子の絵がありました。
乗馬姿の小さなかわいらしい少年で、馬が前脚を上げたら落ちてしまいそうですが、片手で手綱を取りビシッと決めています。

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『王太子バルタサール・カルロス騎馬像』1635年頃


馬が樽のような胴体をしているのは、太っているわけではないそう。
宮廷の高い場所に飾り、それを下から見上げる場合に、ちょうどよく見えるように計算されたものだそうです。
それならば、この絵も相当高い場所に展示してほしいものですが、目線の高さだったため、馬は太ったまま。
少ししゃがんでみましたが、あまりよく違いは分かりませんでした。
この絵の前で、しゃがみこむ人が大勢おり、遠目に不思議な光景だったことでしょう。

● 庶民派画法

宮廷に召し抱えられた画家であるため、ベラスケスは王族の肖像画を数多く残していますが、それ以外の作品も見られます。
彼の特徴は「庶民」「ありのまま」。

『軍神マルス』は、ちょっと身体のたるんだおじさんとして描かれています(上部ちらし右側)。
兜はかぶっていますが、武器も甲冑も身に着けていない半裸姿で、凛々しいオーラは全くありません。

『東方三博士の礼拝』は一見普通の市民を描いたように見えますが、これは聖母子像。
こんなに庶民的に描いていいものでしょうか。神々しさは全くありません。むしろ親近感を覚えます。

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ディエゴ・ベラスケス《東方三博士の礼拝》1619年


● ルーベンスとの違い

同じ聖家族を題材にしたルーベンスの作品もありましたが、かなり描き方が異なっています。

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ペーテル・パウル・ルーベンス 《聖アンナのいる聖家族》 1630年頃


古代ギリシア哲学者を描いたルーベンスとベラスケスの作品もありましたが、ルーベンスが王道のわかりやすい描き方をしているのに比べて、ベラスケスは時代や衣裳をがらりと変えて、当時のスペイン男性として描いていました。
それもある意味、ありのままということでしょうか。

● その他の画家による17世紀絵画

主要展示作には解説がついていますが、ないものもあり、どういうシチュエーションなのか謎のまま。
たとえばジュゼペ・デ・リベーラの『女の戦い』では、たおやかな美女2人が武器を持って戦っています。
戦闘服ではなく、普段着のような長いスカート姿ですが、剣と盾を振りかざしており、本気の戦いのよう。
防戦側は流血しており、見物人が2人を取り囲んでいます。一体どうしたのでしょう。

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ジュゼペ・デ・リベーラ『女の戦い』(1636年)


またデニス・ファン・アルスロートの『ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡(おうむ)の祝祭:職業組合の行列』という細長い作品がありました。
ブリュッセルのグラン・プラスで毎年行われるオメガングの祭りを描いたもので、ギルドごとの行列がびっしりと続いています。詳細に描き込まれており、壮観でした。

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デニス・ファン・アルスロート『ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡の祝祭:職業組合の行列』1616 年


展示作品の中に、ピーテル・ブリューゲルの次男、ヤン・ブリューゲル(父)のものがありました。
近くの都美術館で開催中のブリューゲル展でも、彼の絵は展示されており、『嗅覚の寓意』『聴覚の寓意』という感覚をテーマとした絵画が展示されています。

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ヤン・ブリューゲル(父)、ヘンドリク・ファン・バーレン、ヘラルト・セーヘルスらとの共作《視覚と嗅覚》1620年頃


ほかに彼の「花卉(かき)」という作品もありました。

ところで美術展に行くと、図録が欲しくなりますが、どれも概して大きく、絵のサイズとしてはいいものの大きさを持て余すこともあります。
今回、通常サイズにのほかに、絵ハガキサイズのミニ図録も出ていました。これなら保管に便利ですね。

● 国立西洋美術館公式サイト
posted by リカ at 18:31| Comment(0) | 【finearts】西洋画 | 更新情報をチェックする